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初出展で入賞!自分ができることを最後までやり切る|あかりアート展入賞者インタビュー 矢田部さん

岐阜県美濃市が、日本に、世界に誇る文化「あかりアート」。見て楽しい、作って楽しいあかりアートの魅力をもっともっと知って欲しい。

そこで、美濃和紙あかりアート展の入賞者に、あかりアートの魅力やあかりアート作りの楽しさ、上手に作るコツ、あかりアート展を最大限楽しむためのポイントなどを聞く連載企画がスタートしました。

今回お話を伺ったのは、第27回美濃和紙あかりアート展で審査員特別賞を受賞された矢田部さん。

矢田部さんのあかりアート作りへのこだわりや、あかりアートを上手に作るためのポイントなど、これを読めばこれまで以上にあかりアートを楽しめること間違いなしです。


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作るからこそわかる感動の瞬間がある

ーーあかりアートと出会ったきっかけはなんですか

現在、48歳のおっさんなのですが、実は通信制の大学生です。建築系の資格を取得するため、芸術大学の建築学科に働きながら通っています。昨年の夏、インテリアデザインの授業で和紙の照明を制作する授業があり、そこで初めて美濃和紙あかりアート展を知りました。

大学のスクーリング授業でひとつ完成させたのですが、デザインにもクオリティにも満足いかず。その授業が終わった後、美濃和紙あかりアート展を目標に、同じテーマでいくつか作り直しました。

結局、納得いくまで作り直しながら、気付けば4つ目の作品に。あかりアート展の締め切り間際になんとか納得のいく形になったので出品できたという感じです。


ーー矢田部さんが感じる、あかりアート作りの一番楽しい瞬間はいつですか

あかりを灯した瞬間の感動です。作っている最中は、糊も乾いていないし、ランプを仕込むこともできないので、想像でしか完成が見えません。糊が乾いて、型から外して、実際にあかりを灯した瞬間の感動は、きっと作った本人しかわからないと思います。これは作品の良し悪しに関わらず、誰でもワクワクできる瞬間ではないでしょうか。

逆に、あかりを灯すとアラが見える場合もあります。その場合は修正できるか妥協できるか、または諦めて次に活かすかという判断が必要になります。それらも含めてあかりアートの創作は楽しいと思います。


つくりながら気の向くままに形を変えるあかりアート

ーー今回の作品作りで注目して欲しいポイント、苦労したポイントはどこですか

タイトルが「源流のせせらぎ」としたように、生命の源である卵から、せせらぎが溢れ出す情景をイメージしました。卵もわざと斜めに倒して、大自然の中に無造作に産み落とされた雰囲気を出そうとしています。

下地としてハリボテの卵を作った後、テープ状に細くちぎった美濃和紙を蛇腹に折り曲げ、渦巻き状に貼り付けて、水の流れを表現したつもりですが、うまく伝わったでしょうか?

なるべくナチュラルな風合いを出したくて重なり部分を少なくしようとしましたが、行き当たりばったりで作ったので、全体的に濃いところと薄いところがまばらになってしまいました。底の開口部もまっすぐに作ったつもりなのに、仕上がりはわなわなした感じになっています。


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ーー矢田部さんのあかりアートの作り方を教えてもらえますか

源流で水が湧き出る様子を卵から生命が誕生するイメージと重ねた、というのは実は後付けで、つくり始めてからイメージが湧いてきました。せせらぎというテーマが決まっていたので、授業の中で先生や他の生徒からアドバイスをもらったりして、おおまかな形を決めました。

ひだ状の細い紙を斜めに貼りつけるのも、先生の助言から思いついたアイデアです。卵型にするというアイデアだけは初期の頃からありました。なので、テーマとおおまかな形のイメージを決めて、実際の制作に入っています。

次に型作りです。最初はゴミ箱に新聞紙を巻きつけて形を作り、簡単に糊が剥がれるように、梱包用のラップシートを巻きつけて型をつくりました。しかし、型を真下から外せるようにしたことと、そもそもの造形が大雑把だったので、出来上がりがミサイルみたいな変な形になってしまいました。

