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2021年度版「アナモフィックレンズで撮影したい。現実的な価格で」(高橋)

※表画像:スペクター(サム・メンデス監督、ホイテ・ヴァン・ホイテマ撮影監督)
参照「Samuel Alexander Mendes (Director) / John Logan (Screen play) (2015) : Spectre [Blu-ray]/ Based on: James Bond by Ian Lancaster Fleming (1953-)/ Sony Pictures Entertainment」

こんにちは、高橋です。

今回は、どうしても「現実的な価格で(これ大事)自主映画をアナモで撮りたい僕が、自分なりに集めた情報をまとめてみようと思います。

油彩の様な美しさを持つアナモフィックレンズ

突然ですが、僕はアナモの映像が大好きです。


アナモフィックレンズについての詳しい解説はWikiやネットの情報に任せるとして、映画を撮るうえでこんなレンズがあります。

アナモレンズは、独特なレンズフレアとボケを生み出します。特に僕はアナモ特有の楕円形ににじむボケが好きで好きでたまりません。まるで油絵のような美しさで、ただ綺麗に現実を映し出しただけの映像ではなく、ある種の非現実感と言いますか、アートっぽさを感じるのが良いんですよね。アナモで撮影した映像のボケは、このような感じで縦長ににじむことになります。

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これらの画像と、油絵を比較すると⋯⋯。

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どうでしょう(絵:ルノワール)。背景の木々が縦に流れてにじむような感じが、まさにアナモフィックレンズと同じじゃないですか? 僕の祖父は油彩を描いていたので幼少期にそれを見た影響もあるのかもしれませんが、何故かこのボケ方にすごく惹かれるのです。

↓アナモと普通のレンズの違いを説明してくれてる素晴らしい動画

アナモレンズで撮影するためには

そんなこんなでアナモ大好きな僕は、何としてでも自分の作品をアナモで撮りたいと思っています。

「レンズ買ってそれで撮影すりゃいいじゃん!」

と思うかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。

まず、アナモフィックレンズはバカ高いです。内部にレンズがたくさん入っていて構造的に複雑なため(だから光が反射しまくってフレアが出来上がる)、その分高価です。ウン百万というレベルでお金が掛かります。

また、綺麗な楕円ボケを出すには、圧縮率が2倍のアナモレンズで撮らなければなりません(現在市場には1.33倍、1.8倍などの圧縮率もあります)。圧縮率が高い分、より楕円に圧縮されるので、そこを通る光が縦ににじみやすくなる、ということです。
しかし、2倍圧縮できるアナモレンズを探すと安いものなどほぼ存在しません。それでも僕はどうしてもあのボケ味を出したいので、2倍圧縮にこだわっています。

次に、センサーの問題です。圧縮率2倍で撮影した映像のアスペクト比がシネマスコープになるには、4:3で動画を撮らなければなりません。今の世の中のスタンダードは16:9なので、4:3で動画を撮れるカメラを探す必要があります(ちなみに16:9に対しては1.33倍の圧縮で撮影するとシネスコになります。なので1.33倍のアナモが出回っているのです)。

ということで、2倍圧縮のアナモで撮影するにはどうすれば良いか、それぞれ「レンズ問題」と「カメラ問題」にフォーカスして話を進めます。

レンズ問題

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2倍圧縮のアナモが高価なことは分かりましたが、ではどのような選択肢があるのでしょうか。

1.  レンタル
機材のレンタル屋さんから借りれます。有名なところだとTOYOレンタルさんでしょう。2倍圧縮のレンズが1日15,000円程度で借りれます。レンタルには数に限りがあるので借りれるか確定じゃないのと、撮影日数がかさめばレンタル代も増すというデメリットはありますが、撮影が1-2日で終わるようなものであれば、これでも良さそうです。

2. 安価なレンズ
いつからかアナモ撮影が流行った流れで、ガチの映画用ではない安価なアナモレンズが出回るようになりました。

2倍圧縮で最も現実的なのはSLR Magic製のAnamorphot-CINE Lensシリーズでしょう。35mm T2.4がたったの2,099ドル(21万円くらい)で買えます。「高いだろふざけんな!」と思うかもしれませんが、これでも圧倒的格安。ちなみにT値はF値はほぼ同じようなものですが、T値はレンズの透過率を考慮した、より正確にレンズの明るさを示した値になっています。

