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意外とあっけなかった話【1】
【お読みいただく前の注意事項とお願い】
・性被害についての記述が出てきます。それを踏まえてお読みいただき、不快感や嫌悪感を感じた場合は、閲覧をおやめください。
・わたしの前職(夜職)の記述があります。前職時代に、不安障害の原因となる出来事が起こりましたが、ナイトワークそのもの、及び現場で働いている方・関係者の方、普段 紳士的に夜のお店をご利用していらっしゃる方を貶める意図はございません。
その他、詳しくは前回の記事をお読みください。
【2020年12月1日】
確か深夜1時半過ぎ。
その日にお店に来てくれたお客様とアフターをした。
普段アフターはしないが、さかのぼること数日前、このお客様との予定を自身の体調不良で当日にキャンセルしてしまったのでその代わりだった。
ドタキャンしたにも関わらず、わたしの体調を気遣ってくれたこともあり、申し訳ない気持ちもあった。
カウンターと、テーブル席が2席くらいの小さなお店で、ごはんをご馳走になった。
お客様もタクシーで帰るということで、少し歩いたところにある、いつもタクシーが並んでいるコンビニの前まで歩いていた。
その時だった。突然手を握られた。
「ねえ、いいでしょ?」
わたしは笑いながら「なーに言ってんのー」と、かわした。冗談だと思っていた。
しかし腕を掴まれて、「一緒にお風呂入りたくない?」「朝まで一緒に寝たい」と繰り返し言われた。
「あぁ、こいつ、本気か」と悟ったわたしは、防衛モードに入る。無言でコンビニまで歩き続けた。
しつこく掴まれる腕は、小学生の頃に教わってからなぜか覚えている護身術でかわし続けた。
少し早足になったわたしに気付いたのか
「怒ってるの?」
「ねえ、そんなに怒らなくてもいいじゃん」
と、向こうも語気が強まる。
決して治安がいいとは言えない地域だったので、1本向こうの通りに巡回するパトカーの赤色灯が見えた。
「いざとなったら足を踏んで靴を脱いで走って逃げよう」
「あー、でもこのヒールおろしたばっかりなんだよなあ」
「早くパトカーこっちの道に来ないかなあ」
なんて考えていると今まででいちばん強い力で腕を引かれた。痛かった。
腕を振り払い、走り出すと、向こうも追いかけてきた。
コンビニの灯りが見えると「もういいわ」と捨て台詞を吐いて、自分だけタクシーに乗って走り出した。
「タクシー代は?」と言ったが無視された。
タク代出すからアフターしてくれ、って言ったのそっちだろーが。だっさ。
寮に戻ると涙が溢れてきた。
よく世話を焼いてくれたお姉さんに聞いてほしくて「起きてる?」とLINEした。
5分もしないうちに電話がかかってきた。迎えに来てくれて、その日はお姉さんの家に泊めてもらった。
迎えに来てもらう頃には涙は止まっていた。お姉さんの家までの道中、その客の悪口で盛り上がった。ついでに、いちおうボーイさんにも一報を入れた。
当時について、いろいろ
「ねえ、いいでしょ?」
言わずもがな枕の要求です。正直、こういうことはよくあると思います。
わたしは多くなかった方ですが、他店舗に勤務しているとき、タクシーに無理やり連れ込まれそうになってから、ほぼアフターはしなくなりました。
わたしは枕営業したことありません。コスパが悪いし、枕しなくても応援してくれるお客様はたくさんいました。そして、そんなお客様ほど枕を求めていないことも知っていました。
だからこそ尚更、腹立たしい思いでした。
寮に戻ると涙が溢れてきた。
ただただ、悔しかったです。ムカつきました。
この客にはもちろんですが、こんな客のために時間を使ってしまった自分にも腹が立ちました。
ずっと「お客様をひとりの”人”として接する」をポリシーにしてきたので、相手からただの”性の捌け口”としてしか見られていないのが悔しかった。
ホテルに誘われるのは慣れてはいました。
しかし、そのほとんどは信頼関係のあるお客様が発する冗談で、お互いが冗談とわかるものでした。
それをうまいことかわし、おもしろおかしくたしなめて盛り上げることが、わたしの仕事でもありました。
しかし、こちらが好意を持っていないのにも関わらず、一方的に向けられる情欲は恐怖と嫌悪でしかありません。言ってしまえば暴力です。
そして、ルールを守らない方をお客様と呼ぶほど、わたしは大人でもありません。
迎えに来てもらう頃には涙は止まっていた。お姉さんの家までの道中、その客の悪口で盛り上がった。ついでに、いちおうボーイさんにも一報を入れた。
思えばこのときに気の済むまで泣けなかったのがいけなかったのだと思います。
逆に興奮状態になってしまい、ハイテンションのまま、お姉さんの家まで向かいました。(※営業中、お姉さんは飲酒していません)
悪口で盛り上がる流れで、いちおう店にも報告した方がいいのでは?というお姉さんからの助言で、なにがあったかと今後出禁にしてほしいことをLINEしました。
すぐ返信が来ましたが、そこまで深刻に受け止めている印象はありませんでした。
「まあ、仕事上こんなことよくあるだろうし、いちいち対処してらんないわな」と自分でも思っていました。
当時といまの答えあわせ
この出来事は、ただただ「悔しかった」「腹立たしかった」という記憶でしかありません。
来るべき嫌悪感は、たった数年の夜職経験で感覚が麻痺し、曖昧になっていました。
もちろん嫌でしたが。
そもそも行かなくていいアフターだったのかもしれません。
でもなにがわたしをそうさせたのか。
それは新型コロナによる営業不振からくる焦りでした。
昔のことをいいように話すのはあまり好きではありませんが、コロナ禍以前は活気があったネオン街も、いつしか夜の街と呼ばれるようになりました。
コロナ禍に復帰することがどういうことなのか、わたし自身わかっていませんでした。来店されるお客様の激減、出勤しても指名のお客様がひとりも来店されない日も多々ありました。
自分の力不足ではありますが、わたしなりに考えた結果、「いま来店してくれているお客様を大事にしよう」との考えに至っての行動でした。
そもそも、なぜコロナ禍に復帰しようと思ったのか、については後々 語ることとします。
しかし、これはまだ始まりに過ぎません。わたしはこの出来事で、不安障害を発症したわけではないのです。きっかけではあったかもしれませんが。
そのお話はまた次回に。またお会いできることを楽しみにしております。
お読みいただき、ありがとうございます。いただいたサポートは、今後の成長のための勉強と命の水(ビール)に充てたいと思います。