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留学最終東欧旅行記③ウィーン編

9月2日

楽しみにしていたドイツ語圏にまた来た!
飛行機を降りると、歩いてもいいような距離をバスで送り届けられて特に審査もなくあっさり入国。今までで一番何もなかったような気がする。そして、読める言語がそこらじゅうに書いてあって嬉しい!みんなはあんまり読めないかもしれないけど、それでもドイツ語の方が推測で分かったりするらしい。

やったー!

タクシー受付でも通訳を買って出たがなんか英語で対応された。3台覚悟していたが、2台で行けるらしい。全員で90€くらいなのは安くてかなり嬉しい。迎えに来てくれた運ちゃんとドイツ語で話したら仲良くなった。というか、ドイツ語圏にいる時はドイツ語しか出てこない、むしろ英語は苦手…。今までもほぼ英語使う相手と話してなかったから。ドイツ語ペラペラな先輩が「私英語だめなんですよ」と言っていた時の気持ちをなんとなく理解した。

私が半年間ハイデルベルクに住んでいた話をしたら、運ちゃんはトルコで社会学を学んでいたことを教えてくれた。だからこんなに訛ってるのかと妙に納得しながらタクシーまで長いこと歩く。二手に分かれる時、その運ちゃんが私を誘ってくれた。4:5に分かれて車内へ。荷物が多すぎて入らないかもしれないトラブルはあったがなんとか収め、出発しようとすると恥ずかしながら私がホテルの場所を把握していないことが発覚。友達に助けてもらって伝える。ほんとすみません。

出発してから助手席の私は気になっていたことを聞いてみた。「ドイツのドイツ語とオーストリアのドイツ語って違います?なんかトマトのことトマトって言わないんでしょ」これはエリアスが朝教えてくれた話だ。運ちゃんは「ほぼ一緒だよ。文法とか基本的な単語はだいたい同じ。たまに単語が違うね、でもほぼ一緒だから大丈夫」と言ってくれた。確かに、たまに聞き返すことがありつつ(私の語彙力なのか単語の違いなのか?)、彼とも問題なく会話することができていた。それを聞いて少し安心した。その後はどこから来たとか、どこに行くとかいう話をした。運ちゃんはHallstadtに行きなとおすすめしてくれた。私はその場所を知らなかったので、え、どこ?と何回も確認していたら、後ろの友達が聞き取って教えてくれた。マップで検索していたら運ちゃんが確認させろ、と手を出してきた。ちなみにこの人は運転中だ。まあまあこういう運転ルールが適当なのは理解していたから逆らわずスマホを渡して、私が前を見る。当然だが蛇行運転していて、不安で仕方がなかった。何回も「もう分かった、運転に集中して」と言いたかったが、怖すぎて「あー!」しか出てこなかった。前の車に近づきすぎたり急にスピードを落としてみたり、数回のヒヤッとがあった後、「そうそうここ」というふうにスマホを返された。こうして私たちの命は助かった。

リスクを冒して運ちゃんと仲良くなったおかげで、市内に入ってからは建物を案内してくれた。ここは川じゃなくて運河だよ、とか、ここらへんは周り全部美術館だよ、とか。街並みは例えるならパリに似ていて、四角くてでも細かい飾りはあって、全部白っぽい色をしている。そのくらいしか分からないけれど。でもパリよりもどっしり構えた建物が多い印象。今まで行った都市の中で一番ゴージャスなんじゃないかと思う。そしてホテルはそんなエリアのすぐ裏。運ちゃんはここから徒歩でいろんなとこに行けるよと言った。タクシーが一律料金なのは遠い人には助かった。チップを付けて払い、荷物を降ろしてお礼を言うと運ちゃんは走り去っていった。そこで気付いた。ハンドバッグにスマホが入っていない!!!この服にはポケットもない。またやらかしたか、私はなくしものに対して全然自分のことを信用していないので、2台目のタクシーの運転手さんに、さっきの運ちゃんに電話してくれと頼むが、個人の連絡先は知らないという。絶望か、と思ったらリュックのポケットの中にあった。助手席でリュックを抱えていたからそっちに入れたんだった。お騒がせしましたと謝り、2台目のタクシーも去っていく。

