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なぜ社会は時間にこんなに厳しいのか?「社会不適合者」のための時間の歴史

こんにちは、みねるばです。
今回は時間認識の歴史的変遷についてのまとめと、関連本の紹介です。


ツイートまとめ:なぜ社会は時間にこんなに厳しいのか?


よく行く哲学カフェに行った時のこと。

店に入ると、お客さんと話していたマスターから

「ちょうど良かった!
この人みねるばさんと言って
動画作ったりして歴史詳しいので、
今の話の答えを教えてくれると思うよ」

と紹介され、

「いえ、全然大した話はできませんが、
可能な限り頑張ります(信長とかの話かな)」

と答えました。そうしたら、

「それはありがたいです。

僕は自分の時間や人生をあまりに犠牲にする
今の人々の働き方に疑問を持っています。

労働というのは本来手段で、
目的はもっと尊い何かであるはずなのですが。

それを探るためにも、これまでの歴史において
人々の時間認識や労働観がどのような変遷を
辿ったのか知りたくて・・・」

と言っていて、

「かなりガチでガチなやつきたな・・・」

となりました。

今日は質問された内の1つ、
時間認識の変遷についてお話します。

時間認識は歴史や地域によって様々で、
例えば古代ギリシャ型とキリスト教型があります。

前者は、時間は進むものではなく巡るもの。

毎年四季を繰り返すように、同じ出来事は繰り返され、
山手線のようにぐるぐる回り続けるイメージです。

日本はこちらの円環的時間型です。

元号は最たる例で、ちょっと進むと
すぐにリセットされ、再度1から始める。

そして、これを繰り返す。

還暦も良い例ですね。

日本人は四季や元号と共に生きる民なので、
こっち側になります。

一方、キリスト教型は、
時間は世界の始まりから終わりに向けて進むもの。

片道切符の中央線のようなものです。

こちらは直線的時間型となります。

人は絶えず進み、そうであるが故に
右肩上がりに成長し、進歩し続けるはずだ。

ここから進歩史観という
特殊な歴史観を持つようになりました。


また、昔は今のように時間厳守だったわけではありません。

明治維新の頃に日本に来た外交官の
日記とかを読んでみますと、

「日本人は約束した時間にまるで来ない。
朝に来たり、夜に来たり、別の日に来たり。
なんて時間にルーズなんだ」

という話がよくあります。

しかし、

実はこんなギチギチに時間を守る
西洋列強や今の我々の方が、
人類の長い数十万年の歴史の中では、
極めて不自然で異常です。

非人間的と言ってもいいでしょう。

近代以前はどこでもみんな時間なんて適当です。

時計すらあまり発達していません。

では、なぜこんな有様になってしまったのでしょうか?

理由はハッキリしていて、
元凶は産業革命と戦争です。

産業革命以降、工場での大量生産が始まると、
労働者は1分の遅刻も許されません。

皆が同じ時間に来なくては、
機械を効率的に動かせないからです。

現代人は歯車のようだとよく言われますが、
これは当然で、元が機械に合わせた働き方だからです。

また、近代戦が始まったことも大きいです。

大砲の発射時間や突撃の時間は、
1分1秒の遅れも許されません。

人々の行動がズレれば作戦計画すらままなりません。

では、人々に時間を守らせるにはどうすればいいか?

ここで始まるのが義務教育です。

日本全国に学校が建てられ、
どんな僻地にも必ずあるものがあります。

それが時計です。

生徒を時間で徹底的に縛り、
遅刻は厳しく罰せられます。

実は腕時計も軍事物資で、
日本で腕時計が普及したのは日露戦争以降、
西洋では第一次世界大戦です。

生々しい話ですね。

こうして義務教育と近代化に成功して以降は、
今のようにガッチガチな時間厳守人間に
なってしまったというわけです。

しかし、こんな価値観は
長い歴史の中では圧倒的なイレギュラーで、
この先だっていくらでも変わっていきます。

たまたま今の時代の価値観と合わないからといって、
自分を責める必要はありません。


次回は労働観の変遷のお話です。

今みたいな労働が全てという価値観も、
長い歴史の中では極めて異常です。

なぜこんなに生きづらい世の中になってしまったか、
その原因を話していこうと思います。


みねるばおすすめの関連本


西洋政治思想史 (有斐閣アルマ)

時間についての記述は多くないですが、「進歩」の章に時間認識の話があります。
こちらの本のメインテーマは、古代から現代まで国家のあり方がどのように変わって行くのかが記されています。
政治を考える上で欠かせない名著です。


外交官の見た明治維新 (講談社学術文庫)

明治維新の時に訪れたイギリスの外交官の日記です。
外国から見て日本がどのような姿だったかが描かれています。
日本人には気づけない点が沢山あり、とても興味深いです。


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