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産直ECのネガティブポイント


前回、このnoteを書いてみた。

ひょんなことから、青いTシャツさんと近藤さんと話す機会がありそうなので
その前に、有機野菜の流通の会社で働くわたしが考えている産直ECのネガティブポイントを書き留めておきたい。

これは産直ECの企業を批判したいとか、貶めてやるぜ、へっへっへ😈
なんていうそんな悪者になりたいわけではなくって、

こっちのnoteに書いたように、


「中のことを知ったからこそわかること」があると思っている。

産直ECで日本の農業は明るいのだ〜なんていう人に、
いやいや、こういう側面もあるよ、というのを提示するためにも。

中のことを知らなければ、わたしもミーハーな性格なので
「農家さんと直接繋がるなんて、なんてすてきな!!!」
「ポケマルも食べチョクも、コロナ後伸びたっぽいし農業界はこれから産直ECが主流になっていくんだろうな✨」
「秋元さんいろいろ取り上げられているし、産直ECはめっちゃ画期的なんだろう✨」なんて思ってただろう。

そしてこれもわたしからの視点なので
産直ECの企業で働いている人、産直ECに実際に野菜を出している農家さん、産直ECのヘビーユーザーの人はちがう視点を持っているかもしれない。

ちがうことや、ちがう視点があれば、ぜひ教えてください🙏


①納品時に手間がかかる

例えば100kgのにんじんを売る場合


産直EC(to C)の場合

①10kgの箱を10個つくる
②それぞれのお客さん別の納品書(案内の紙やら)を10枚つくる
③10人のお客さん分の送り状(それぞれ名前も住所もちがう)を用意しなければならない

法人、卸(to B)の場合

①20kgの箱を5個つくる
②売り先は一つなので納品書も送り状も同じものを用意


納品のことを考えたとき、その荷造りも納品書の作成、送り状の手配など
とにかく手間がかかります。

その分個人向けの方が利益率はいいかもしれませんが、とはいえ、手間です。

その梱包の時間を本当は畑にいる時間に使えるかもしれません。
そしたら、もっと自分の思うような野菜が作れるかもしれません。
梱包する時間、納品の準備の時間もばかにはなりません。

その手間も考えて、それでも個人向けに売っていく農家さんもいれば
そんなことやってられないわ!っていう農家さんもいると思います。


少量多品目という栽培方法


逆に、少量多品目の農家さんは相性がいいと思います。

けれど、にんじん、ほうれん草、ニンニク、じゃがいも、、、という「少量多品目」という栽培スタイルは手間です。

それぞれの野菜の栽培方法が違えば、その野菜に対する知識、使う肥料器具、収穫方法、梱包方法など全て対応していかねばならないからです。これは農家さんの生活スタイル、やっていきたい方向性、目指していきたいことによるのでどちらがいいor悪いではありません。
手間でも、そこに想いがあってやり続ける人もいれば、やはり手間だと言って辞める人もいます。
(実際に、自分で野菜の定期宅配をやっていたけれど、そのスタイルを辞めて、中量中品目に絞っていった、という農家さんもみているので。)


②直接のやりとり≒クレーム対応

売る人にとってお客さんが増えることは良いことですが、売る人が増える=その分コミュニケーション、やりとりの量が増える、ということです。

前回書いたnoteでのYouTubeでも話していましたが、その「直接のやりとり」がやりがいに繋がることももちろんあります。

けれど、それはコインの裏と表と同じようにネガティブなこともあります。

直接売るからこそ、うれしい声もあれば、ネガティブな声クレームも受けることがあるでしょう。食べる側の人も本当にいろんな人がいるので、「なんでこんなもの送ってきたんだ怒」なんて言う人も時々います。

そんな1人1人に向き合う時間と身体精神的忍耐、柔軟性も必要になってきます。
コミュニケーションは大切です。
でもそれだけをしていても、それにどんなにたくさんの時間をかけてもいい野菜を作れる訳ではありません。



③営業、工夫をし続けないといけない

これはやっている人に聞いてみたいのですが、
産直ECに出品したところでどんどん売れていくわけではないでしょう。

リピートしてもらうようなコミュニケーションをはじめ、売れるような商品撮影や、商品の文章を工夫しないと、出品していても売れないのではないかな〜と勝手に思っているのですが、どうなのでしょうか。

産直ECを運営する側からしたら「登録生産者数○○人以上」って売り文句になりそうですが、生産者さんからしたら自分と同じような商品をだす人が増えれば増えるほど買ってもらえる量は少なくなる。だからこそ、買ってもらうための努力をし続けなければならない、のでは。



④売上が見通しがつきづらい。作付が難しい?