ウィーンではアパートメントを借りていたのだが、その管理人さんが出てきて迎えてくれた。ここにはエレベーターもあって安心。先に下の階の女子4人の部屋を案内してもらって私たちは外で待機していたが、イタリア語訛りっぽい管理人さんが言葉に詰まっている。入ってみるとグーグル翻訳を使って説明しようとしていたので、ドイツ語でいいよと割って入る。ウィーン、ドイツ語が使えて素晴らしいな。管理人のおばさんはほっとしたようにスムーズに説明をはじめる。何を言われるかと身構えていたけど、簡単なことでよかった。続いて私たちの男3女2の部屋。寝室が二つに分かれていて、男女グループでも泊まれるのがすごくありがたかった。おばさんは今ソファーが濡れているからブランケットを敷いてね、と大きいのを持ってきてくれた。前の客がなんかこぼしたんだろうな~と苦笑いして了承。ベッドが計4つしかないけど、ソファーで寝るか簡易ベッドで寝るかどっちにする?と聞かれる。簡易ベッドってどのくらい簡易なんだ?と返答に困っていると、見てから決めてねと持ってきてくれた。なんて優しいんだ。お言葉に甘えて簡易ベッドを使わせてもらい、男子部屋と女子部屋を完全に分けた上でリビングを呑み場に使うことに。

海外に泊まる時にいつも思うんだけど、絶対ホテルよりもアパートメントの方が家具も充実しているし広いし安い時もあるし、最高。バスタオルやシーツの取り替えはないけれど、それに耐えうる短期間のステイとかだったらまずアパートメントを探すべきだ。

この旅でなにより有難いこのアパートメントのいいところは、洗濯機があるということ。もう下着やらなにやらストックが尽きていたので、街ブラする前に洗濯機を各部屋一回回すことに。私が寮で使っていたものとは洗剤を入れる場所の仕様が異なり、意味不明なマークが書いてあってよくわからない。調べるのもめんどくさいし、コースは何がいいか分かっていたので、90度の熱湯で洗う選択肢があるの謎過ぎるよね、とか話しながらとっとと回す。待ちながらHARIBOを食べたり水を飲んだりしていたが、なかなか洗濯が終わらない。残り時間の表示も出ないので、途中で出かけるわけにもいかず結局2時間くらいかかってしまった。確か二部屋ともの準備ができたのが19時とかで、2回目の選択を仕掛けて出かけることに。

街に繰り出すには遅いということで、アパートメントの隣のウィーン料理レストランに行くことにした。これも優秀なトリップアドバイザーの提案だ。みんなの目当てはウィーンシュニッツェルだった。スムーズに入店することができ、メニューを見るとビール8種飲み比べが!ビール好きがテーブルの真ん中にちょうど集まっていたのもあり、大盛り上がりで注文を決定していた。私はウィーンの物価たっけえのに、と思いながら一人でAPEROLを注文。オレンジを入れて飲むカクテルみたいな感じのお酒で、ヨーロッパに来てから多くの人が飲んでいて知ったんだけどこれがおいしい。最後かもしれないと思って頼んだ。
フードはしばらく迷って、量を考えながらウィーンセットみたいなのを2つとウィーンシュニッツェルを一つ、9人で分け合うことにした。足りなかったら足そうと思ったけど、結果余るほどだった。そもそもビールでみんな腹がふくれてしまったんだよね。既にドイツで飲んでいたか知らないけど、黒ビールに大歓喜していた。私も一口ずつ飲んだけど、うまさはやっぱりよくわからない。ミュンヘンのヘルビールは、どうしてあんなに飲み進められたんだろう。

野菜どこ?


ビール飲み比べセットが来るのもだいぶ遅かったけど、それをほぼ飲み干すまで全然フードが来なかった。多分1時間半は待たされたと思う、他のテーブルも来ていなかったから飛ばされたとかではないけれど、不信感を抱いていた。しかもみんな空腹にビールを入れているから酔いが早く回ってしまって、文句でも言おうかしらと思ったところでようやくでっけえウィーンセットとシュニッツェルが来たんだ。
ドイツのとは違って、ウィーンシュニッツェルには何もかかっていなかった。あるのはただレモンだけ、とってもシンプル。でも固くない肉をきちんと感じられておいしい。ウィーンセットはじゃがいもを紫蘇みたいな香味のする黒い何かで和えたもの、肉の煮込み、パスタサラダ、マカロニサラダ、シュニッツェルとポメス、ソーセージがそれぞれ一人前くらいの量ずつ乗ったもので炭水化物が多く、ボリュームたっぷりだった。これもやっぱり大人数じゃないと頼めない欲張りセットだな、と大人数旅の良さを痛感する。やはり肉の煮込みが美味すぎる。紛争の起らぬよう、遠慮しながらみんな食べていた。こちら側の人々は食欲があったが、向かい側で一つのセットをシェアしている人びとは(多分ビールのせいで)食欲がそんなになくなってしまっていて、全然食べ進んでいなかった。ほろ酔いの我々はまた女子同士イチャイチャしたり、互いの写真を撮り合ったりしてのんびり食事を楽しんだ。でも、食事が来るのが遅すぎたので普通に食べていても22時半くらいになってしまい、女子の半分くらいは先にアパートメントに戻っていった。半数になった後タフなみなさんはビールやその他酒を追加で注文し、私はその分のお腹を向かい側の美味しいシュニッツェルで満たした。