次は新聞紙だけで卵型を作り、ラップをした後、ひだ状の和紙で直接本体を形成しようとしたのですが、形が崩れてしまい失敗しました。

その失敗作をそのままベースにして、その上から水をイメージした薄い青色の和紙を貼ったのが3個目です。ところが出来上がって灯りを点けたら、想像と違って全然美しくない。厚めの和紙が二重になっているので青白いまだらな感じになり、むしろ気持ち悪いなと。

そこで、新たに色の付いていない和紙で作り直したのが、今回出品した作品です。きれいな丸みを出そうと、大きめの風船にラップで形を整えて、薄い和紙で下地のハリボテを作りました。その表面に、ひだ状にした美濃和紙を斜めに貼り合わせました。

下地はのりしろが見えないようにしたかったのですが、技術がないので光を通すとつなぎ目が丸見えで恥ずかしい仕上がりです。でも、審査委員長の古川秀昭氏から「あっちを向いたり、こっちを向いたりとその勝手さが形になって面白い」と評価して頂いたので、何が功を奏するのか分かりませんね。


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ああでもない、こうでもないという試行錯誤の先に楽しさがある

ーー作品を作るときに大切にしていることはなんですか

今回、初めてあかりアート展を知ったばかりの初心者なので偉そうなことは言えませんが、出品するからには作品に妥協はしないよう心がけました。

自身の技術やセンスには限界があります。完璧を求めるのではなく、できる限り丁寧に、最後まで作り上げること。当たり前だと思いますが、これくらいの事しか言えないです。


ーーこれからあかりアートを作ってみたい方は、どんなことに気をつけて作ると上手に楽しく作れると思いますか

私も全くの素人ですので、上手く作る方法があれば教えてもらいたいくらいですよ。

ひとつ作品が出来上がると、もっとこうすれば良かったと反省点が必ず出てくると思います。それを生かして何度も作り直し、少しずつ完成度を上げたら良いと思います。頭の中で考えた作品が実際に作品として形になるのは、それだけでとても楽しいです。

絵画や彫刻、その他多くの芸術作品と比べて、和紙の照明は比較的ハードルが低いと思います。初めての芸術作品でも楽しめるんじゃないでしょうか。

ただ、美濃和紙は少し高級なので、可能であれば質感の似た紙で練習して、感覚を掴んでから本番に臨んでみるといいのではないかと思います。ほぼ初めて作品を作った私が入賞できたので、誰にでもチャンスはあると思います。

少しでも興味があるのなら、まずは形にしてみることが大切だと思います。


昼と夜で違った楽しみ方ができるのがあかりアート

ーーあかりアート展を楽しむためにどんなポイントに注目するといいと思いますか

明るい時間帯とあかりが灯る時間帯、両方を観ないと作品の本当の魅力は伝わらないと思います。昼間には細かい造形や作者の工夫を想像しながら観て、夜はライトアップされた幻想的な情景を楽しめたらベストではないでしょうか。

例年であれば、うだつの上がる町並みでまとめて観ることができたようですが、今回は残念ながら新型コロナウイルスの影響で分散開催になってしまいました。会場のひとつ、大矢田神社だけが少し離れた場所だったので、全部の作品を観れなかった人も多かったのではないかと思います。私はスケジュールの都合などで、作品の半分は昼間の消灯時にしか観ることが出来ませんでした。

次回はどうなるかまだ分かりませんが、なるべく多く人が点灯しているときと消灯しているときの両方を楽しめるように、運営サイドでも移動の少ない会場設定を検討してもらえると楽しみやすくなると思います。ぜひ、そこは頑張ってください。


編集後記

初めての作品ながら入賞をした矢田部さん。まだ素人ですからという言葉の裏には、自分の持てる力をすべて込めて言い訳を許さない確固たる姿勢がありました。

「センスや技術には限界があるけれど、できることを丁寧に最後までやり切る」という考え方は、あかりアート作りはもちろん、人生にも共通する大切なことに気づかせていただいたような気がします。

芸術作品としてハードルが低く作りやすいため、子どもの頃から取り組んでみるのも楽しそうです。ぜひ、家族みんなであかりアート作りを通して、楽しみや学びを感じてみてはいかがでしょうか。

次回のあかりアート展が楽しみです。


取材・文=澤田おさむ

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