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いのちの言葉つむいで

三浦綾子という作家をご存じでしょうか。一番有名だと思われるのは、朝日新聞の懸賞小説募集で「氷点」という小説を書き、それが大賞に選ばれ42歳で作家デビューされたことだと思います。ただその時、1963年。かなり前の話で、まだ私だって生まれていません。しかし、当時はすごい話題だったと聞きます。


いま私が本を読んでいるのが丁度「氷点」という小説で、その物語は以前読んだことがあったのですがもう一度見たくて再読という形で読ませてもらっています。

何故、今回noteにこれを書こうかと思ったかと言いますと、昨日の日曜に「三浦綾子生誕100年特別企画、いのちの言葉つむいで」というテレビ番組が放映されておりました。偶然それを知ったので、DVDで録画しながら感じたことも書きたかったのがあります。

以前から、三浦綾子さんの作品は幾つか読んでおりました。彼女自体多くの長編小説など出しており、年月経っても色褪せない小説で感銘を受けた記憶もあります。


このテレビ番組では、文芸評論家の方が小説の魅力を「読んだ人が勇気づけられる。誰もが生きる価値があるんだ。生きていいんだ。生きるべきなんだ。」とこう語れております。多くの作品から不幸に立ち向かいそれでも健気に生きる姿を描いており、これに勇気を得られるのではと思います。
 
肺結核で13年入院生活をされ病気との闘いを余儀なくされた彼女。しかし小説を書かれるうえでこの期間なくしては存在しないとも言われます。13年ベットの上にずっといていつ死ぬかわからないような状態でそういうことに耐えてきた。それは生への執着というか生きる事に対して意欲的でなければ耐えられない。とも評論家は語られておりました。


 
彼女はクリスチャンで洗礼を受けた方なので、小説の中では多くの聖書の言葉も出てきます。この言葉は奥深くて、努力だけでは出来ない難しさを含むものもあります。例えば「汝の敵を愛せよ」自分の敵と仲良くするのがいかに難しいことなのか。思うにキリストの言葉は人間の弱さを炙り出すものもあり、そう考えると私は人間がいかに脆く、弱いものだなぁと思ってしまいます。だからそういう側面を見て、不遜な態度や考え方は出来ないなぁと我に返ることがあります。そして、彼女の作品ではその一見難解な聖書の言葉を嚙み砕き、分かりやすいものとして且つ深く刺さるような形で問うていて良く考えさせられます。そういった意味での面白さも感じます。


 
「氷点」という小説の主題は原罪だといいます。キリスト教でアダムとイブから受け継がれた罪といいます。人はみな罪のある人間だという考え方。再読するのはそういった観点からも、もう一度検証しながら楽しめるのではと思ったのでした。そして、ゆっくりと彼女の生い立ちを想像しながら小説を読むのも良いなぁと感じたのです。きっと最初に読んだ時よりも立体的に感じられるかなぁと思います。今回のドキュメントを見ながら、また少しだけ人間の奥深さにも立ち入られるような気もしたのでした。



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