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フラメンコダンサー 星野愛加|生きる希望を与えるために踊る、命を懸ける!【職業図鑑No.004】

スペインの情熱的な踊りというイメージが強いフラメンコ。真っ赤なドレスを身にまとい、激しく動くその姿は、フラメンコをやったことがない方でも想像できるでしょう。

しかし、私たち編集部はインタビューを通じてフラメンコの知られざる一面を知ることができました。今回の「みんな de 職業図鑑」は、プロのフラメンコダンサーである星野 愛加ほしの あいかさんをご紹介。

星野さんがなぜプロのフラメンコダンサーを目指したのか、フラメンコを通して何を伝えたいのかを伺いました!迷える人を導く、そんなパワーを持った方です。

星野愛加 プロフィール

「楽になる前に」出会ったフラメンコ

―― まずお名前とご職業を教えてください

はい、フラメンコダンサーの星野 愛加ほしの あいかです。よく「ダンサー名ですか?」と聞かれますけど、本名です(笑)

―― (笑)

いろいろなショーに出演したり、自分で企画して舞台を用意したりして踊っています

ほとんどはロータリークラブさんや医療法人会さんの集まり、企業の周年パーティーで踊らせてもらっています。北海道日高町に招いていただいて町おこしイベントで踊ったこともあるんです。

ほかにも東京と茨城県の神栖かみすで、Pionero ACADEMYピオネロ アカデミーというお教室をやっていまして、フラメンコの指導もしています。

フラメンコ 教室 練習
星野さんのフラメンコ教室の様子(星野さん提供)

今年で20年目になって、今では月に2~3本のイベントに招いていただいています。でもコロナ前は週1本くらいは出演してたから、最近は身体がなまっちゃって(笑)

―― そもそもなんですが、なぜフラメンコをはじめようと?

フラメンコをはじめたのは22歳のころです。それまでまったくダンスの経験はありませんでした。

はじめた理由は…重くて暗い話になりますが…覚悟はいいですか…?(苦笑)

―― し…失礼でなければ…(汗)

私、20歳ごろに「人生を終わらせたい」って本気で考えていました。

幼稚園から高校まで、ずっとひどいイジメを受けていたんです。私は埼玉の小さな町で育って、幼稚園~中学までメンバーが変わらない。毎年の目標が「今年こそイジメを受けない」でしたけど、いじめられていました。

高校は女子高に入学して、環境も変わったので「今度こそいじめられないぞ!」と心に決めたんです。でも、結局いじめられてしまって、高1の10月から学校に行けなくなってしまいました。

その後、拒食症きょしょくしょうからくる栄養失調が原因で心臓発作しんぞうほっさを起こして入院。生死の境をさまよいました。心身のバランスが崩れていたので、入院当初は食事の摂り方も分からなくなっていたんです。

いじめ 件数 文科省
引用:文部加科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査

テストだけ受けて高校は卒業。専門学校にもいきましたが、私が就職活動をした年は2000年。仕事がなくって、どんな経緯だったか忘れたんですけど芸能界に入りました。舞台やドラマのお仕事もしましたね。

でもこの20歳までがすごく長く感じた。だから「こんなに長く生きたんだから、もう楽になろう」と決めたんです。

―― ……。

同じタイミングで「なにか踊れたほうがいいんじゃない?」と舞台関係の人に言われて、いろいろ調べました。そこで初めて出会ったのがフラメンコです。

「フラメンコを極めたら楽になろう」と、そう決めました。芸能界を辞めてお教室にも通ってプロになりました。でも、私は最初から「プロになって当たり前だから」と厳しい練習を続けたんです。22歳からでも、やればできます!

今日が最後の日と心に決めて

―― はじめてフラメンコを目にしたときの印象を教えてください

ひと言でいうと「暗い」(笑)

それまでダンスって明るい場所で、楽しく踊るイメージがありました。でも、フラメンコはそうじゃない。夜の時間に踊ることが多いから暗くて…。そして笑ってもいいし、つらい顔をしてもいい。それに魅せられました。

星野愛加 フラメンコ
フラメンコしか出せない表情を、迫真の踊りとともに表現する(星野さん提供)

そしてカッコイイ。フラメンコのイメージである情熱的はそうなんですけど、なにが情熱的なのかを知って、涙がでましたね。

―― そういえば、フラメンコのイメージって「情熱的」しか知らないですね…

フラメンコって、もともとスペインのジプシー(現代で言うロマ)が踊っていたもので、彼らは日本人と同じで黒いひとみと黒い髪を持っています。で、彼らを見たら無条件で殺していいという決まりが数十年前まであったんです。

ジプシー スペイン
スペインはヨーロッパでもっともジプシーが多い国だそうです。
引用:連載.jp「【スペインの外国人】ジプシーの世界

だから彼らは踊りで感情を表現したんです。小さな喜びも大きな悲しみも…。いつ殺されるかわからない命で、全力で感情を表現していました。それがフラメンコです。

私もあることがきっかけで「舞台は今日が最後になる」と決めて、踊るようになったんです。

―― どんなできごとがあったんですか?

