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ただ綺麗なものよりも、観る人が想いを感じられる作品を|あかりアート展入賞者インタビュー佐々木 和良さん

岐阜県美濃市が、日本に、世界に誇る文化「あかりアート」。見て楽しい、作って楽しいあかりアートの魅力をもっともっと知って欲しい。

そこで、美濃和紙あかりアート展の入賞者に、あかりアートの魅力やあかりアート作りの楽しさ、上手に作るコツ、あかりアート展を最大限楽しむためのポイントなどを聞く連載企画がスタートしました。

今回お話を伺ったのは、第27回美濃和紙あかりアート展でライトアップ賞を受賞された佐々木さん。

佐々木さんのあかりアート作りへのこだわりや、あかりアートを上手に作るためのポイントなど、これを読めばこれまで以上にあかりアートを楽しめること間違いなしです。


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前から好きだった作品づくり

ーー佐々木さんがあかりアートと出会ったきっかけを教えてください

美濃和紙あかりアート展には第25回から出展しています。昨年度は台風で中止になったので、作品を出したのは2回目です。町並みに展示すると、天候の影響を受けるから大変ですよね。

あかりアートのことを初めて知ったのは、郡上(ぐじょう)に引っ越してきたときに道の駅で見たパンフレットです。

あかりアートを作ったことはなかったのですが、これまでには、福井県で越前和紙を使った「現代美術紙展」に出品したことがありました。そのおかげで和紙を使った作品づくりには慣れています。

だから、地元なら気楽に参加できるかなと思っていました。

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でも、初めて出展した年に、他の出展者さんたちの作品を観て、クオリティの高さにびっくりしました。思っていたより完成度が高かったんです。このままではちょっとまずいなと思いました。

そこで、改めてあかりアートの作り方をインターネットで調べてみました。思った通りYouTubeに作り方は出ていたんですが、直感的に、自分はこれを真似してはいけないと思いました。それで、オリジナルにこだわり、自分で考えて型紙を作って、思考錯誤しながら光の包み方を研究しました。

研究した成果が今回の作品なのですが、いざ出展したものを観てみると、光ってないときの形や細工の細かさが足りなかったと思っています。

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ーー作品作りにハマるきっかけはどんなものがあったのでしょうか

あかりアートと出会う前に版画の制作をしていたんですね。そのとき、版画で使う和紙に興味が湧き、自分で和紙を漉くようになり、立体作品を作るようになりました。なので、あかりアートと出会う前から、作品づくりはおもしろいなと思っていました。

結局、和紙を漉くのはやめてしまったのですが、愛知県の小原村で紙漉きをいろいろ教わったあと、自宅に紙を漉く設備を作ったくらいなので、興味を持ったことにのめり込むタイプかもしれませんね。


作品に込めたメッセージと鑑賞者の想い。それがあかりアートをおもしろくする

ーーあかりアート作りで一番楽しいことはなんですか

美濃の古い町並みにあかりが溶け込んでいる、きれいな景色を観ることです。

3年前に出展させていただいたとき、美濃のうだつの上がる町並みに設置していただきました。それを観ていると、作品のあかりが風情のある町並みに溶け込んでいて、ノスタルジックな世界に浸れるんです。

作品、とくにあかりを使ったものは、それ自体は「もの」でしかありません。でも、それは夕日や満月なんかと同じで、「観る側」がそれにどういう想いを重ねて観るかで作品が出来上がると思っています。

だから、あかりを使ったアートは「存在するのかしないのかわからないもの」に想いを馳せる鑑賞者があって成り立つものかなと思います。


ーー今回の作品作りで注目して欲しいポイント、苦労したポイントはどこですか

この作品には小さいパーツをたくさん使っています。それを人間の手によって組み立てていくことで規則性が失われていくことです。「規則的なものからのズレ」みたいなものが表現できればと思って作りました。


