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急にやってきた1000円札

大学生の時の話。
授業の後、母に電話で「◯◯にきて!」と場所を指定された。聞き慣れないバス停の名前だ。
バスロータリーも慣れていないから、乗り場をしっかり確認してバスを待っていた。

“ねえ!これ、落ちてるよ!!”

急に聞こえてきた声。
中学生くらいの男の子と私が振り返った。
声の主であるおじさんは杖で何かが飛ばないように押さえていた。
その正体は1000円札だ。

中学生の男の子も私も心当たりがなく、「違います。」と答えた。

“取っといたらいいやん!折角なんやし”

おじさんがはいっと私たちに渡した。
中学生にとっても大学生にとっても大きなお金に感じる“1000円”。
さっと中学生が受け取った。私はどうぞという仕草をした。中学生が自分の財布に入れようとする。
これで解決だ。

すると、「いや……これは、交番に届けないと…!あっ!バスが来た!」
中学生はそう言い、私に1000円札を押し付け、ささっとバスに乗って行ってしまった!

えーーーー!嘘でしょ!
私はあ然とした。そんな責任転嫁みたいな…。
交番ならそばにあるから届けようか。
と動こうとした瞬間に私が乗るべきバスが来てしまった。ここでバスを逃すと母との待ち合わせに間に合わない。
仕方なく交番に届けずにバスに乗ることにした。

皮肉にもバスには、悪魔の囁きをしたおじさんも乗り合わせている。
拾ったのならおじさんが自分のものにすればよかったのに…。なぜ関係のない中学生と大学生に1000円札を渡したのだろう。反応を見て楽しんでたのかな…。。
財布に入れることができず、1000円札を握りしめていた。

母と無事待ち合わせができ、摩訶不思議なできごとを説明した。
「あら、そのおじさん神様やったんじゃない?交番に届けるかどうかを見張ってたりして…!でも今さら交番に届けに行くのも……ね。ラッキーと思ってもらっちゃえ!」

確かに交番に届けに行くほどの金額でもない。
でもおじさんが本当に神様なら、何だかバチが当たりそうだなぁ…。
気にしながらも財布に入れることにした。

続く


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