タルシル中庸∞影と光(14話)

西崎「腹キチー」

真壁「朝にから食い過ぎなんだって!」

西崎「いやー、ホッとしたら急にさ、腹激減りさぁ。それにあの小汚ない定食屋毎日食ってたらなんか癖になっちゃったってあうか、やっぱ旨いんだよなぁ。もう食えなくなると思ったら全メニュー制覇したくなってさ」

真壁「確かにな。あそこの春巻最高!デケェし。っつーか、まだ暫く食えるさ。帰国延期したんだから」

西崎「あ!そっか。まだ暫くは毎日通えるか。まぁ、いいさ。食えたんだから。それよりまだ時間大丈夫っしょ?二度寝しよーぜ。この腹じゃ動けねーし」

真壁「そーだな、少し休もうぜ」

《ビービービー!ビービービー!ビービービー!ビービービー!》

西崎「ウオッ!何だよ!びっくりするぅ、吐きそうっ、、」

真壁「チッ、電話!」

《カチャ》

真壁「イェス、アー、あ?何だ、アニキか。あれ?内線?もう着たの?約束の時間まだでしょ?うん、うん、じゃぁ部屋来なよ。前の部屋と違って凄いよ。うん、うん、う、え?もう?ちょっと眠いんだけど。え?え?ん~、、、分かった分かった、じゃぁ少し待ってて」

《ガチャ》

西崎「何だって?兄もう来たの?」

真壁「あん。予定早まったんだって。もう来いって。急いでるって」

西崎「じゃ仕方ないね。しゃーない、支度するか。その前にトイレ!」

真壁「あー!俺も!」

西崎「俺先っ!おまえ先に行って一階のトイレ使えよ!」

真壁「がー!じゃぁ先行ってんぞ!鍵掛けて来いよ!」

西崎「オートロックですぅ!」

《チーーーン》

真壁「アニキ、悪ぃ、ちょっとトイレ!」

《チーーーン》

西崎「おはようございまぁす。早かったですね」

真壁兄「ごめんね。ちょっと状況変わってさ。嘉章何やってんだよ?」

西崎「朝から食い過ぎたみたいですぅ」

真壁「ごめん、ごめん、お待たせぇ」

真壁兄「ニィ、食い過ぎたんだって?」

真壁「は?俺じゃねーよ!朝から食い過ぎは西崎だっつーの!」

西崎「へっ!」

真壁兄「まぁ、どっちでも、、んで、ごめん。ちょっと予定変更!急ぎ!早速お願いしたいことあり!」

真壁「なんざんしょ?」

真壁兄「こっちのエージェントの情報によると動きがあったみたいでさ。二手に分かれて調査に出ないといけない。伊藤先生はもういないだろ?」

西崎「はい。朝早くにチェックアウトしました。ここで会いました」

真壁兄「ほ!やっぱり今日帰国してないんだね?どこ行くって言ってた?」

西崎「いやぁー、それはぁ、そこまで話出来ませんでした。ご挨拶程度で、、勝手なことしちゃいけないような気もしたし」

真壁兄「ま、仕方ないか。尾行してるハズだしな。君達は伊藤先生に面識あるからそっちは俺がやるから君達には少し遠いけど調べに行って来て欲しいところがあるんだ」

真壁「どこ?」

真壁兄「ミャオティン」

西崎「ニャオちん?」

真壁兄「みゃーお、てぃーん」

真壁「初耳、中国なの?ミャンマーとか?」

真壁兄「何でよ?」

真壁「ミャ繋がり、、」

真壁兄「ミャオ!」

真壁「知らねーなぁ」

西崎「はぃぃぃ、、」

真壁兄「だろーな、最近、ドキュメンタリー番組とかでも取り上げられてるようだけど詳細は謎や秘密が多いとこなんだわ。詳しい場所も明かされてないし、、」

真壁「アホか!俺達二人だけでそんなとこ行けねーべ。研修中も缶詰状態で外出出来なかったし」

西崎「俺は少し、、、」

真壁兄「ちと遠いから国内線で、飛行機で、、昼前のフライトだから急いでたの」

真壁「マジか?!俺達だけで?無理だって!」

真壁兄「だよな!だから、色々手配済み!こっちのエージェントが空港で待ってるから急いで向かって。空港まではタクシー使っていいから。あ、そのエージェントも現地まで同行するけど、表立って動けないからあくまでも西崎君と二人だけで観光客装って」

真壁「無理くりだな!」

西崎「観光出来るんっすか!」

真壁兄「観光、、装ってね。とりあえず時間無いから急ごう」

真壁「ちょ!待てよ!部屋戻って財布取って来なきゃ」

西崎「俺大丈夫っす、貴重品はいつも持ち歩いてるんで、これ!」

真壁兄「時間無いって!携帯は今持ってるでしょ?これ!当座の現金と自由に使っていいクレジットカード渡しておくから。飛行機のチケットは空港で受け取って。空港着いたら国内線の近くにある書店で待ってる、はず。あ、こっちで暮らしてる日本人だから。黒いパーカー着てこのキーホルダーどっかに持ってるから探して!」

真壁・西崎「ガンダム!!」


毎日缶詰めで朝から研修をしていた西崎達には朝食後にダラダラ二度寝出来ることが至福で少し旅行気分に浸っていた。
が、真壁の兄が約束の時間よりも早く来たもんだからすぐに現実に引き戻された。

真壁兄達がマークしている組織の動きが急に多方面で慌ただしくなり、手数が足りないので西崎達の手を借りるべく、そして飛行機のフライト時間に間に合わせるために早くホテルに来たのだった。

ただ、その行き先が西崎達にはちょっとハードルが高い。

ミャオティン。

日本でも最近少し有名になった中国の秘境で世界最大の地下空間が広がる巨大洞窟。
各国の大学や研究機関、探検家などが調査に入っているが全容はまだまだ不明のまま。
詳しい住所や行き方など地図も一般には明かされていない謎多き場所である。
周囲に暮らしている昔ながらの固有の文化を持つミャオ族からは「龍の巣」と呼ばれている。龍が住むと言われる神聖な場所である。

それは中国の貴州省にあって北京からは約2,000kmのところで、龍の巣については伏せられているが、貴州省自体は少数民族の文化や暮らしぶり、アジア最大の滝である「黄果樹瀑布」など観光地化も進んでいる。

そんなところに西崎達は二人だけで行かなければならない。
取るものも取り敢えず、蹴飛ばされるようにタクシーに乗り込んだ。


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