他にも安価なものはありますが、それでも40-50万円くらいするものがほとんどなので、唯一現実的な2倍圧縮のレンズはSLR Magicだけでしょう。

3. オールドレンズ
オークションなどで昔のアナモレンズを買ってそれを取り付けるという方法。ヤフオク、ebay、リサイクルショップなど⋯⋯掘り出し物があるかもしれません。探せば5万以下で買えます。

しかし! 当然レンズマウントなど合うはずもありません。ではどうやって撮るのかというと「カメラ→レンズ→アナモレンズ」というレンズ2段構えの術を使います。

その術で撮影された色んな動画を見る限り、画質が超劣化したりといった事は無さそうなのですが、一番の問題は「フォーカス」。レンズとアナモレンズの両方のフォーカスを合わせないといけないので、ピント合わせが相当シビアであるうえに、フォーカスを移すような撮影はまず無理です。

とはいえ! そんなフォーカス問題を解決してくれる魔法のアイテムがあります。その名も「SLR Magic Rangefinder Cine Adapter」。通常版と廉価版があって、廉価版なら279ドル(28,000円くらい)という安さ。
これなら、オールドレンズと合わせても10万円に収まります。

やったぜ解決! となれば話は早いのですが、やはりレンズ2段構えの術は色々と困りもの。フォーカス問題が解決しても、最短撮影距離とか、やっぱり光学的に気になったりとか、そもそもオールドレンズがどのような映りなのか、レンズとアナモレンズの相性はいいのか、ケラれないのか、ケラれないようにするには何mmで撮れるのか(大抵望遠になります)など、不安は尽きません。

ただ、そういった諸問題を除けば最も安くアナモレンズを自分の物にできます。

4. フェイク
レンズフレアは釣り糸、楕円ボケは楕円型のフィルターを通すことで再現、編集段階で黒帯を追加するという方法で、疑似的にアナモ的映像を作り出すやり方があります。
こういったものが売っています。

実は僕は今これです。SIGMA 30mm F1.4にこれをぶち込んで撮影しています。嘘っぱちアナモで撮っていますが、ある程度のアナモ欲は満たしてくれます。1万円もあれば揃うので、方法は問わないからアナモ的な映像を撮りたいぜ! っていうわがままな方や、お金のない学生さんには超おススメ。ただ、フィルターを入れている分、F値に対して実際の明るさが若干落ちている気がするのと、周辺減光がヒドいです。

5. Anamorphot
SLR Magicが発売しているAnamorphotも選択肢の一つ。通常のレンズの前に取り付けてアナモ撮影が出来るアダプターです。ただ、お値段が18万円くらいなので、それなら2番で紹介したガチアナモで良いでしょう。

結論:
好みと予算で選びましょう。ただ、SLR Magicの2倍圧縮アナモレンズはモノホンのアナモであり、最も要求を満たしていると思います。
ちなみに、1.33倍圧縮で良ければSIRUIのアナモレンズシリーズが10万円以下で買えるので、それがおススメです。

カメラ問題

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次にカメラ問題です。2倍のアナモでシネスコを撮るには、4:3のカメラが必要だというのは前述のとおり。

結論から言うと「GH5」か「BMPCC 4K」が現実的な選択肢でしょう。

どちらもアナモ撮影用の4:3モードがあります。
価格もGH5なら20万円程度、BMPCC 4Kなら15万円程度と、バカみたいに高い値段ではありません。そして、どちらもM43マウントなのでSLR Magic製のAnamorphot-CINE Lensシリーズ含め安価系アナモレンズが大抵使えます。

ここではカメラ性能などは紹介しませんが、どちらも良いカメラです。調べた上で好みで選べば良いでしょう。

結論:
カメラは「GH5」か「BMPCC 4K」。

まとめ

現段階で「現実的な価格」で選ぶとこういった感じでしょう。
もちろん、予算潤沢であれば何にも困らないのですが、自主映画レベルの話であれば、この記事に書いてあることのどこかが着地点ではないでしょうか。
僕のようにガチなアナモ撮影がしたくてたまらない皆さん⋯⋯お互い苦労が絶えないと思いますが、頑張ってアナモ撮影一緒に目指しましょう。

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