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浜と砂

神社の境内に白い玉砂利が敷かれていることがままにあります。
これはおそらく、砂浜の再現ではないかなと思います。
神社には自分の祖先神を祀る氏神神社と、その土地の守り神である産土(うぶすな)神社があります。今は、土地の守り神も氏神神社といいますが、本来は別の神様です。


一説には「うぶすな」というのは、出産の際に敷いた砂のことをさします。戦前くらいまでは、出産は産小屋で行う習慣が残っていました。地域にもよりますが、産小屋には砂浜の砂を敷く例がいくつかあります。


なぜ砂を敷いたのでしょうか?


それは新しい神は海の向こうからやってくるという信仰に基づいていると考えられます。
「浜」という言葉は「秀間(ほま)」からきていると言われており、すなわち海の潮で清められた目立つ優れた場という意味です。
浜に神様が祀られた例ですと、宮島の厳島神社などが思い浮かびます。
また、岬に神様が祀られている例は枚挙に暇がありません。
つまり、産小屋に砂浜の砂を敷くことは出産が神聖ないとなみであったことを物語ります。


神社の境内に白い砂利を敷くこともこの習俗に関係しており、海の清めの力だけでなく、夜でも目を惹く白い砂利は、神の依りつく場所を明示するのに適切であったことも考えられます。
この神社と白い砂利の系譜は竜安寺石庭、大徳寺石庭など寺院の庭の構成要素にも取り入れられています。


日本人の砂浜や渚への思いは、神社だけでなく寺院や石庭にも繋がるのには驚きです。こういうことを知ると、日本の原風景を少しでも残していきたいなと感じます。

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