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大人は、将来何になりたいの?
「先生は、将来何になりたいの?」
7年ほど前だっただろうか。小学校2年生の男の子から聞かれて、私は固まった。
予想外の質問で、答えに詰まる。
「え?先生をやってると思うよ。」
戸惑いながら答えたけれど、質問の意図も、答えがそれでよかったのかも、わからなかった。その後どんな会話を続けたのかは忘れてしまったけれど、私を見上げる目がまっすぐで、そらしてはいけない気がしたことは覚えている。あの子は今の私を見て、どう思うだろうか。
子供の言葉にハッとすることは、しょっちゅうある。
「なんでいつも僕ばかり注意するの。やだ。ちゃんとしてるじゃん!」
「私は将来ニートになりたい。ゴロゴロして、遊んで暮らすんだ。」
「先生は、泣いてる子にはどうして急に優しくなるの?」
何年も経っているのに、あの子たちの表情や声が、ふいに頭に浮かぶことがある。
1年生から6年生まで、500人の子供たちと過ごした5年間は、
笑ったり、泣いたり、怒ったり、落ち込んだり。
その度に、私は自分に問いかけた。
「豊かに生きるって、どういうことだろう。」
子供は大人の背中を見て育つ。
私自身、豊かに生きているんだろうかと。
「将来何になりたいの?」と聞いてきた、小さな男の子は今、高校1年生になっている。
会う機会があるのなら、今度はこう言いたい。
【いつも物事に夢中になってる人でありたいよ。「何になるか」より、「どうあるか」を、大事にしたいな。】
「いくつになっても新しいことをやってみたい。知らない世界を見てみたい。」
今は、そう思う自分を満たしてあげることが、私にとっての「豊かに生きる」ということだ。
もちろん、人それぞれに違う豊かさがあるはず。
個人の意思や個性が尊重されるようになってきたことで、かえって「自分が何をしたいか分からない」と悩む声をよく聞きます。誰もが自分の願いを知り、自分を満たすことができたなら、世の中はきっともっと明るく、やさしくなると感じています。
あの子は今、どんな将来像を描いているのだろうか。
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