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高機能なカメラはつまらない。

初めて一眼レフを買ったのは、Canonのフィルム機だった。20年以上前、絞りやISOなどの意味も知らない初心者だったが、もしかしたらいい写真が撮れたかも、と思いながらシャッターを切り、写真屋さんにフィルムを持ち込んだ。どんな写真に出来上がるのかを想像しながら現像を待つのが楽しみで仕方なかった。もちろん、駄作も量産したが、たまに良い写真が撮れた時はお宝を発見したような感覚だった。

その後、デジタルカメラに買い替えた後も写真が趣味と言えるくらいはハマったのだが、昨年、ミラーレス一眼レフのEOS R6 Mark2を購入した時に、急激に撮影へのモチベーションが下がったのを感じた。オートフォーカスは優秀で、全ての写真はピントがバッチリ。evfで確認した通りの写真が出来上がるので失敗もないのだが、全てがお膳立てされた撮影は面白くないのだ。最新のカメラが提供する機能は、例えるなら、釣りにいったときに釣り針に魚をつけてもらっているように感じる。釣れるかどうかわからない中、試行錯誤するのが楽しいのに、「魚をつけておきました、どうぞ竿をあげてください」というサービスで釣ることの何が楽しいのか。R6 Mark2は撮影を仕事にするのであれば非常に優秀なカメラなのだが、趣味として使うカメラとしては私にとって価値が低かった。

写真を撮るという趣味を突き詰めて考えると、私にとっては単にきれいな写真を撮ることが目的ではないということに気づいた。釣りと同様、プロセスが伴っていないと楽しめないのだ。そこで、プロセスを楽しむために買ったカメラがLeica M11 Monochromeだ。マニュアルフォーカス、レンジファインダー、そしてモノクロしか撮れない、だけどありえないくらい高価という、一般的なニーズの真逆をいっているカメラである。これに、オールドレンズの復刻版であるSummilux f1.4/35mmをつけて撮影している。ピントを合わせるのも一苦労で、昔のように駄作を量産する日々だが、たまにお宝を発見できる喜びは何よりも代え難い。

若いうちは苦労を買ってでもしろというが、歳をとったらむしろ喜んで苦労を買うのである。

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