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アメリカの財産分与。40歳のわたしが弁護士を雇って遺言を書いてみた。

子どもができると、今までは考えてもみなかったことを真剣に考えるようになります。例えば、死後のこと。日本では、例えば伴侶が亡くなった時は、残された方が遺産の半分を受け取り、その子どもが残りの半分を人数で分けるということになっています。(税金もしっかり取られますが。)ところがアメリカでは、日本と違って遺産相続が自動的に家族のものとはなりません。車であるとか家であるとかは、きちんと遺言として残しておかないと、国に取られてしまうか、裁判をして勝ち取らなくてはいけないのです。ですから、アメリカに住む親として死ぬ前に子どもにしてあげられる最低限の優しさは、その煩わしさから解放してあげることと言ってもいいでしょう。

我が家でも、子どものために遺言手続きを済ませました。財産分与の方法にも色々あって、例えば、全財産をすぐ与えるのか、あるいは少しずつ、いくらなのかなども決められますし、ある一定の歳を設定して、その時にどのくらい渡すということも決められます。そして、子どもが小さいうち、経済的なコントロールは誰の元に行われるのかなど、より現実的なことも決められます。家、土地、車などだけではなく、他にも資産価値のあるもの、例えば高価な古本や陶器、アート作品、ヨット、文化的コレクションなども、持っている人はどうするか決める必要があります。子どもが受け継ぐのか、それとも寄付するのか。(我が家にはあまりありませんが)

また、財産分与だけではなく、両親ともに亡くなった場合の子どもの預け先(祖父母、親戚、友人?)や、いざという時の延命措置の権利を誰に与えるか、なども考えなくてはいけません。アメリカに住んでいながら、日本との行き来がとても多い我が家にとっては、日本で死んだ場合のことも考えなくてはいけませんし、死んだ後に、火葬がいいのか、他の方法がいいのか、そして、どこに埋まりたいのか。もっというと、残された伴侶が再婚した時に財産分与はどうするか、なども検討する必要があります。楽しい作業ではありません。

意外と知られていないのは、グリーンカード保持者だと、遺産分与において不利になることです。ただ、それも数億円の財産がないと関係ないそうなので、もし万が一宝くじでも当たった時には市民になることも考えてみたいと思います。笑 

冗談は抜きにしても、このグリーンカードの法律の部分は今日現在の法律の話であり、いつか変わると言われています。そういう意味でも、プロに頼んだ方が確かだろうと思い、わたし達は遺言専門の弁護士に手続きを依頼しました。決して安い値段ではありませんでしたが、3年ごとの更新にも毎回チェックしてくれるというサービスもあり、安心して任せられます。

さて、あれやこれやを決めて遺言書が完成すると、フォルダーに挟まれた分厚い書類が送られてきます。そしてその1ページ目に挟んであったのがこのカードです。

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「ファミリー・エマージェンシー・IDカード」と書いてあります。何かあった時のために財布に入れておくようにとのこと。

簡単に訳すと
「わたしには、家か学校で待っている子どもがいます。もしわたしに何かあってコミュニケーションが取れない場合は、ここに記載されている人たちに順番に連絡をとってください。この人たちには、わたしの子どもに対して権限があり、導く立場にあります。」

これは夫のカードなので、この後の1番のところにわたしの名前と家の電話番号(HはHome Phoneの略)、携帯電話の番号(CはCell Phoneの略)が続きます。そしてその下には、アメリカの違う州にいる家族と、わたし達が信頼する友人たちの名前と連絡先が連ねてあります。これは、遺言書にも載っている連絡先です。そして最後には、赤字で「もし誰にも連絡が取れなかったら、このカードを裏返して、そこに書かれている弁護士のところに速やかに連絡してください」とあります。

日本にいる方、そしてアメリカでまだ遺言書を作成してない方にもお勧めしたいのは、せめてこの小さなカードだけでも、早めに作っておいた方がいいということです。何か緊急事態が起こった時、大抵の人は財布を調べるでしょう。身分証の他にこのようなカードがあれば、すぐにでも家族に連絡がいきます。段ボール紙でもなんでもいいので、少し厚めの紙に、緊急連絡先(伴侶、親、親戚、友人)などの電話番号を書いて、財布に入れるだけですから。特に友人に関しては、名前を載せたら、本人にも連絡しておくと心の準備になって良いと思います。

いつあるかわからないその時に備えて、後悔のないように、できることを、今のうちから。

※追記:これは2019/9/3に書いた記事を、ブログのプラットフォーム移行に伴い、若干の修正を加えて転載したものです。

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