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父とドライブ

約8ヶ月ぶりに実家に帰った。

年齢を重ねると父の優しさや愛情をとても感じる。

もともと口数が少ない父。笑うことも多くは無い。不器用で、何度も同じ話をする。

だけど、発する言葉一つひとつに愛情を感じる。

大学に入り、初めて実家を離れた時、母と一緒に一人暮らしの家に訪ねて来てくれた。話の中心は母と私、ひとしきり話した後、帰り際に父が発した言葉は「金は足りてるのか?」。あまりにも不器用だが、とても愛情のある言葉に父の人柄を感じる。

今回は、コロナの影響で仕事が減り、実家にもなかなか帰れなかった私をとても温かく迎えてくれた。

会社勤めを終えた父はもともと祖父母と母が営んでいた苺農園を引き継ぎ、休み無く働いている。今回私が帰省した理由も、空いた時間に家業を手伝いたいという思いからだった。

夜遅く実家に着き、次の日からさあ仕事だ!と意気込む私に、父は「ドライブに行こうか」と誘って来た。起きたのは朝7時頃。私が朝食を摂り、一息ついている間に父はひと仕事終えている。

前日の夜、呼子のイカの話をしていたので、きっと私が呼子のイカを食べたいと察して誘ってくれたのだろう。ちなみに呼子はこちら↓

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改めて地図で見ると、こんなに日本の端っこで育ったのかと思う。そして呼子のイカ↓

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生きたまま戴くのは少し残酷だが、美味しく全部戴いた。

会話は相変わらず私と母が中心で、父は黙って運転してくれる。

そして父が一番嬉そうなのは私と晩酌する時。兄も弟もお酒は弱く、私も強くは無いが父には付き合える程度。お昼に嬉そうに冷蔵庫にビールを仕込み、私を晩酌に誘う父がとても愛おしい。普段そんなに呑まない私も、父に付き合い毎晩ビールを呑む。

実家に帰って3日目、少し家の手伝いをした後はまた父と母と私3人でドライブへ。10/1からの3日間は、中秋の名月、満月、虎の日、一粒万倍日と、金運UPの日が続くので、あやかりたいと、地元の有名な「高島」へ。船で10分程のその島には、「宝当神社」という宝くじ当選で有名な神社があり、小さな島全体は漁業と宝くじ業で成り立っている(?)

普段賭け事などしないし、宝くじは過去に一度だけ、300円分のスクラッチを購入した経験があるだけだ。両親も真面目で冒険しない性格。島で宝くじを買おうにも買い方が分からず戸惑った。そこで父「よし、一人3000円ずつ、9000円分買おう。当たったら山分けだ!」と、一人3000円ずつと言いながら3人分の宝くじを買ってくれた。

高島の写真は載せられるものは無いが、可愛いおみくじの写真を↓

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一体いないのは私が購入し、今は私の部屋にいる。よく見ると表情が一体ずつ違い、何とも愛くるしい。

今回滞在したのは5日間。こんなに長く滞在したのは10年ぶりくらいかもしれない。

庭で一人家の手伝いをしているといろんな人がやってきた。近所の80歳を超えたおばあちゃんや、軽トラで颯爽と現れて袋いっぱいの茄子をくれ、颯爽と去って行った近所のおばさん。(誰かは分からなかった)幼少期にお世話になったおばさんも、私が帰省した事を聞きつけ会いに来てくれたらしい(残念ながら私が東京に戻った後で会えなかったが)

15年以上実家を離れると、ご近所さんでもどこの方か分からない。そんな私を家の前の畑で作業していた父は見守ってくれていたようだ。「あの時茄子を持って来てくれたのは○○さんだよ」「○○さんが来てたね」と。

父はマメで、朝からお風呂掃除をし、ちょこちょこと色々な仕事をしている。苺は出来高で成績が出るらしいのだが、うちは父が本格的に苺に携わるようになって毎年豊作らしい。小さい土地でしか行っていないが、成績は上々との事。本当はいろんな事が出来るのに出来ないと決めつけている。不器用で真面目で優しくて清貧だ。

幸せであってほしい。

帰り際に「自分の分の宝くじを持って帰れ」と何度も言われた。楽しみが無いだろう、と。

そしていつも、見送る際に「元気でな」と車を降りて見送ってくれる。

あまり多くの幸せを望まない父や母だが、もっと多くを望んで多くの幸せを感じて欲しい。

宝くじが当たったら両親や家族の幸せの為に使いたい。(ちなみに、父が宝くじが当たった場合の希望の使い道は、現在手動で開け閉めしている苺のビニールハウスを電動で開け閉めできるようにする事らしい)

2020.10.4

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