ーーもしよければ、どのような手順で作ったのか教えてもらえますか

まず、和紙とマッチ棒で小さいユニットを作り、そのユニットの集まりで大きな形を作ります。その中に光が灯ったとき、透けたり隙間から溢れたりする光は規則的になっているのですが、全体の形としては自然にうねっている 、というようなイメージで作りました。

素材にマッチ棒を選んだのも、電気を使って光を作り出す装置に用いられているのが、原始的なあかりを出すために用いられるマッチ棒だと、その意外性や対照的なところが、クスっと笑えるかなと思ったからです。


あかり作品 佐々木様 受賞作品

四角形ひとつひとつの大きさが少し違い、それが大きなうねりのようになって規則性を失わせている。



ー佐々木さんが作品を作るときに大切にしていることはなんですか?ー

工芸的にならないようにしています。

まず作品を作るということは、作家が作品を通して伝えたいメッセージがあるかどうかだと思います。だから作品は、作り手の発想しだいで新たな魅力がプラスされると思っています。

あかりアート作りも、伝統的なものの良さに新しい何かの要素を加えて、新たな発見や再認識ができることが大切だと思います。

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失敗して、悔しくて、腹が立って。だからこそいい作品ができる

ーこれからあかりアートを作ってみたい方は、どんなことに気をつけて作ると上手に楽しく作れると思いますかー

僕にとっては、上手に楽しく作るというのは難しいです。僕はどちらかというと追い詰められて作ることが多いですね。日常のボンヤリした生活の中からは、なかなか作品は生まれにくいかなと思っているので。

僕の場合は、出展すると決めたら、それに向かって計画を立てます。失敗して悔しかったり、腹が立ったり、イラついたり、作品と格闘するっていうイメージかもしれません。

何の情報も感動も無い中からは作品は生まれにくい反面、コロナ禍においては、こんなときだからこそ生まれる作品があると思っています。


もし少しでも上手に作ろうと思うのであれば、まずは紙に触ってみることです。そうやって、紙の特徴を知ることが大事だと思います。さらには、いろいろな作品を観て、細かいディテールや骨組みを観察することかな。

手法は感覚に合うものを選んで作ればいいと思います。手法はインターネットで調べればいろいろと出てきます。ただ、自分なりの作品を作ろうと思えば、それとは違う何かを考えなければ意味がないと思っています。 


和紙とあかりの暖かさ、作り手の想い。そんなものを感じてほしい

ーーあかりアート展を楽しむためにどんなポイントに注目するといいと思いますか

和紙のきれいさやあかりが灯ったときの暖かさなど、風合いを味わって欲しいです。表面的な技巧に目が行きがちですが、光を包むということを大切にして観て欲しいですね。

僕がこれまでに観た中で感動したものは、とにかくまん丸に作られている作品でした。正円というか、それ以上のものを感じさせる作品で。。

それと、作品を持っていったとき、僕の前でご年配の方が作品のチェックを受けていました。作品を持つ手が震えていて、なんだか凄いなと感じましたね。

すごく細かい細工がしてあるんだけれど、それを手を震わせながら作ったのかなと想像したりして。その方の作ることへの執着みたいなものを感じました。

そうやって作った方のことも意識してご覧いただけると楽しめると思います。


編集後記

佐々木さんが何度かおっしゃっていた、「光をどう包むのか」という表現がとても印象的でした。和紙であかりを包むことによって生まれる、和紙の風合いやあかりの暖かさを感じることが、あかりアートをより一層楽しむためのポイントかもしれませんね。

アートすらもデジタル化されつつある今だからこそ、人の手が入ることによる不規則性や不正確性、作り手の強い想いのようなものが、これからいっそう大切になっていくのではないかと思いました。

このような作り手さんの想いを想像することで、さらにあかりアート展をお楽しみいただけるのではないでしょうか。

次回のあかりアート展も楽しみです。


取材・編集=澤田 おさむ / 文=岩橋 鈴子




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