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【小説】うちのピアノ

我が家にはピアノがある。
縁側をリフォームして広げた時に、知り合いから貰い受けたらしいが、割とキレイなピアノだ。

普段は、家に着くとランドセルを放り捨てて母の居ぬ間にテレビを見るのだが、今日はなんだかピアノが目についた。

硬いピアノ椅子に腰掛け、鍵盤の蓋を開く。
そして、ピンクのような赤のような紫のような布を外すと白黒の鍵盤が姿を表わす。

ピアノはなんとなく習う気にならず、弾けるのは指も定かではない「猫ふんじゃった」くらい。
ピアノを習ったことのない母がフィーリングでで教えてくれた。

記憶を辿りながら、ゆっくりと弾き始める。

〜とととんちゃっちゃ〜

最初は簡単だ。

〜ととと〜ちゃっちゃ〜

あれなんか違う。

そんな具合に手探り手探り弾いていく。

そうこうしていると、どこからか音を聞きつけた、我が家のワンコが白い巨体で床にどっしりと座り、1人と1匹のコンサート会場ができた。

〜ちゃっちゃちゃちゃ〜ら、ちゃっちゃ、ちゃ〜

引き終えると、ふぅ、と息をする。
なんとなく達成感を感じながら。
すると、

「ただいま〜」

母が買い物から帰ってきた。
教育熱心な母は、帰ったら1番に宿題をするように口酸っぱく言うし、テレビを見ながら宿題も認めない。

あー、テレビ見る時間減った…。
まあ、いっか。

そんなことを思いながら、玄関に向かう。

「お母さん、おかえりー」

今日のコンサートはワンコと私の秘密だ。


おわり

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