人はなぜライブに行くのか
こないだ職場の近所のラーメン屋で、隣の席のおじさんが「なぜアイドルのライブに行くのか」と部下と思われる若者に問うているのを聞きました。確かに、会場に行っても結局遠くから見ることになるアイドル等のライブになぜわざわざ行くのか、人によっては理解しがたいことなのかもしれないと思います。
さて、この話を紐解くため、少し幼児の発達を踏まえて考えてみましょう。幼児の発達においては「体験」と「環境」が非常に大切なものと言われており、実際に「幼稚園指導要領」や「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」の総則の第1項にもその旨が明示されています。ではなぜそれらは重要なのでしょうか?
まず、「体験」が大切なのは日常でも言われることが多く、なんとなく感じている方は多いのではないでしょうか。端的に理由を言えば、二次元に比べて圧倒的に情報量が多いからです。
例えば、木の立方体の画像があるとしましょう。色や質感というものは写真から伝わるでしょう。木目から大きさも大体わかるかもしれません。しかし、温度は?手触りは?重さは?中が空洞で音がするかもしれません。このように実際に目の前にして「体験」することでしか得られない「気づき」があるのです。
これに対して、「環境」が大切であることはもしかしたら理解しづらい考えかもしれませんね。
一つ例え話をしてみます。貴方がもし、フランスのパリに生まれたとしたら、今ほど上手に「箸」を扱えると思いますか?おそらく無理ですよね。逆にスプーンやフォークに関しては同じくらい・それ以上に上手く扱えるようになるだろうと思いませんか?当たり前に思うかもしれませんが、もし日本であっても周りの大人や友達がスプーンとフォークしか使わなければ、必ずしも「箸」を使えるようにはなりません。つまり、「環境」は子どもにとって生きることに必要な知識を学ぶための、「先生であり教科書」なのです。
最初のライブの話に戻りましょう。特別な場所で実際に好きなアイドルを見て、大勢の人たちが「好き」を共感する「環境」の中で自分もアイドルを見たい。「画面」から見られるもの、「イヤホン」から聞こえる音だけが全てではなく、むしろそれ以外の「情報」を求めて人はライブに行く、ということなのかなと私は考えました。
さて、ここまで「アイドルのライブに行く意義」という話をしてきましたが、クラシックに関しても同じだと思います。「生」で見て、聴いて見ませんか?まだ「好き」ではないかもしれませんが、我々の演奏会では、生で聴くことでしか得ることができない「体験」「環境」を作り、少しでも音楽に興味を持ってもらえることを目指しています。皆様と会場で「実際」に逢えることを心待ちにしております。
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