マガジンのカバー画像

エッセイ

134
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

【エッセイ】新米母さんだった、昔の私へ

【エッセイ】新米母さんだった、昔の私へ

「子どもには、自身で育つ力がある」とは言うけれど。

知覚過敏で、とにかく偏食、
野菜をほとんど食べないわが子のことが、心配だったし。

学校に行きづらくなってから数年、まずは安心する環境作りが最優先で、
まったく勉強していないわが子のことも、心配だった。

「本人のペースを尊重する」
「必要だと感じたら、自発的にするようになる」

私は、口ではそのように言っていたし、実際にそう思ってもいたけれど

もっとみる
【エッセイ】いたいのいたいの、とんでけ

【エッセイ】いたいのいたいの、とんでけ

急いでいて、ドアに頭をぶつけた。

時間がないときに限って、そういうことがよくあるので、
「痛っ! もう!」と、イライラしがちなのだけれど。
そうっと、やさしく、なでてみた。

昔、子どもに「いたいのいたいの、とんでけー」をしたように、
自分にもしてあげたら、ほんのちょっぴり、やわらいだ気がした。
自分であれ他人であれ、やさしく労ってあげるのは、確かに大事なことなのだ。

昔、息子が転んで泣いたと

もっとみる
【エッセイ】勇気よ、どうか我が胸に

【エッセイ】勇気よ、どうか我が胸に

朝起きて、窓を開けるとき、勇気がいる。

私は、田舎住まいでありながら、極度の虫嫌いのため、
できる限り、彼らとは顔を合わせたくないのである。

カーテンを開けて、窓の外に、その姿が「こんにちは」と現れると、再びカーテンを閉めたくなる。
窓ガラスに張りついて、腹部を見せつけられた日には、
そのまま回れ右で、なかったことにしたい。
今の季節、網戸の内側にまで入り込んでくる種族にいたっては、もはや憎悪

もっとみる
【エッセイ】共有

【エッセイ】共有

今さらではあるけれど、SNSはシェアリングの世界なのだな、と実感している。

私がSNSを開くと、
「虹が出ていたよ!」
「このスイーツ、おいしい!」
「誰々さんと会えたよ!」
と、その人の“好き”や“楽しい”が伝わるものが、たくさん上がってくる。

noteのように、言葉や写真といった作品で感性に触れたり、
より学びが深まるような情報があったりもする。

もちろん、耳触りのいいことばかりではない

もっとみる
【エッセイ】息子的配慮

【エッセイ】息子的配慮

小学6年生の息子が、私にハンデをくれるようになった。

Nintendo Switchのゲームで遊ぶとき、一緒に走るとき、腕相撲するとき。
私のほうができないものは、そこそこ対等な勝負になるように、調整してくれている。

幼いころは、負けると盛大に泣き、怒り、拗ね…のフルコースで、
“ひとつひとつの気持ちを受け止め、子どもが現実を受け入れられる土台を作る”
余裕など、正直なところ、私にはなかった。

もっとみる
【エッセイ】そのように生きる

【エッセイ】そのように生きる

私の車の前を、タンクローリーが走っていた。
ぴかぴかに磨き上げられた、銀色のタンクに、周りの風景が映り込んでいる。

流れるように、飛ぶように過ぎてゆく景色は、映画に似ている。

移り変わる世界の中で、私の車だけは、真ん中にあり続ける。
ひととき、世界の主人公になった気分を味わえる。

電車の窓から眺める世界に、ガラスに映った自分の顔が重なるのと、同じ感覚だ。

私は世界の片隅に生きていて、淡々と

もっとみる
【エッセイ】似合う

【エッセイ】似合う

「似合う」って、なんだろう。

その人以外のものになろうとしているときの、しぐさや言葉、ファッションやメイクは、
傍から見ていて、なんだか似合わないような気がしてしまう。
だけど、その人自身は、なりたい自分になろうとしているのかもしれない。

このあたりに、自分は似合うと思っても、相手はそう感じなかったり、
相手が似合うと言ってくれても、自分ではそうは思えなかったりの、
認識のズレが生まれるのだろ

もっとみる
【エッセイ】心が動くもの

【エッセイ】心が動くもの

noteで書いている詩とエッセイが増えてきたので、それぞれマガジンに振りわけてみた。

ふっと心が動いた瞬間、素敵な写真を見つけた瞬間、
「これ、前にも書いた気がするな」
と、自分で見返すのに不便だったからだ。

同じ作品を、漫然といくつも生むのは、好きじゃない。
けれど、過去作をふり返ってみて、少し考えが変わった。

私は、私の心が動いたものしか、描けない。そして、何に心が動くかの感性は、すでに

もっとみる