ユーロ圏での支払いは私が銀行から引き出した分の現金で支払うことになっていたので、店員さんに全部私が支払います、というと「マジ?」と言われた。太っ腹ねえちゃんだとでも思われただろうか。まあ驚かれるはずで、この日の夕食は合計で200€?もっと?した。これは日本円で言うと30000円超えなので、クラクフと比べると全然違うことが分かる。やっぱウィーン高い。

9月3日

この日はそろそろ自然が欲しいということで早く起きて、ヴァッハウ渓谷へ!電車で一時間ほどの世界遺産の街へ向かう。
その前に駅のパン屋さんで朝食を調達したのだが、なんか注文する何人かの英語が怪しい。スタッフさんが丁寧に聞き直しながら対応してくれて優しかった。私がドイツ語で注文すると、そのおばさんは目と口を丸くしてサムズアップしてくれたので笑ってしまった。パンの注文なんて、定型文使ってるだけなのに。でもこうして外国語を実際に使えることが分かるというのは、すごくモチベーションになるなあ。

修道院

ヴァッハウにはでっかい修道院があり、中は博物館になっていた。外観の塗装は新しく塗られたという感があり、ピカピカして見えた。中は図書館と礼拝堂が特にすごかった。図書館は(多分)本物の古い書物の表紙が見えていて、それが金色の糸で縫ってあったりして、上まで本棚が伸びていた。迫力があってかっこよかった。ちょうど日曜日の午前中だったので礼拝堂ではミサをやっていて、神父さんが話しているのを見学することができた。ドイツ語でのミサを見たのは初めてで見入ってしまったが、何を言っているのかは全く分からなかった。それよりも豪華な内装が豪華すぎて、圧倒された…。ピンク色を基調とした明るい雰囲気の堂内、柔らかい光、それに金色の装飾。撮影禁止だったのでポストカードを買ってしまった。

その後はすぐ楽しみにしていたドナウ川クルーズへ!乗り場はすぐ近くにあったので、チケットをもらってウキウキ歩いて行く。乗り込むのが遅めだったのでテーブルがあるか不安だったが、なんとか屋外の席を人数分確保。ここで酒が飲みたい!と意気込む友達もいたが、外で飲んじゃダメと言われたそうで大人しく帰ってきた。しかし、向かい側に座る小さな子供たちに親がコーラを持ってきたのを見て、あれ、いいんじゃん!?となる。ドリンク買うの手伝ってよー、と言われるが、私はこの後雨が降りそうな気がしていたので少しでも長く屋外にいたかった。ちょっと待って~と言って景色を楽しむ。結局雨は降らず、屋内に移動することもなく、友達は酒を諦めてしまった。ごめん、でも景色を楽しめたのでこれで良かったと思う。

向かい側の子どもたちが無邪気に話し合って遊んだり、コーラをこぼしたりしていたのが可愛かった。かわいいな~と眺めていたら、彼らが気付いてちょっと遊んでくれた。しかし先に降りた彼らに船上から手を振っても、こちらのことは一瞥もせず帰って行った。そんなもんだ。代わりにこの日はマイラブが私にべったりくっつきモードで、もっとかわいい。

くっつきあう妹チーム

船の上からは3つほどの城と、それぞれの集落にそれぞれの形をした教会を見ることができた。本当に集落ごとに大きな教会が必ずあって、キリスト教の影響力の大きさを感じた。ただ、目的地に現れた教会はそれまで見てきたものとは明らかに格の違う、鮮やかな水色の大きなものだった。まず船の上から写真を撮り、みんな大興奮で下船する。その際、屋内にビュッフェを発見し、「これ食べてもよかったんじゃね?」と空腹な私は外の席を意地になって守り続けていたことを後悔した。心の広い他の人たちは、「まあまあ、今気づいても仕方ない、陸でうまいもん食べよう」とサッサと降りていった。あたしゃ人一倍食い意地が張ってんのかいとここで自覚して悔しくなった。