JAに出している農家さんも同じかもしれませんが、売上の見通しがつきづらい。
つまり、作付計画がたてづらいのではないか、と思っています。

去年は産直ECで100kgのにんじんを買ってもらったけど、来年再来年も同じ量が出るか、と言ったら全くわかりません。
登録生産者さんが増えれば、同じような野菜を出してくる農家さんが増えたらお客さんは分散してしまうでしょう。

だからこそ、販路の一つにしておく農家さんが多いとは思いますが、そのあたりどうしているのでしょうか。

逆に言うと、うちの会社は作付も一緒に考えている農家さんもいるので(全てではない)今季はこれぐらい買わせてもらいたい、という約束をしています。
これは農家さんにとってもありがいのではないかなーと思っています。

既に販路がわかっていてつくるか、出品しないとどれくらい売れるかわからないかと言えば、いくら自分で値段を決められると言っても不安定なところはあるなと思います。


⑤運営側はロスが出ても呼びかけることしかできない

ちょうど2年前のコロナ時に宅配業界、EC業界はとても需要が増えました。
産直ECも、その頃に急激に拡大しています。
Twitterでも、農家さんが困ってます。イベントや飲食店で使う野菜がロスになります。買ってください。というような訴求をして伸びた部分もあります。

そう。産直ECの運営側は、それを発信することしかできないのです。

買ってください。農家さんが困っています。のツイート、拡散、祈ること、
そして多くても、自分とその周り人に渡す分ぐらいの量しか買えないでしょう。
実際に買うのは、その先のお客さん。(どれくらい買ってくれるかはわからない)

けれど、流通や卸小売店であれば、「うちが買う」と言えます。

実際のコロナ時に、大根が1000本売り先がなくなってしまった農家さん、給食に出すはずだった水菜がロスになりそうだった農家さんがいましたが、
「今週のお野菜セットに入れよう」となって買うことができました。

その時、「お客さんがちゃんといること」農家さんの販路の一つがなくなったとしても「うちで買うよ!」(それも、個人で消費できる量ではなく、ある程度の量)と言えることの強さというか、大事さを痛感しました。

そういう意味でも、産直ECサイトはプラットホームなだけです。
テナントを貸しているだけであって、そこに登録出品したからといってどれくらい売れるかの保証も約束もしてくれません。


⑥送料が高い=食べ手も

時々送料安くなるよキャンペーンをしてますが、そう、送料が高いです。
下手すると、商品よりも送料の方が高い(夏はクールで送ればなおさら)なんてこともありえます。

農家さんにとっても相性が良くない農家さんがいるように、頼む人にとっても、ある程度そこにお金を払える人でないと続けにくいのではないかなって思います。


⑦C向き、卸飲食店はなかななか手が出ない


送料含め、個人向けの価格設定なのでどんなにいいものであってもやはり卸や飲食店業務用には向かないのではないかなと思います。

実際に、業者の人から
どんなにこだわったものでも産直ECは高いから、市場通して農家さんから買ってるよ〜って言う人がいました。

量でも価格でも、個人のお客さんと、業者卸流通のお客さんでは全くちがうのだと改めて思いました。



相性のいい農家さんは限られる




産直ECを使う人で、にんじんはA農家さん、ほうれん草はB農家さん、ニンニクはC農家さん、じゃがいもはD農家さん、、、なんてバラバラの農家さんから買う人なんて少ないですよね?

食べ手の人は「スーパー」と同じで一つの場所(=農家さん)でいろいろ楽しめるものが欲しいわけです。そして農家さんって千差万別なので、全ての農家さんがたくさんの種類を栽培してるわけではありません。つまり、中量中品目以上でやっている農家さんとは産直ECは相性がよくありません。

例えば、にんじんだけを作っている農家さん、キャベツだけを作っている農家さん、ラディッシュだけを作っている農家さん、それぞれ売れるものは、その一つの野菜だけです。
そしてそのように一つに特化して野菜を作っている農家さんは量を捌きたいのです。

100kg、200kg、トン単位で買ってほしい。でも個人のお客さんは買えても1kg2kgだけではないでしょうか。果物や、魚介、家庭でも在庫のできる野菜であれば産直ECで買うこともあるかもしれませんが、ある程度の量を作っている農家さんの売りたいニーズとお客さんのニーズはそこでは合いません。




「供給と共感」

今回は「あえて」ネガティブだと思っているところを並べてみました。

が、決して批判したいわけではないのです。

「供給」という視点で考えた時に産直ECはやはりネガティブということです。

でもこの時代、供給のものだけで社会が成り立っているわけではありません。
「共感」してお金を払ったり、「共感」してお金が循環する社会になりつつあります。

「共感」も大切にしたいからこそ、やはり、「供給と共感」は別軸で話をしなければならないと改めて思います。

逆にそのいいとこどりできるのが坂ノ途中の定期宅配だったりするんじゃないかな?







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