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真似してもオリジナルに。だから好きな形を作って楽しんでほしい|あかりアート展入賞者インタビュー isenakamura8さん

岐阜県美濃市が、日本に、世界に誇る文化「あかりアート」。見て楽しい、作って楽しいあかりアートの魅力をもっともっと知って欲しい。

そこで、美濃和紙あかりアート展の入賞者に、あかりアートの魅力やあかりアート作りの楽しさ、上手に作るコツ、あかりアート展を最大限楽しむためのポイントなどを聞く連載企画がスタートしました。

今回お話を伺ったのは、第27回美濃和紙あかりアート展で審査員特別賞を受賞されたisenakamura8さん(出展者ネーム)。

isenakamura8さんのあかりアート作りへのこだわりや、あかりアートを上手に作るためのポイントなど、これを読めばこれまで以上にあかりアートを楽しめること間違いなしです。


中木1


まず10年。作るのは楽しいけれど入賞もしたかった

ーーあかりアートと出会ったきっかけはなんですか

初めての出展は第3回のときです。

弟が離職していたこともあり、弟と気分転換に和紙の里会館にプラッと立ち寄りました。そこに和紙あかりアート展の告知があって、初めてあかりアート展を知りました。他にもパンフレットやあかりアートの展示物が置いてあり、なんとなく興味を持ったのが始まりです。

これも何かの縁だと思い、弟と一緒に出展をしました。あかりアート展には小中学生部門もあるので、子どもも一緒に。お祭りみたいなもんだから気軽に、肩肘貼らずにやろうと。美濃のまちにあかりがついて、それをみんなで観に行けたらいいかなというくらいの感覚でした。

結果は、子どもの作品が入賞して、私と弟の作品は入賞できませんでした。ただ、弟の作品が中日新聞の一面に大きく掲載されたんですよね。入賞したわけではないのに、弟の作品1点だけが掲載されていて、すごく嬉しかったです。

私は子どもと楽しく作るのに全精力を傾けたのでいいのができなかったです。でも、審査員の方もお父さんと子どもが楽しんで作ってもらえればいいよねと言っていたので、これでいいのかもなとも思いました。

ーーそこから、あかりアートを作り続けた理由はなんですか

初めて出展してから10年くらいは、とりあえず出展し続けました。やるなら10年くらいが目安かなというのが私のポリシーです。

ただ、入賞することは全然なくて。7〜8年くらい経って、このままではダメだと思いました。自分がいいと思ってもダメなんだと。それで、方向転換してみようかと思いました。

まず、過去の入賞作品を真似して作ってみようと思っていろいろな作品を観てみました。でも、真似しても同じのは作れないし、作り方もわからないんです。だから、真似しても結果的に私のオリジナルになると気付きました。

できた作品を会場に持って行ったら、実行委員の方がこの作品いいねと言ってくれて。これは入賞するんじゃないかと思いましたね。

会場に作品を置いたあとは、釣りに行っていました。すると電話が鳴って……。

これは入賞か?と思ったんですが、「和紙が焦げ出したからあかりを消します」という連絡だったんです。当時は光源からの距離の規定がまだなかったのと、私が使っていた電球が100Wの熱が高いもので和紙との距離が近かったから、和紙が燃えてしまいました。

ただ、手応えはあったので、翌年も同じような考え方で作品を作って出展したら入選しました。それが平成18年です。そこで出展をやめました。こういうのは若い子が賞をとって、今後につながるようにできたらいいんじゃないかと思いますからね。だから今年の出展もどうしようか、ちょっと考えました。


中木4


母のことを想って楽しく作った作品

ーー今回、また出展されたのは何か理由があったんですか

第26回(2019年開催)の時に13年ぶりに出展しようとしました。ですが、大型台風の接近で開催が中止になったので、昨年度の作品を今回のあかりアート展に出しています。

再開した理由は、作品名の「迎え火」に大きく関係しています。迎え火とは、お盆などにご先祖様を迎えるために焚く火のことです。
一昨年、母親が亡くなりました。母のことをいろいろ思い返していたときに、そういえばあかりアートをやっていたということを思い出して。母親の実家が岐阜で美濃市に近いので、せっかくだし楽しみながらあかりアートを作ってみようかなと思いました。