街に続く階段は塀の中のトンネルのような場所にあり、さらにワクワクゲージが上がる。意外と長かった階段を上るとメインストリートに辿りついた。すぐにハンドクリームやジャムなど、アプリコットの商品が並んでいるお店を見つけて入ることに。ウィーンはザッハトルテ発祥の地で、アプリコットが名産らしい。他にもリキュールが数種類あって、私は一つお土産に買って帰った。クリーミーなリキュールみたいなやつで、今これを書きながら飲んでいるんだけど、炭酸で割ると甘すぎずアルコールも優しくなって美味しい。ほろよいの新商品みたい。

お昼はレストランに入る。さっきのアプリコットのお酒がここで飲めないかとメニューとにらめっこしていたら、店員さんがワインをゴリ推ししてくる。あまりにもゴリゴリ推すので、テーブル全員頼むことにした。これが大正解で、甘くてアルコールが少なくて、ほぼジュース!飲みやすくてめちゃくちゃ美味しかった。教えてくれてありがとう店員さん。
船の中で実はパンを食べていたのでそこまでお腹が空いていなかった私が頼んだのは、スイーツのApfelstrudel。パイのロールケーキみたいな感じで、甘さひかえめな一品だ。添えられたバニラアイスとの相性が最高で、ペロリ!大きかったのでお腹も心も満たされた。男子が頼んだお食事メニューも大変美味しかったようで、感激しながら食べていた。

Apfelstrudel

ここのレストランのトイレを借りたとき、後ろからおじさんがついてきた。小さなレストランだから男女共用なのかな、と特に気にしていなかったが、女性の店員さんが「間違えてますよ」とおじさんを訂正しにトイレに入ってきてくれた。店員さんの気遣いも嬉しかったし、「あ、まちがえたすまん、ハハハ」みたいな感じでスッと出ていったおじさんもなんか愉快だった。私の危機感がなさすぎるか?

レストランを出て再びメインストリートを歩く。アプリコットのお店、ワインのお店、ごちゃごちゃお土産屋さんの三種類でだいたい構成されていた。ごちゃごちゃ屋さんではどこもクリムトが激推しされていて、特に「接吻」グッズが山のようにあった。気になったのはその立体フィギュア(?)で、もともと絵画のものを立体化する発想が気に入った。「接吻」が好きな共通の友人へのお土産にするべくトリップアドバイザーと交渉し、留学前のもろもろのお返しにしたいという主張を通して買う権利を獲得した。

船の上から見た青い教会に近づくことに。入場料が必要だったので中は諦めたが、中庭で十分楽しめた。まず大きな鏡に映る塔と自撮りができるという粋な仕掛けがあった。それから水汲み場もあったのだが、その蛇口が固いわ出たら出たで勢いが良すぎるわ。水風船で盛り上がれる21~23歳児の集団だったのでその蛇口は人気を博した。私ももちろん濡れた。

船から見た教会、水色で爽やか~!ドナウ川の水は見習ってくれよな

その後、ドナウ川と記念撮影したり、買い残したお土産を回収したりしながらバス停へ向かう。バスで隣町の鉄道駅へ行き、そこからウィーン市内までは朝買った電車+修道院入場+クルーズのチケットに含まれている。電車の中ではまた熟睡した。クラクフあたりから知らず知らずのうちに体力が削られてきているようで、移動時間をずっと睡眠に充てている気がする。それはそうと、ウィーンの電車は案内板も音もDBと似ていて安心感があった。言語が同じなのもあって、しばしばまだドイツにいると錯覚していた。

市内に戻った後は、作戦会議の結果夕食をスーパーで済ませて、カフェザッハーにトライすることに。カフェザッハーとはザッハトルテ発祥のお店で、予約が取れない超人気店だ。我々も前日にオンライン予約を試みたが当然空きがなく、直接アタックするしか選択肢がなかった。昼時と夜が空いているというのでチャレンジしてみようというワケだ。個人的には空いていると言っても2時間くらい待たされるんじゃないかと予想していたけれども。

日曜日なのに開いているスーパーがあるのは、ドイツよりもえらいところだ。二階建てで、通路は狭いが構造が面白くて楽しかった。モーツァルトチョコをお土産に買ったり、翌日のサンドイッチを選んだり、チーズやハムを物色したり。各自好きな酒を入れていったら、9人の合計が120€を超えた。ここレストランじゃなくてスーパーだぞ。みんな浮かれすぎだ。
とはいえ現金を使い切りたい私にとってはありがたい。ボトルが多すぎるので、手分けして持っていったんアパートメントに帰る。ウィーンの水道水が飲めて本当に良かった。これに飲料水を買っていたら、全員のエコバッグの底が抜けるところだった。ちなみにウィーンの水は京都のよりも美味しいと思った。軟水か硬水かはよくわからないが。

