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2019年に作った短歌たち


塔野陽太と言います。札幌に住んでいます。

普段はTwitter(@mingjiu1020)上に短歌をあげています。

2019年に作った短歌の中から僕が特に気に入っているもの、人に好きだと言ってもらえたものを集めてみました。全部で42首あります。



両の手をカモメみたいに広げれば三十七℃の海になる君

点滅を思わずダッシュで渡り切る僕には多分行く場所がある

不本意な今ではあるが不本意な今までだとは思えないのだ

三日間生きながらえる確信を持ってご飯をラップで包む

また爪が割れてマイケルジャクソンと違うところが増えてしまった

キャラメルポップコーンの底の方に弾けてない粒があります 僕です

「脳みその壊れてしまった三男」は今日も元気に生きてるよ パパ

この空のぽみゅって感じをあらわせる言語があるなら帰化してもいい

札幌の春は全てを引き受けて未練がましい地面が濡れる

渡せない土産が部屋を埋めていく私はどこにいるのでしょうか

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包丁で剥かれた桃とか泣いている背中に言った「好きだよ」だとか

悪いのは ぼくか それとも ぼくたちか それとも ぼくのたちが 悪いのか

君にしか出来ないことは何一つないけど今夜うちにおいでよ

僕にしか出来ないことは何一つないけど今夜うちにおいでよ

泣かぬなら泣きたくないなら泣けぬならせめて言葉にしてよ 待つから

あと少し恋人のままここにいようドリンクバーの元を取るまで

人生で君は七人目の君で僕は一人で僕をしている

命日を七十九回生き延びた祖父は一昨年初めて死んだ

向日葵が何百本も並び立ち私のいない方を見ている

はねのないてんしみたいだ みぐるみがすべてはがれたぼくのからだは

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さっきからこっちを見ているおじさんが2cmくらい動いた気がする

このドアを開けるギリギリまでネコがへんな顔でもいい いないのはやだ

僕たちが好きな季節に死ねるよう地球の花はばらばらに咲く

恐竜が死んじゃったから人間がいっぱいいるしわたがしもある

片っぽになった靴下を捨てちゃえる僕も片割れだった日がある

「悩ましい時期だろうけど何歳になっても悩むし安心して」 られるか

友達にならずに今日も生きていた数百人と乗る終電車

「真実を発見された場合には係員までお知らせください」

悪口は多分やめられないけれど優しい人になれたらいいな

牛乳を温めて飲む 函館の海に誰かが飛び込む夜に

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夜行性です 君からの連絡で光るスマホに翔んでいきます

美容師に「動物園に行く」と言い動物園が似合う髪型

「水底はぬかるんでいます」看板を無視して君と手を繋ぎたい

酔ったので嘘八百を言いますね 生まれて初めて月を見ました

「ここまででいいよ」 が拒絶か遠慮かを考えあぐねてここまでで帰る

続編を作りすぎてるハリウッド映画みたいにまた遊ぼうね

楽しいと思える夜がまだあった 交差点では右に曲がろう

死んでいた五月頭のあの蝉は蝉を見たことはあるのだろうか

スウェットで歩く月夜に元カノとすました顔ですれ違いたい

まっくろな消しゴムだってまっしろな鉛筆だってあるし私も

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一人でも生きていけます オーブンとレンヂの違いはもう分かります

補助輪は取ったしギアは三段階上げたし行くか二十二の春



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