正直なところ、賞をもらえるとは思っていませんでした。あかりアート展の当日、作品を置いてから温泉に行って、展示を観に戻ったんです。そのとき、先生たちと入れ違いになったんですが、2階に上がるとちょうど入選作品を選んでいるところでした。

気になってこっそり後ろについて行ったら、自分の作品は飛ばされて次の作品に行かれてしまいました。それで、これはダメだな、と思いましたね。

引きずっても仕方がないので、次の日は伊勢神宮へ遊びに行きました。すると、気付いたら知らない番号からの着信履歴が残っていました。見たことのない携帯番号。普段はかけなおしません。

でも着信が2回入っていたので、何かあるのかもなと思い、かけなおしました。すると、受賞しましたよと言われて。ダメだと思っていたのに、賞をもらっていたんです。


ーー今回の作品作りで注目して欲しいポイント、苦労したポイントはどこですか

注目して欲しいのは形が変わることです。上の部分を動かすことができるので、形が変幻自在になっています。なので、これで完成しているのですが、このまま形を作り変えることもできます。今回の作品も3パターンくらい候補があった中でのひとつです。

苦労とかは特になく、作り始めて2日くらいでパンパーンとできました。たくさん和紙を使いたいというのはあったんですが、細かい作りはいつもあまり考えていません。

中木3


感性を働かせて自由に。それがあかりアートの楽しみ方

ーーあかりアート作りの中で楽しいのはどんなときですか

作っているものが形になったときです。作るときははっきりと形を決めずに作るんですが、作っていると「これいいな」という感じがパーンときます。自分の想像したものじゃないものが偶然できたときは嬉しいし楽しいです。2、3日してから冷静に観ると、たいしたことないなと思うんですけどね。


ーーこれからあかりアートを作ってみたい方は、どんなことに気をつけて作ると上手に楽しく作れると思いますか

楽しくするには、細かいことに気を使わないことです。どんどん好きな形を作っていけばいいんじゃないかなと思います。ああじゃない、こうじゃないと言いながら、どんどん楽しいと思うように形を作ってみてください。

うまく作るにはという観点だと、この作品ってどうやって作っているのかな、という作品は賞に入りやすいと思います。あとは、いい作品の真似をすること。私自身がそれで入選しましたからね。

どういう作品を真似するか、形としては2パターンあると思っています。

ひとつはリアルなもの。お城とか港とか、カチッとした形のものです。こういうものは、竹ひごを使ってきっちりと形を作っていくことになります。

もうひとつは、和紙を使った抽象的なものです。和紙をたくさん使って、抽象的な形、自分なりのイメージを形にしたものですね。これは、和紙をたくさん使うといいものが作りやすいと思います。とにかく和紙をたくさん使ってみてください。

後者を選択した場合、形は感性で変えていけば大丈夫です。技術もそこまで高くなくてもいいと思うので、初めての方でも作りやすいのではないでしょうか。


あかりアートが置かれた町並みが壮大なアート

ーあかりアート展を楽しむためにどんなポイントに注目するといいと思いますか

みなさんご存知かと思いますが、あかりアートは美濃のまちに展示されるんですね。なので、あかりだけに視線を落とすのではなく、美濃の町並み、紙屋さんや住宅、路地など、街全体を俯瞰して、美濃のまちに溶けこむあかりアートとして観ると楽しいんじゃないかと思います。

アートなので、感性を働かせて、気軽に自分のいいと思うものを感じ取ってみてください。

編集後記

今回のインタビュー中、常に楽しそうに、あかりアートのことをお話ししてくれたのが印象的でした。

「芸術の経験なんてないけれど、誰でも楽しく作れるのがあかりアートだよ」というお言葉がとても印象に残っています。細かい技法や作り方はあるけれど、楽しく、自分らしく、自由な発想で。それがあかりアートを楽しむポイントのようです。

今回のお話でも出てきたように、家族みんなで楽しみながらあかりアートを作ってみるのもいいかもしれませんね。

次回のあかりアート展も楽しみです。


取材・文=澤田おさむ

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