移動中に見えてしまった次の日の目的地

部屋で一息ついて、洗濯回す人は回して、いざザッハトルテをいただきに出陣。当初の計画では次の日のオペラ直前に食べるつもりだったので、今日の服装が場と釣り合うかどうか密かに焦ったが、もうこの際気にしないことにする。ウィーン市内のトラムやバーンの72時間乗り放題チケットを買っていたのでどれだけ外出しても心が痛まないのが嬉しい。

豪華な劇場と来るザッハトルテに大興奮して残像になるとびー

そのカフェは急に現れた。というのも並んでいる人が誰もいなかったのだ。大行列ができていると思っていたから拍子抜けしたが、ラッキーなことこの上ないので並ぶ。待っている間に数組が続いた。タイミングが良かったのか、9人の行列効果がすごいのか。クラクフのドーナツ屋さんでも行列効果を起こした実績を持つ我々だった。
すぐ後ろのおじさんが話しかけてきた。彼はウィーンに住むフルート奏者だという。この音楽の都で音楽で生きていけるなんて、絶対に彼はすごい人だ!スマートフォンで演奏している動画を見せてもらったが、目の前の陽気な様子とは一味違ってかっこよかった。


店内!


ウエイターさんはかなり早く私たちを呼びに来てくれた。9人だと告げると「Oh my god」だかなんだか言っていたが、テーブルが三つくっついた席にきゅうきゅうに案内してくれた。店内は白い壁と赤いソファ、誰だか知らないがたくさんの肖像画が壁にかかっていて、ありがたい雰囲気があった。念願のカフェに座れたということで私たちはニッコニコ。全員ザッハトルテを注文し、カフェまたはティーをつける。カフェザッハー的には「あんたたちどうせザッハトルテ食べに来たんでしょ」という感じで準備していたんだろう、9つものケーキはすぐに運ばれてきた。むしろ飲み物の方が遅かった。全ての注文の品が揃ったときにはテーブルの板は見えていなかった。皿数の多いこと。スペースがあまりにもなくて映え写真というわけにはいかなかったが、幸せな光景だった。えみは誕生日前夜祭と言うことで張り切っていた。

ぐちゃぐちゃすぎるだろ


初めての本格ザッハトルテ、うっま~~~~い。アプリコットジャムが美味しいし、生地もほどよく甘くて食べ進めやすいし、甘くないクリームがさらにフォークを持つ手を加速させる。一度自分で「ザッハトルテ」を作ったことがあるが、(もちろん美味しかったけれど)あれを同じ名前で扱ったことを反省しなければならない。そして、オリジナルブレンドのティーが美味しすぎる!!!今まで飲んだ紅茶の中で一番だったと思う。何をブレンドしたのか知らないが、ケーキにも合うしそのままの味も全然飽きない!何なら大好きなミルクティーよりも美味しい。舌バカなのでこれ以上の食レポは断念せざるを得ないが、とにかくいい紅茶だった。エスプレッソを頼んだ人たちも「めちゃくちゃうまい」と目を丸くして感動していた。ウエイターの態度は良くなかったが、ケーキとティーがあまりにも美味しかったので帳消し。大満足のカフェ体験だった。もう日本のカフェには行けない。

ちなみにフルートおじさんはさっさと食べて私たちにバイバイと声をかけて店を出ていった。こんないいカフェに短時間だけでいいなんて、常連に違いない。優雅な人だわ。

心が満たされた後は夜のウィーンを散歩しながら帰ることに。カフェザッハー系列のショップがあって紅茶も販売されていた(荷物に入らないので断念)。夜の街も白い建物が適度に照らされていて綺麗だった。

夜はえみのバースデーイブなので上の階で宴を開いた。この時撮ったえみ姉の写真好き。酒を好きなだけ飲んでおつまみも好きなだけ食べて、マブにダル絡みされて、リビングのソファの上で寝ていた。気が付くと朝の3時半、とびーがシャワーからあがったところだったのは覚えている。さっきまでじゃれ合っていたマブもラブもいなくて、えみが後ろで寝ていた。ベッドで寝ようと思って部屋に移動し、次の日の朝散歩なんて絶対に無理だよ~とか考えながら秒で寝た。

