マガジンのカバー画像

「人間の生き方」を学んだ資料とその記録

10
改めて読み直して気づいたこと、若い時には気づくことができなかったこと、年を重ねて経験してきたからこそ気づけたことを書いたもの
運営しているクリエイター

2023年5月の記事一覧

『若きウェルテルの悩み』に書いたゲーテの、子どもとくるみの木への眼差し

ゲーテはロッテのピアノの調律に出かけたけれども、子供たちにおとぎ話をせがまれて、調律ができなかったことを書いている。 ゲーテがつなぎの話を出まかせでしゃべると、それが前にも話したのと違ったりすると、子供たちから抗議が出る。 ロッテと一緒にたずねたことがある牧師さんのところのくるみの木が、切り倒されてしまったことに、ゲーテは激怒した。 木を切り倒されたことを傍観してしなくてはならなかったのに…村中がおこりだした。切り倒したのは、新しい牧師夫人だった。 落ち葉で庭がよごれ

トルストイからの呼びかけ『復活』

トルストイの著書『復活』が書かれた経緯 1887年6月 トルストイの友人の裁判官のA・F・コーニがトルストイの元を訪れた。 そして、ペテンブルク管区裁判所の検事をしていた時に見聞きした興味深いエピソードを話して聞かせた。 そのエピソードとは… 解説には、また、このような内容のことが書かれている。 明治以来、ロシア文学が「日本でこれほど読まれてきた」だけでなく、『復活』ほど一般大衆に広く親しまれてきた作品も少ないだろう、と。 この作品は恋物語を取り巻く世俗的な権威(裁

「他の生を自己の中に体験する」 アルベルト・シュバイツァー (Albert Schweitzer )

フランスの神学者、哲学者、医師アルベルト・シュバイツァー(Albert Schweitzer )について調べてみました。 シュバイツァーは1913年、アフリカのガボンにあるランバレネで、自らの資金で病院を建設し、地元の人々に無料で診療を提供。予防医学や衛生教育にも力を入れ、地域の医療水準の向上に貢献。ノーベル平和賞を受賞している。 生命への畏怖 シュバイツァーが晩年、強調した思想「生命への畏怖」 人間をはじめをして生命のもつあらゆる存在を敬い、大切にすることを意味する。

山本周五郎が著著『おごそかな渇き』に描いた「宗教観」と「ブラウン運動」と「人間への問い」

山本周五郎さんの『おごそかな渇き』は、昭和42年1月から2月の8週、朝日新聞日曜版にて掲載された。 「半途にしてたおれることが多年の念願でもあったらしい」と、解説には書かれている。 『おごそかな渇き』に描かれているのは、人間と宗教。 これを、植物学者ブラウンが発見した「ブラウン運動」として捉えているところが興味深い。 この小説に登場するのは、福井県のある村で、宗教の盛んな土地。 この村に住む人達には、歴史的に根深い反目と敵意が続いていた。特に冠婚葬祭に関しては、相互の往