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漫画みたいな恋って憧れるよね。

ぱっと1つ思い浮かんだので記します。
まさかの恋愛です。
このくだり、どっかで聞いたことあるな……

初めてnoteに書いたこの記事がバズったのも
レアな体験だからとは思う。
でもそれじゃあおもしろくないので、
中学の時の体験談にします。

中学3年生の冬
中高一貫校に通っていた私は
高校受験というのがなかった。
その代わり、文系か理系か進路を決めるというのがあった。

数学・理科が好きで、
国語・歴史が嫌い(苦手)な私は理系を選択。
同じく理系に進む同級生と
「本を読む時間があまり好きではない」という話題で盛り上がっていた。
(中等部では朝礼前に読書の時間があった。)

すると文系に進む男子が話題に入ってきた。
『いい本だってあるよ!』
次の日の朝、その男子が私に1冊の本を渡してきた。

「………え?」
『おすすめだから読んでみて!』
まぁ、読書の時間に読んでみるかと、受け取った。

話の内容はシンプル。
主人公の高校生の男の子は肝臓の病気を患い、
入院をしないといけなくなる。
入院生活中、看護婦さんに同い年の女の子の
話し相手をしてほしいと頼まれる。
彼女は心臓の病気を抱えていて…

この話は少年向けライトノベルだけど、
描写がとてもわかりやすくて私はすっと読めた。
作者の出身地の三重県伊勢市が舞台になっていて、伊勢神宮や赤福などが出てきたり、
ピーターラビットや銀河鉄道の夜など
実在する小説が出てきたりする。

度々女の子が主人公に本を貸すシーンが出てくる。
特に彼女が思い入れのある本が
「チボー家の人々」だった。

チボー家の人々には
『命をかけてきみのものになる』という1文の下に
登場人物のイニシャルが書かれているという描写があり、
さらに「半分の月が登る空」では、
そのイニシャルに2本線が引かれていて、
女の子のイニシャルであるRと書かれていたとあった。
つまり女の子が主人公に告白したってことだ。
さりげなく本を貸して、その中に告白の言葉を
忍ばせておくって、ちょっとあざといけど
何ともオシャレである。

しかし当時の私はそれが告白のシーンだということに気づかなかった。
電車のホームでそのシーンを読んでいた時、
付箋のような紙がピラピラピラと落ちた。
拾うと、『P.○(そのシーンのページ数)
 ○.○(私に本を貸してくれた男子のイニシャル)』
と書かれていた。
私もこの物語の主人公同様、告白されていたのだ。

だか、告白のシーンだとは気づいていない私は、
「本を返すときに失くしてはいけない」と
律儀にそのページに戻し、そのまま読み進めてしまった。
その本を読み終わるまでは、「どういう意味だろう?」と考えていたけど、本を返す頃にはすっかり
忘れてしまっていた。

後々、女の子が主人公に本で告白したということはわかるようになるが、その頃には、本に挟まっていた紙のことはもう私の頭になかった。

バレンタインが近づいていたある日、
同じクラスの女子から電話があった。
『○○くんにチョコを渡してほしい』といった内容だった。
「え?なんで?」あほな私は聞いていた。
『それは○○くんがミンチョンのこと好きだからじゃん。』

ええー?
本を貸してくれた以外の接点今までなかったのに…。
その時に付箋のような紙ことを思い出した。
全てが1本の線になって繋がった感じだった。

あーーーーーー!

謎が解けたものの、意味がわかっていなかったのが
恥ずかしく、電話の向こうの女子にそのことを
話すことができなかった。

電話が終わってから私は困ってしまった。
思いもよらない子からの告白を、
そうと知らずに何食わぬ顔で本を返してしまった。
顔色ひとつ変えずに返した私をどう思っただろう?

本を貸してくれた以外の接点はないって、
本を返すときに「おもしろかった!」とか
「この登場人物が好きだな」とかそういう会話を
したくて貸してくれたんじゃないだろうか。
挙げ句、クラスメイトに指摘されるまで気づかないなんて、何とも鈍感すぎるではないか。

バレンタインの日。
私は借りていた本を早く読み、
アンパンマンチョコと一緒に
本を返すことにした。
「友チョコ。本いつもありがとう」
そう言って渡した。

彼には申し訳ないが、
恋愛感情は芽生えなかったものの、
読書に対する抵抗感がなくなったのは
彼のおかげである。

告白のシーンを使って告白という
一生に一度あるかないかのレアな体験。
彼の勇気を忘れないようにしたい。

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