9月4日

確かこの日だったと思う、寝坊したのは。集合が8時半とかで、起きたのは8時2分。えみに起こしてって言ってあったのに、普通にあの子は起き出して散歩に行ってる(私より遅く寝たのに、恐ろしい子!)。パニックになり洗面所とリビングの間の廊下を叫びながらウロウロすることしかできなかった。ヤニ吸いマブが玄関を開けて帰ってきたところで我に返り、部屋中を駆け回り始めることができた。昨日出発30分前からはシャワー禁止というルールを作っておいてよかった。こんな時でも洗濯物の取り込みは忘れない私、えらい。うーん、寝起きのとびーに「寝坊した!!!!」って喚き散らかしたのでえらくないかも。ともかくありったけの実力を出して、45分に準備ができた。目指していたトラムには間に合っているので問題ない。

今日は女の子たちが全員ワンピースを来ていて目が幸せだ。夜にオペラを見に行くので、朝から気合の入った服装をしているのだ。写真撮るの楽しかったなあ。

シェーンブルン宮殿でっか


そんな私たちが朝から向かったのは、シェーンブルン宮殿。ここ、オーストリアだからね。ヨーゼフ2世とか、マリアテレジアの肖像とかもあった!城内は撮影禁止だったのでお見せできなくて残念だが、どの部屋もロイヤルだった(小並感)。でも、当時の王族たちは(特に女性)それで幸せというわけではなかったらしい。政略結婚のために知らない土地に行ったり、不自由な生活を送ったりすることを強いられたのだから。

オーディオガイドで、「シシーは美貌を保つために髪の毛を数時間かけて手入れし、スポーツも欠かさなかった」と言っていてぎっくり。いつの時代も女を磨くには努力が必要なんだなあ。ということでモチベーションを上げるためにシシーのリップを買った。ショップが広くて商品の種類もたくさんあって、選ぶのがとても楽しかった。父にはここでメガネケースを買った。

正面ももちろん広かったけれど、裏側の庭園がもっと大きい!ベルサイユ宮殿の庭とどっちが広いんだろう。あっちは水が印象的だったけど、シェーンブルンは花と森、という印象だった。真ん中の大通りの先に一つ噴水があって、そのさきには丘が続いている。この中央通りの他に、城のセンターから斜め方向にも道が両側に延びていてその先には教会と正体の分からない建物が見えた。噴水のところまでしか歩いていないけれど、よく設計され、丁寧に管理されている庭であることはよく分かった。

昼食のためにウィーン中心部のレストランへ。この地下鉄でもマブでありケルンICE逃し男が魅せてくれた。今度は降り逃しである。ノイキャンイヤホン+スマホで降りるみんなのこと見てなかったっぽい。そもそも目的地も知らないのにどうやって降りるつもりだったのか。事情を察し彼の隣に座ってニヤニヤ笑っているおばあちゃんと窓際できょとんとしている居残り男を、8人がホームから見送った。当の彼は「じゃあ現地集合で~」とLINEしてくるくらいケロッとしている。なんてメンタル強いんだこの男は。寝坊ごときで大騒ぎした私は心底見習いたい思いである。

なんかいた

カフェセントラルには内装目当てで訪れた。なんでも宮殿だったところを改築しているとかいないとか。結構並んでいたけど回転も速い。あっという間に店内で待つことができた。ボーイに日本から来たと伝えると、日本語を少し話せるらしいもう一人のボーイに日本語の挨拶を尋ねていた。私たちが9人で食事もしたいと言うと、彼は店内を見に行ってから戻ってきて「サヨナラ」と言った。そんな雑な断り方ある!?と思ったらただ日本語が喋りたかっただけだったらしい。私を連れて大きめのテーブル席を見せ、ここに9人入ってもいいか確認してくれた。狭そうだが致し方ない、大人数で押しかける方も悪いので「大丈夫です」というとみんなが入ってきた。

やっぱりテーブルは狭い、L字ソファに女子6人が何とかおさまった。ショーケースのケーキに魅惑されてケーキを頼む人もいたし、私は空腹と、前日のザッハトルテを上書きしたくなくて食事を注文した。仔牛の煮込みだったんだけど、シチューがめちゃくちゃ牛肉の味がしておいしい!上にカラフルな人参らしきものが乗っていたのも栄養を感じられてよかった。ただ肉そのものは例えるなら大豆肉みたいな食感で、「なにこれ??」って感じ。味は全然美味しいんだけど噛み応えがなくてびっくりした。どこの部位だったらそうなるんだろう。

昼食後は色々見学してまわった。ロースハウス、シシーミュージアム(外観のみ)、脱走兵の記念碑、ホーフブルク王宮、お土産屋さん、王立図書館は休館日だった、モーツァルト記念像、シュテファン大聖堂、Manner(ウィーンのウエハースのお店)、聖ペーター教会、オープンサンド屋さん。そしていったん滞在先に戻り、身だしなみをしっかり整えていざ、劇場へ!

