タルシル中庸∞影と光(6話)

西崎「たぁぁだぁぁいぃまぁぁ」

真壁「お!どうだった?楽しめた?」

西崎「悪ぃ、起こしちゃった?」

真壁「気になって寝れてねーよ」

西崎「ありがとね、はい、お土産の北京ダック(残り物だけど…)」

真壁「おぅ!でも今からじゃもう食えねーよ。明日頂くよ。飲みながら。一日休みだしな。昼間っから一緒に飲もうぜ」

西崎「悪ぃ、明日もさぁ、クミちゃんと出掛けてくる…万里の長城の日帰りツアー」

真壁「マジかぁ?!まぁ、いいけど」

西崎「あ!そうだ!今日京劇の劇場で珍しい人に会ったよ、偶然過ぎてビックリ!」

真壁「誰よ?」

西崎「誰よって知らないの?真壁兄だよ。ま、知らないか。真壁兄も俺達が今中国来てるの聞いて驚いてたから」

真壁「何しに来てるんだろ?全然聞いてなかっあなぁ」

西崎「何かさぁ、京劇見に来てるって感じじゃなかったんだけどあまり詳しく聞ける空気じゃなかったし、俺もデート中だし、、、でも真壁に会いたいって言うからホテルと部屋番号教えておいたよ。明日研修休みだって言ったら昼前くらいにホテルに来るって」

真壁「マジかぁ、何なんだろーなぁ、折角の休みなのに」

西崎「何も予定無いんだろ?」

真壁「お前達と一緒に万里の長城行こうかなぁ?」

西崎「お邪魔虫だからやめて!」


翌、早朝、西崎は朝食も食べずにホテルロビーに真壁を起こさないように、そっと向かった。日帰りツアーのピックアップが主要なホテルを回ってきてくれる。

北京の中心部は朝とはいえかなりの渋滞であったが郊外に出ると嘘のようにスムーズに流れた。

本当に研修に来てるのかデート旅行なのか分からなくなってきていたが、とりあえずバス車中には同じ中国研修参加者の学生達など知った顔が見えなかったので今日は昨夜以上にイチャイチャデートを満喫することを決めた。

北京から約一時間、車内でイチャイチャしていたらあっという間に到着。
万里の長城の観光スポットの中で最もポピュラーな八達嶺長城。
もう既にかなりの台数の観光バスがズラリと並んでいた。観光客もかなりの数で長蛇の列となっている。

万里の長城はテレビのドラマやドキュメンタリー番組で見ていたが近くまで来てみると意外と傾斜がキツいことに驚く。
有難いことにかなりの部分はロープウェイで行けるようなので利用しない手はない。

ロープウェイ終点から更に上まで徒歩のコースが設定されていたので西崎もクミの手を取って張り切って登り始めたが、想像以上に傾斜がキツい上、レンガで組まれたその道は雨天時などはスリップして転びそうな位であった。この日は幸いにもドライ路面でスリップすることはなかったがほぼほぼ登山の様相であった。

途中、見張り台なのか東屋のようなポイントが点在していて休憩できるのは有難い。高所からの眺めも最高だったがどこまでも続く長城の景色は何だか少し怖くも思えた。

西崎がデートを満喫していた頃、一方、真壁はホテル近くの既に常連となりつつある定食屋で独り寂しく遅めの朝食を取り終え、もう一寝しようと部屋に戻っていた。

お腹がいっぱいですぐにウトウトし始めたが日本では聞き慣れない内線電話の呼び鈴で飛び起きた。真壁兄がホテルに着いたようだ。


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