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B級無人店舗:無人餃子店から学ぶこと

 昨年から、「無人餃子店」があちこちに登場して急速に拡大している。
 例えば、大阪府内でラーメン店を経営する「大阪ふくちぁん」は24時間営業の餃子無人店を今年2月から始めて、現在関西エリアでなんと33店舗まで急成長している。

 味はもとより、無人販売店自体が気になる。なぜかというと、「無人」の店舗というと、すぐ思い浮かべるのがアマゾンの「Amazon GO」に代表される、来店客の行動をカメラとセンサーで分析し、商品バーコードのスキャンも不要の店舗だ。昨年から、日本版「Amazon Go」、いわゆる無人コンビニも続々都内にオープンしていた。例えば、以下のようなものがある。

 このような無人店舗は、天井にたくさんのカメラが設置されていることが特徴的だ。画像認識で誰が何を買ったか全部識別し、データにしているので、デジタル無人店とも言える。
 一方、無人店舗というと、その元祖は、日本でよく見かけた野菜無人販売所だ。空地に設置された棚に野菜が並び、代金は置かれたコインボックスにいれるだけだ。近くにある産地から、採れたての新鮮な状態で売られていて、中間マージンを取らないため、より安価で売られている。いまでも、郊外や田舎の道路の傍に見かけられる。

 無人餃子店はどんな感じかというと、デジタルテクノロジーとは無縁のように、昭和の雰囲気が漂っているアナログ的な無人店舗だ
 中に入って、まず目の前にあるのは、大量の冷凍餃子が詰められた大型冷蔵庫だ。餃子は数種類あるが、どれも1箱千円/36個だ。ドアのすぐ隣に設置されたモニターには、購入方法を説明する動画がずっと流れているが、見なくてもすぐ理解できるシンプルな仕組みになっている。冷凍庫から取り出して、支払いのところに行くと、支払いはなんと料金箱。かつ、まさかの賽銭スタイルである。当然ながらお釣りも出ない。現金を箱に入れ、持ち帰るだけという簡単な買い物だ。それと、料金箱の近くに保冷剤があり、1包の餃子につき2つまで無料だ。持ち帰り用の袋も無料(1包につき1枚)でもらえる。特製タレは1個100円(税込)。セキュリティは防犯カメラがあるのみで、犯罪の抑止効果はあるが防止できないだろう。

 この様に、庶民的な料理である餃子の無人店舗も庶民的な雰囲気と感じられる。DX(デジタルトランスフォーメーション)の時代に、このようなアナログなシステムが流行っている。 
 後発の無人餃子店は、昔あった野菜無人販売所、そして、テクノロジーを駆使する王道の無人コンビニと比べて、果たして時代の後退か、それとも時代の先か、考えさせられる。

まず、この三種類の無人店舗をまとめて、比べてみよう。

  三種類の無人店舗はそれぞれの特徴を持っている。
 デジタルの無人店舗は技術的に最先端だが、適用範囲はまだ限られている。前述の記事によると、投資回収のため、日商30-40万円くらいの売上、つまり、単価500円で、少なくとも1日600~800人の来店がないと、場所代や人件費、サービスのサブスクリプション代(月間80万円程度)を支払えないそうだ。逆に売上が倍の店舗では、顧客と商品の数が多くなると、現在の無人店舗の仕組みと処理能力はそれに対応できないのだ。
 
 一方、無人餃子店は、商品の種類を絞り、値段設定も単一で、どれも千円。支払いは千円の現金のみで、非常にリーズナブルかつシンプルな仕組みだ。コスト削減のため、いろんな工夫がされた。実際に店舗の営業時間もシンプルさにこだわっている。近所の無人餃子店に初めて行った時、店頭に書かれた24時間営業について、夜もたくさん利用されているのか?不思議に思った。その後行った時、ちょうど補充に来た従業員が居た。聞いたところ、夜間の利用はそれほど多くないが、昼間だけの営業になると、毎日店舗の開閉が必要となり、人件費がかかる。むしろ、24時間営業の方が得だとのことだ。
 
 無人餃子店の今後の改善点はというと、それは、現在、顧客データを取れないのだ。例えば、顧客の年齢層、餃子種類ごとの利用者の年齢層、リピータ率などが分かれば、サービス品質の向上がより一層期待できる。また、餃子を何時どのぐらい売ったかといったデータを正確に把握できれば、補充の効率も上げられる。実際に、利用している監視カメラを活用すれば、こうした顧客データと商品データが取れるのだ。

 しかし、そうは言っても、これは技術の視点から聞こえは良いが、本当はどのぐらいの経済効果があるかは検証しないと分らないところがある。テクノロジーはあくまでも手段であり、目的ではない。フールスペックではなくても、最先端ではなくても、コスパがよくて、市場に適切なソリューションがベストだ。つまり、Simple is best。

 昨年、無人餃子店だけではなく、アパレルや家具など他の業界にも無人店舗が登場した。「無人店舗元年」とも言える。それには、コロナ渦で対面接客が大幅に減る一方、非対面の販売が求められるという背景があるが、このような無人餃子店の共通点はコストを最小限にし、小規模なスタートでも利益が生まれやすい仕組みも考えられる。

  テクノロジーの「味」が薄い無人餃子店は、野菜無人直売所の都市版と言えると同時に、デジタルの無人コンビニの簡略版とも言える。また、言い換えると、無人餃子店は、アナログの野菜無人直売所とデジタルのハイブリッド型でもある。

それと、料理で例えれば、
シンプルな野菜無人直売所が田舎の素朴な郷土料理であるならば、
無人コンビニは都会のちょっと小さな、お洒落なレストランだと言える。
そして、無人餃子店は、庶民的なB級料理だ!所謂、B級無人店舗!

「やすい、うまい、はやい」と言われるB級料理と同様に、無人餃子店は、ビジネスとしても「やすい、うまい、はやい」、コロナ渦の中でうまれたが、コロナが終息した後も、定着するだろう。

この三種類が揃っている国は日本だけかもしれない。
この三種類の無人店舗は、今後も「共存共栄」だろう、共存してほしい気持ちもある。


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