当時の葬儀形式のため、正式な墓はないらしい

国立歌劇場の真ん前に堂々と転売ヤーがいるのが驚きだったが、オンライン予約してあるので気にしない。玄関からもう格式高い雰囲気に飲まれる。しかし観光客の中には意外とジーパンを履いている人もいるので少し安心。服装はスーツやドレスから普段着まで、変な言い方かもしれないがピンキリという感じだ。私達もワンピースで丁度良かったんじゃないかな?
開演まで一時間弱あったので、そこからは記念撮影大会が始まった。特に、気合を入れていい席を予約した二人の興奮ぶりがすごくて、キャッキャしてて可愛かった。ワンピース姉さんズを見ていると、私もなんだかいい女になったような錯覚を起こした。知らないイケネキに声をかけられて、2人でノリノリで写真を撮り合ったりもした。楽しかった。

オペラ前半。【La Clemenza di Tito ネタバレ注意】
私の席は安い場所だった理由が分かった、舞台が半分くらいしか見えない!座高が高かったりあと一席中心寄りだったらかなり違ったのだが、ここからは席の陰になって本当に見えない。しかも見えない舞台下手側でけっこう重要な演出が行われていたみたいだ。もちろんイタリア語だから耳の情報は全く頼りにならず、字幕は英語ドイツ語のみ。といってもストーリーは複雑だし、ぱっと見で分かるほどのネイティブじゃない。舞台の役者さんの動きも見ないといけない。その上男役を女性が演じていたのもあり、ヒロインが歌ってるんだか誰がステージにいるんだか、全く把握できず混乱した。私の予習不足なんだけど、ストーリーを掴むことすらできなくて楽しさより眠さの方が勝ってきた。何より、場内が暑い。人が密集しているからいやな蒸し暑さもあって、オペラに集中することができなかった。前半の終わりには汗だくで喉がカラカラで熱中症になるかと思った。

休憩時間が30分ほどあったのでバーに水を求めて突撃してみたが、売っていなかった。仕方なく友達にペットボトルを借りて、トイレの水道水を汲んで飲んだ。冷たい水が身体に染みわたってすごくおいしく感じた。結局私たちはこの時間にトイレを3往復して水を飲み続けた。命の源を得た後、少し予習して後半の劇に備えた。席に戻ると知らないおじちゃんが私の椅子に座っていた。なんということだ、と思ったら多分立見席の人だった。立見席からは無料か格安でオペラを見ることができるんだけど、2時間以上立ちっぱなしになるのでやっぱり辛いのだろう。気持ちは分かるが、私がお金を払っているんだからよけなされ。

後半は飲んだ水のおかげと熱気に慣れてきたのと、ストーリーのスピードと内容に追いついたこともあり、非常に楽しむことができた。動きながらあの声量で歌い続けられるのがすごいし、バックコーラスの演出も面白い。いつの間にかオペラの魅力に吸い込まれてしまった。フィナーレも見えない場所があったが、なんかもうどうでもいいくらい楽しかった。モーツァルトすごい。今まで舞台には全然興味がなかったのがもったいないと思うくらい。まだそれぞれの役者さんの良さを具体的に言語化できるほどではないけど、これからも触れたいなあ。帰りながら良さをマブと話し合えてたのしかった。

余韻を語りにカフェモーツァルトへ直行!ここも何人かの憧れのカフェだったらしく、これは計画のうちだ。私はあの有名なモーツァルトチョコとセットになっているホットチョコレートにした。もう夜10時くらいだったからそうしたんだけど、コーヒーや紅茶にしてる人もいた。まあ美味しいからね。バースデーガールはまたスイーツ食べてた。お城行ってケーキ食べてオペラ見て、本当に贅沢な誕生日だ…。紅茶にはセットで砂糖がくっついたスティックが付いてきて、はちみつみたいでおいしそうだった。なので余ったやつをもらって、はしたないので店員さんにバレないようにこっそりカリカリ齧った。甘かった。

