ボランティア活動と市民活動
(1)ボランティア活動の意義や課題は何か
「ボランティア活動を実践することによって、またボランティア活動の中で多くの人たちとコミュニケーションをとることによって、様々な価値を発見し創出することができる」という認識が一般化したことである。この認識は、ボランティア活動に「学習する」契機を見出しているという点で、画期的である。すなわち、ボランティア活動の実践は、学校では学べない、教科書などには載っていない、しかし自らの人生を豊かにするうえで重要な意義を持つ価値を発見し身につけることができる極めて貴重な機会である。また、他の活動ではほとんど代替できないという点で、一人ひとりの人生にとって、そして生涯学習社会の構築にとって、意義深い活動といえるのである。まさにボランティア活動は、その本質として「学習活動としての意味」を内在させているといえる。
他方、ボランティア活動の実践にはいくつかの課題がある。その最大のものは、現場のニーズと自らの意思とのミスマッチである。本来のボランティア活動の理念からすれば、自らの主体的意思が実践に先行しなければならないことになるが、活動が真に公共性や利他性を持つためには、ボランティア活動の相手方が求めていることに対して適切に対処することが必要になる。
ボランティア活動は、自分自身の日常生活や人間関係の中で行われるものであり、それゆえ、活動を持続させていくためには、自らの生活との調整や家族・友人の理解が不可欠である。これらが不十分なままだと、多くの場合、ボランティア活動は持続しない。こうした点も、活動を実践するうえでの課題といえよう。
(2)市民活動における学習について、グラウンドワーク三島を例に説明しなさい
GW三島では、「美しい街をつくる」「水の都・三島の再生」という、分かりやすく誰もが共感するミッションを提示して活動の方向性を共有するとともに、様々な活動プロセスの中に「協議」を導入して、メンバー間・団体間の相互学習(相互教育)の機会を積極的に作り出している
活動プロセスの中に「学ぶ機会」「学びあう機会」を取り込むことこそ、プロジェクトの成功、さらにはグラウンドワーク運動の推進にとって欠かせないことを示唆している。GW三島は、市民活動の実践には「学び」が内包されており、その充実により市民活動の成果があがることを教えてくれるよい例である。
(3)市民活動が抱える3つの課題とは何か
①仲間を集め、活動を推進していくうえで、当該団体が活動の基礎となるミッションの果たす役割が大きい
ミッションに共感し理解することで、仲間が集まり、活動の方針が決められ、実際の活動が実践されるが、実際上互いのミッションが完全に一致することは稀であり、市民活動が継続されるためには、メンバー間の多少の違いを乗り越える寛容さや知恵が必要になる
それを実現するためには、メンバー相互の信頼関係を深めていく努力を重ねていくことが望まれる
②寄付をする社会的習慣がないこともあり、多くの市民活動団体が資金不足に陥っており、法制度等の抜本的な見直しが求められている
③市民活動は、地域における課題解決を目指して行われることが多いが、地域には、すでに長らく活動している町内会等の団体があり、これらの団体と協力していくことが求められる。
しかしながら、そもそもミッション志向である市民活動団体と、情緒的な結びつきの部分もある地域の団体等との間に「行き違い」が生じることがある
以上、市民活動団体の抱える3つの課題を述べたが、それが、個人の幸福を実現するうえでも、社会の公共的価値を蓄積していくうえでも、大きな役割を果たすことは疑いのないことであり、市民活動団体には、こうした課題を乗り越えていく努力が期待される。
<参考文献>
笹井宏益・中村香『生涯学習のイノベーション』玉川大学出版部,2013