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ジャージバー探偵事務所は今日も平和でなによりです*虫が苦手な方はご遠慮ください*(創作話)①


ジャージバー探偵事務所は、今日も柿ピーの匂いでいっぱいです。
「柿ピー、くさっ」
事務所に入ってきたのはジャージをはいた、自バッタさんです。(ジバッタさんの本名はよくわかりません)

「お前はさぁ、イソップの『アリとセミ』の話を知らんのかよ。もう秋なんだよ?」
「アリとセミですか~?んーーーー、知りませんねぇ」
柿ピーを口の中でムシャムシャぽりぽり食しているのは、他イクツさんです。(タイクツさんの本名もわかりません)

「お前、ほんとに知らんのかよ。アリがせっせと働いて冬にそなえているってのによー、セミってやつは呑気にジージー鳴いているだけで、冬支度もしないって話だよ。へぇ~知らんのか」

他イクツさんは、お茶で柿ピーを流し込み、自バッタさんをじーっと見て、感動を露わにしています。

「あのセミって、そんな長生きするんですね~!それは知りませんでした!わたしの知っているイソップ話はセミじゃなくって、キリギリスだったもんで……。いや~イマドキのセミは、そんなに進化を遂げたんですか。いやぁ~素晴らしいのひと言に尽きますね。私も見習わないと~!」

ジャージバー探偵事務所は、今日もこんな会話をしているので、依頼をするお客さんはいません。もう秋なのに…困ったものです。

そんなところへ飛び込んできたのは、カメバ―さんです。「ねぇ~ウチにどろぼうが入ったの。助けて!」
「ええっーーー、どろぼう???」
「そうなのよ!!!」
「で、何を盗まれたんだい?」
「家に行ってから説明するから、とにかく一緒に来てよったら来てよ~はやぐ~~ん」

カメバーさんは、自バッタさんと他イクツさんをむりやり引っ張り、自分の家に連れて行きました。「ほら、ここなの。ここにね、いたのは間違いないの。もう、どこに行ったんだろう。はやくつかまえなくっちゃ、どっかに行っちゃうわ!」
カメバーさんの興奮はおさまりません。とりあえず、何がなくなったのか、聞いてみないことには、犯人を捜すこともできません。

他イクツさんは、カメバーさんに聞きました。
「何がないんだって?まずは、きちんと話を聞かせてくれよ」
「名前はね…リューっていうの」
「…リュー???なんだって?」
自バッタさんと他イクツさんは顔を見合わせています。

「リューがいなくなったのよ!」
「…?…それって生きものなんじゃねぇのかい?」
「そーーなのよ、いないのよ~盗まれたにちがいないわ~」
とにかく探さないことには、カメバ―さんから解放されることはないでしょう。いったい犯人を捜せというのか、いなくなったリューを探せといっているのか、カメバ―さんの依頼はさっぱりわかりません。

他イクツさんは、首をふりふり。
自バッタさんは、お尻をふりふり。
カメバ―さんの後からついて探しているふりふり。

自バッタさんも、他イクツさんも、とりあえず、カメバ―の後ろにいれば、カッコウだけは探しているようにみえますからね。

カメバ―さんが、いきなり止まって叫びました。
「あーーーーーー、こんなところに。リューちゃんたら、もう本当に心配したのよーーよかったわ~」

カメバ―さんは窓ごしからリューを見て、大喜びです。
自バッタさんも、他イクツさんも、ホッとひと安心です。


今日もジャージバー探偵事務所は平和でなによりです。(終わり)