メインはもちろんチョコの方


ここの店員さんは言葉遣いが丁寧なジェントルマンで、とてもいい気持になった。

帰りのトラムでは、「ぶっちゃけ、オペラ、寝た?」という話題を友達がしていて愛せた。私も前半の最後だけはうとうとしてたし、本当にホールが暑かったのでちょっと仕方ないかも。(笑)

9月5日

プラハへの移動日だったので、朝のうちに荷物をまとめてHbfのロッカーに預けておく。その後パンを買って、ベルヴェデーレ宮殿へと歩く。あまりお腹が空いていなかったので、プレッツェル生地の小さくてまっすぐなパンにひまわりの種がまぶったやつを買った。種だけをつまんで食べながら、りんのことを思い出した。

ベルヴェデーレは美術館になっていて、クリムトの「接吻」ほか何点かの作品がここにある。他のクリムトの絵を見たのは初めてだったのだが、花の描き方がかわいらしくて好きだと思った。ここでのハイライトは、女性の絵を見て右下部分がマグロの寿司にしか見えなくなってしまったこと。でも絶対みんな納得してくれると思う。

ツボに入ったのでラブのロック画面にした


モネの絵も一点あった。タイトルは知らないけど有名な絵で、小学生の時この絵を模写しようという愚かな試みをしていたことを思い出した。色とりどりの花が両脇にわんさか咲いている小路の絵画だ。他にもナポレオンの肖像や現代画家の絵画があって充実していた。

なんとショップでりんがいつも使っていたオレンジのバッグを見つけた!りんに会えたような気持ちでとても嬉しかった。私もトートバッグが欲しかったから、同じ絵画が使われているトートを買った(ストーカー)。三種類あってひまわりが描かれているものも可愛かったけれど、りんとおそろいなら即決だ。ずっと欲しかったので嬉しい!早速愛用している。

これは、りん

次にアパートメント近くに戻って美術史美術館へ。ここの目玉はバベルの塔だろう。ウィーンはどこでもそうなんだが、入場料が高くてたまげる。学割があるからまだいいものの、それでも痛い出費…。ただ期待を裏切るような展示には出会っていないから、すごい。

ここには様々なジャンルの美術品がある。彫刻、ミイラ、宝石、ガラス、絵画、陶器、コイン、アクセサリー…時代も場所も、古代エジプトから近代(現代もある?)まで多種多様だ。持ち時間が2時間しかなかったのでせかせか見ないといけなかった。ここは最低でも2時間必要だ。ミイラやツタンカーメンの実物は初めて見たし、オーストリアにこれだけ集積していることも驚きだ。紀元前のものを見て、習っただけの歴史が真実であることや本当に昔の人がレベルの高い技術を持っていたことを確認できただけでも面白かった。

バベルの塔やブリューゲルのいくつかの作品を目の当たりにできたことも良かったが、最後に出会った絵が衝撃的すぎた。
だってまるちゃんの絵が展示されていたんだから!髪の毛とか髭とか、鼻の高さとか全部そっくりだった。見た瞬間に「似てる!!!」と言ってしまったし、写真を見たことがあるだけのラブも私の衝撃を理解してしまうくらい似ていた。急いでカメラロールを探して比較写真を撮った。同じ表情の丸ちゃんはアルバムになかったが、たぶん真似したら本当に同じになる。肖像画って本当に実在の人物そっくりなんだろうなあ、というのが今わかった。

本人やん!

正直丸ちゃんの絵画の衝撃が強すぎてバベルの塔の記憶が飛んだくらい。あの絵のポストカードを探したけど、どうしても見つけられなかった。どうやら有名な絵ではないらしかった。

駅に戻ると、ロッカーが開かない!というか、原因も分からず追加で18€も請求される。このロッカーは24時間料金だしさすがにおかしいので、近くのカウンターに訪ねに行くことに。すると、今朝発行されたカードに2006年と記載されていて、なんじゃそりゃ!?になる。中央駅のロッカーでそんなことある!?17年の間に誰か気付けや。
スタッフさんには「これが初めてのケースじゃない」と宥められ(そりゃそうだ)、セキュリティを呼んでくれた。彼女も訳が分からないようでScheisseとか言ってた。無事にセキュリティが来て開けてもらうことができたが、この騒動に30分くらいかかった。ケルンの反省を活かして早めにロッカーに来ておいてよかった。

プラハ行きの電車には難なく乗ることができた。チェコ国境くらいまでは起きていたけれど、田舎の景色に4時間揺られるのはさすがに飽きるもので、また眠りについた。
さようなら、ドイツ語圏!ちゃんと使えると楽しかったよ!


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