私と警察のはなし

 私はふだんニュージーランドを生活の拠点としているが、一時帰国するたびに必ずといっていいほど地元で警察官の職務質問を受ける。

 本人としてはまったくもって疚しいこともしておらず、むしろ模範的な小市民ではある。しかし思い当たる節といったら、腰まで伸びた髪とやたら痩せているという風体だろうか。

 必ずと言っていいほど目をつけられるので、商店街を巡回中のパトロールカーや自転車に乗った警邏が目に入ると半ば警戒するようになってしまい、目をそらしたりなるべく遠ざかりながら歩いたりと、それが相まって負のスパイラルへと陥っているのもある。なので最近はむしろぐんぐん近づいてみたり、まっすぐ一点を見つめて颯爽と歩く、などしていたらその頻度は減ってきた。

 職務質問の内容もまたかなり威圧的で間接的な暴力を感じるものだ。

 大体二人一組バディになって気さくな感じで近寄ってきたと思ったら次の瞬間にはこちらがどう頑張っても走りだして逃げたりできないようなポジション、フォーメーションを取られている。こういうのは下手に抵抗したり相手の心象を悪くするともっとめんどくさいことになるというのは火を見るより明らかである。なので、背負っているリュックサックはそのまま背負っていろ、だとか財布を開いてもいいか、だとか逐一言われる聞かれることに対してハイ、ハイ、と受け答えるだけである。そんな他愛のない点検を経て最後に股間を弄られるまでが基本的なワンセットである。

 持ち物を点検するほうの警官は、被職務質問者の感じにもよるのだろうが私の場合はかばんや財布の中を隅々まで点検される、ということはなく始めたからにはとりあえずマニュアルどおりにやっとかんともう一人も見とるし?一応おれも警官だし?こいつたぶん大丈夫だろうけどまあ千が一、万が一草とか見つかるかもしらんし?マイナスドライバーとか入ってたら適当にでっち上げてやれるし?みたいな感じとは裏腹にオニイサンはそんなふうに全然見えないんですけどねーとか言いながら一通りの点検をしていくだけだ。しかし感じの悪いのがもう一人のほうで、点検係がそうやって仕事をしている間何をしているかといえば、私が向きを変えると必ず私の目の前へ移動して仁王立ちをしているのである。これはなにかというと先程も少し触れたが、被職務質問者が何か疚しいことがあり、あ、これヤバ、と思ったときにダッシュで逃げたりできないように常に目の前に立って予防をしているわけである。終始無言で。マジで感じ悪いったらない。

 何度も言うが、私はこんなナリでまったくもって法律を犯すようなものの所持、行為をしていないため毎度警邏の時間を無駄にするだけなのだが、私が住んでいる地域は最近中東系や東南アジア系の住民も増えてきて、夜な夜なコンビニの前に座り込んでいたりあまり感じとしてはよくなくなってきている。もちろん彼らすべてが悪いことをしているわけでないのはわかりきったことなのだが、警邏の餌食になるのはまずそういう人々で、その次が私のような人間である。見た目まで模範的にしておかないと日本では少しでも人生の時間を損する、というのはおかしな話である。かしこ。

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