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圧巻の139分。KAFA(韓国国立映画アカデミー)の卒業制作が世界を席巻。/『同じ下着を着るふたりの女』

(原題:The Apartment with Two Women)
2023年5月13日(土)シアター・イメージフォーラムほか公開 / 上映時間:139分 / 製作:2021年(韓国) / 配給:Foggy

あらすじ・ストーリー 30歳目前のイジョンは、母のスギョンと団地でふたりで暮らしている。イジョンは幼い頃からシングルマザーのスギョンに辛く当たられ、母への憎しみを隠せずにいた。ある日、スーパーの駐車場で喧嘩になり、車から飛び出したイジョンは母の乗る車にはねられ……

解説 第26回釜山国際映画祭で5冠に輝く他、第72回ベルリン映画祭のパノラマ部門に選出された社会派家族ドラマ。若くしてシングルマザーになった母親と、成長した娘との複雑な親子関係を描きだす。キム・セイン監督は本作を韓国映画アカデミーの卒業制作として完成させた。出演はイム・ジホ、ヤン・マルボク、チョン・ボラム、ヤン・フンジュら。

スタッフ監督:キム・セイン

キャスト
イム・ジホ
ヤン・マルボク
チョン・ボラム
ヤン・フンジュ

ぴあ

昨年の東京フィルメックスで見て、衝撃を受けた。まず、なんというインパクトのあるタイトル!内容は、母と娘の物語である。昨年のキム・セイン監督のコメントでは「短編作品を作っていて、相手を完全に憎むことも愛することもできないという関係を探求してみたくなった。そういうアイロニカルな関係が韓国社会にあるとしたら何だろう? と考え、母と娘に思い至りました」と言っている。

https://filmex.jp/2022/news/broadcast/1103the_apartment_with_two_women_qa


見ていてかなり息苦しくなるがそれが映画館で映画を見る醍醐味でもある。
ぜひ、チャレンジしてもらいたい。


『同じ下着を着るふたりの女』場面写真
『同じ下着を着るふたりの女』場面写真



本作は、キム・セイン監督のKAFA(韓国国立映画アカデミー)の卒業制作作品。
その作品が第26回釜山国際映画祭で5冠に輝く他、第72回ベルリン映画祭のパノラマ部門に選出された。KAFAとは一体、どんな学校なのだろう?
下記の記事によると、

・映画監督やアニメーション監督、プロデューサー、カメラマンなどのコースに分かれ、50人あまりが映画作りを学んでいます。シナリオ制作や長編映画に特化した課程もあり、最大3年間在籍することができます。
・アカデミーが育ててきた映画人材は700名以上。
卒業作品を収めたライブラリーには、あの人の名前も。
『パラサイト 半地下の家族』で、外国語の映画として初めてアカデミー作品賞を受賞したポン・ジュノ(奉俊昊)監督です。1994年に在籍し、ここで映画の基礎を学んだ一人です。
・才能が認められれば、最大で1本4億ウォン(約4000万円)もの予算で、国際映画祭に出品するような長編映画を製作する学生も数多くいます。

・学校の今年の予算は85億ウォン(約8億5000万円)。運営費用は日本にはない独特の方法でまかなわれています。
韓国では、シネマコンプレックスなどで映画を鑑賞する際の料金が1万4000ウォン(約1400円)ほど。
実はその料金の3%が、法律に基づき「映画発展基金」として徴収される仕組みになっています。
映画発展基金はコロナ前の2019年で545億ウォン(約54億円)ほど。
その資金を映画の製作費の助成や映画の海外展開の支援、「韓国映画アカデミー」の運営など人材育成に充てています。つまり、観客は映画を見ることで韓国映画の振興や人材育成を支える仕組みとなっているのです。

NHK 国際ニュースナビ

途中から、韓国のKAFA、KOFICの話になってしまいましたが、今後必ずまた国際的な舞台に登場し新たな作品を見るためにも、『同じ下着を着るふたりの女』は見ていて損はない作品です。

<初日イベント情報>
東京都 シアター・イメージフォーラム

2023年5月13日(土)監督Q&A

13:30上映後(イベント 15:50~16:05)
16:15上映後(イベント 18:35~18:50)
<登壇者>
キム・セイン

2023年5月14日(日)トークイベント

13:00上映後(イベント 15:20~15:50)
<登壇者>
キム・セイン、田房永子

16:00上映後(イベント 18:20~18:50)
<登壇者>
キム・セイン、西川美和

<コメント>
西川美和(映画監督)コメント

人間は、絶望的に変わらない。しかし、その絶望を引き受けながら、懸命に出口を探した作家としての姿勢に感動する

田房永子(マンガ家)コメント

この手のお母さんから「愛」を受け取るのは、暗闇のなかで目を凝らし、
何が起きているかを理解しようとするのと同じ。
だけど、彼女は自分の幸せを追える人だから、大丈夫。 

斎藤環(精神科医)コメント

本作のタイトルは象徴的だ。「同じ下着を着る」という関係は、母と娘の間にしか成立しないからだ。
異性間の親子ではもちろん、父と息子でもあり得ない。
このタイトルに、母と娘の両義的関係のすべてがこめられている。

宇垣美里(フリーアナウンサー・女優)コメント

離れるには近すぎて愛するには遠すぎる母娘関係。
憎らしいのに愛されたくて、孤独だけど歩み寄れるわけもなく。
酸欠寸前の閉塞感や母娘の間の張り詰める緊張感たるや胃が捩れそうなほど。
家族なら愛し合える、だなんて所詮幻想。ああなんて残酷なんだろう。



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