コロナの前まで、毎年ボランティアで特別支援学校さんで踊っていました。私のショーを見た子たちが、いままで声を発さなかったのに歓声を上げたり、うつむいていた子が笑顔を見せたり…。先生たちには「奇跡が起きる」と言っていただけたみたいです。

でも最初に訪問したとき、私がショーの出来に満足できませんでした…。子どもたちは喜んでくれたんですけど、数日後にショーを見ていた子のひとりが交通事故で亡くなったと連絡がありました。重い障がいを抱えている子が多いので、たまにあるんです。

そのとき思ったんです。

私はショーのやり直しはできる。でも、亡くなった子にはやり直しがきかないんだ…って。

それ以来、ひとつひとつのショーを「今日が私とお客様の最後のショー」と決めて踊るようになりました。だって、明日生きてる保証なんて誰にもないじゃないですか?

ショーのたびに、私は命をけています!

生きる希望を与えることが私の使命・原動力

―― 星野さんのお仕事で周囲にどんな影響を与えたいですか?

ん~…いっぱいある(笑)

ショーを見に来てくださる人には、生きることをあきらめないでほしい、自分を大切にしてほしいなと思っています。これはPionero ACADEMYピオネロ アカデミーにいらっしゃる生徒さんも同じなんですけど、自分を大事にしてほしいです。

ピオネロアカデミー フラメンコ 教室
生徒さんの発表会の様子(星野さん提供)

お問い合わせいただくのって女性ばかりなんですけど、子どもやご主人を自分以上に大事にされている方がすごく多い。それはそれでいいんですけど、もっとご自身を大事にしても良いと思うんです。

あとは自分で自分をあきらめないでほしい、ってことかな?

50~60代の方の問い合わせだと「年ですけど大丈夫ですか?」と言われることが多い。近くの高校へ踊りに行ったときに生徒さんからも「小さいころからはじめないとダメなのか?」と質問されることも多くて…。それで仕事をあきらめる人もいるみたいなんです。

でも言いたい。

ちょっと待って!私、フラメンコはじめたの22歳だよ?プロになれるよ?80代のダンサーもいるし、高校生から夢を追いかけても遅くないよ!子どものころからはじめないといけないって誰が決めたの?って。

私は生きる希望と将来をあきらめないことを伝えるのが、私の人生の使命だと思ってます。日本人は年齢を気にしすぎです(笑)

―― お客様から言われてうれしい言葉はありますか?

「元気になった」ですね。

ショーの後って、私もお客様もアドレナリンが出てて言葉が出てこない。そんな中で出てきた「元気になった」にはいろんな意味が込められてると思うんです。だから、そういってもらえるだけでとっても嬉しいです。

―― 最後に、星野さんにとって「仕事」とはなんですか?

その人が生きてきた使命をまっとうするものです。使命は好きなもの見つけて、それを頑張る。好きなこと以外はやらなくてもいいとも思ってますよ(笑)

だって、好きなことって頑張れるじゃないですか? 私、練習は嫌いなんですけどフラメンコは好き。だから練習も頑張れるんです。「あんまり『頑張る』って言いすぎるのもよくない」って言われるんですけど、好きなことしか頑張れないですよね? だから口癖になっちゃった(笑)

自分が一番輝けること、それが自分の使命であり仕事(星野さん提供)

今は見つからなくても、みんな必ず使命を持ってます。見つけるまではいろんなことをやってみるといいと思います。見つけたら「泣いてでも頑張れるのか」を自分で問う。はっきりしたら、まっすぐ進めばいいんです。

将来、Pionero ACADEMYピオネロ アカデミーで学べるものを増やしたいとも思っていますが、調べていくと30代でやりたいことがわからない人も多いそうです。だから私のお教室を文化発祥はっしょうの地にしたいと、パートナーと語っています。

私自身はショーを見てくださった人に生きる希望を与えることが人生の使命です。それでしか私は輝けないし、自分自身が喜ばないので!

編集後記

プロのフラメンコダンサーという、私たち編集部も実際に見たことがない世界のお話を伺うことができました。また、インタビュー中も終始すてきな笑顔で対応してくださった星野さんの情熱を感じられた時間でもあります。

つらい過去を背負っていても、輝ける場所は絶対にある。それまであきらめるのは早いと、力強く語っていただいたのが印象的です。

毎日2時間、長いときは10時間も練習される星野さん。背後には、その時にしか表現できない生きる希望を示した迫真のダンスがあるのです。

星野さんのお仕事やフラメンコについて詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。

▶  Pionero ACADEMY様 ホームページ

星野さんInstagram

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