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【著作権03】 引用?転載?承諾のもらい方は?


アカデミア向け画像著作権シリーズ3本目です。よろしくお願いします。

他人の著作物を利用する場合、それが「引用」なのか そうでないのかによって、必要な対応が変わってきます。結論から言うと、アカデミア関係でスライドやウェブサイトに使う画像は、引用に当てはまらないものの方がかなり多いと思います。

画像の「引用」とはそもそもなんなのか、画像の引用を理解するためには、まずは、画像に限らず著作物一般の利用における基本的なルールを理解しておく必要があります。

 引用に関する法律と背景

著作権法 第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

スーパーざっくり言うと、「ちゃんとした目的・用途の範囲で(引用のルールは後で説明)なら使っていいいよ」ということですが、この法律は背景を理解しておいた方がよくて、それは以下のようなことです。

・他者の著作物を使用する時は、原則的にはどんな場合も、著作権者の許諾が必要

・だけど、例えばある作品の批評を書きたい時など、元の作品の一部を自由に掲載できなかったら、新たな創作を行いにくいときがある!
→ それって文化の発展にとってマイナスだから、一定の範囲においては許諾なしでも使えるようにしよう

文章でも画像でも原則は勝手に使っちゃダメだけど、どうしても必要なら必要最低限でルール守れば、「引用」と呼んで、いわば無断利用を許してもらえる、ってことなんですね。

引用の条件

以上の前提となる背景を踏まえて、「引用」と認められるには、具体的に以下の条件をクリアしている必要があります。

1.元の著作物が公表されていて、引用元を辿れること。

2.その著作物に関する報道、批評、研究を行う場合など、正当な目的があり、その著作物を使う必然性が認められること。

3.自分が作る新たな著作物がメインで、引用する元の著作物はその一部であるという、主従関係をはっきりさせて使うこと。

4.「ここからここまでが引用」と、自分の創作部分と、引用した著作物の部分とをはっきりと区別すること。

5.改変しないこと(同一性の保持)。

6.引用元を明示すること。

これら全部をクリアすれば「引用」として許諾を取らず掲載可能で、上記の範囲に収まらなければ「転載」になり、著作権者の許諾をとる必要があります。

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画像の引用

画像の引用も上と同じです。ただ、文章の引用よりは、ちょっとイメージしづらいかもしれません。実際の画像の引用には、例えば、以下のようなパターンが考えられると思います。

・その絵や写真自体を批評するとき

・新聞記事や研究内容を紹介するときに、その補足のために一緒に掲載されていた写真や図が必要で、一緒に引用する(文章と画像の権者が異なることもあるのでそこは要注意)

とかですかね。なんとなく丁度いいビジュアルがほしいからウェブからとってきた画像を使う、とかは、引用の範囲外になります。「ここは本の話だから、この図書館のウェブサイトの施設紹介写真がぴったりだ!拝借して載せておこう。出どころを書いておいたら、引用で大丈夫だよね。」というわけにはいかないのです。

転載でも許諾がいらない場合

引用に当てはまらず「転載」という事になれば、無断というわけには行きませんので、原則に立ち返って著作権者の許諾が必要になります。ただし、一部、転載でも、以下のような場合などでは許諾を必要としません。

パブリックドメインの作品を利用する場合

・パブリックドメイン でなくても、権者が一定の条件での無断使用を認める旨を公言していて、その条件の範囲内で使用する場合

クリエイティブ・コモンズのライセンス指定のある作品を、指定のルールに則って利用する場合

(他のアカデミアにあまり関係なさそうな細かい条件は、煩雑になるので省略しています)

パブリックドメイン については、前回の記事「どんなものに「著作権者」が存在するのか?パブリックドメインとは?」をご覧ください。クリエイティブ・コモンズについては、またそのうちに書きます。

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上記に当てはまらないものは、基本的には全て、許諾が必要なものと考えてください。また、「許諾がいらない」ということは「著作権表示がいらない」とは違うので、表示については別途きちんと確認するよう、十分気をつけましょう。

承諾のもらい方

上記で、転載でも許諾が要らない場合を挙げましたが、とはいえ、基本的には転載は許諾が必要です。

許諾のもらい方は、権者側が問い合わせのテンプレートやフォームを持っていれば(企業や大きな団体に特に多いですが)、それを使いましょう。

論文に掲載されている画像だと、たとえば、個々の論文のオンラインページに「Request permission」などと、使用許諾申請フォームの入り口があることもありますね。

そういう決まった形がなければ、Eメールや書面など、あとに残る形で問い合わせましょう。テンプレが決まっていない場合は、基本的には以下のような聞き方になると思います。

〇〇大学XX研究科の△△と申します(氏名と立場)。

下記の画像について、以下の通り使用させていただけないかと思いご連絡差し上げますが、ご許可いただけませんでしょうか。(使用の許諾)。また、クレジットの掲載が必要な場合は、どのように掲載したらよいかご指定いただけますでしょうか(記載すべきクレジットの確認)。また使用料等が発生する場合は、その旨ご教示いただければ幸いです。(料金の確認

・使いたい著作物
・用途、目的:どういう人が見るどういう媒体に掲載し、どういうときに公開されるか(イベントなど)、など
・使用日/使用期間
・商用か非商用か
・改変を加えたい場合はその旨

多くの場合は、これで必要な返事は全て帰ってきますし、先方でさらに必要な情報があれば、それは先方から聞いてもらえると思いますし、ファーストコンタクトとして必要なことは、上記ですべて盛り込まれていると思います。

また、許諾はいわば使用権を一部譲ってくれるということで、かならずしも無料とは限らないのでそう思っておきましょう。(というか、人が作ったものを使いたい時はお金を払う、という前提の方がいいかもしれません。農家の人が育てた大根を、ご好意でタダで譲ってくれる場合もあるかもだけど、まあ普通は買って食べますよね。)無料の前提で聞くのは失礼に当たる場合もあるので、十分注意しましょう。

迷ったら聞けばいい

使っていいのかどうか、どういう形なら大丈夫なのか、よくわからなかったら、結局本人に聞いて確認を取るのが一番速くて間違いなかったりします。権利問題はコミュニケーションの不足によって引き起こりやすくなります。迷ったら積極的に聞いてみましょう。

つい最近、ある大学教員の方に、「〇〇って曲、一般向けイベント用のスライドに使いたくて、使用許諾についてユニバーサルミュージックに問い合わせてみたんだけど...」と言われました。こうしてちゃんと意識を持って必要な連絡を怠らなければ、トラブルになりません。そんな有名な曲をスライドに使う方はそう多くはないかもしれませんが、迷ったら権者に聞けば、間違いないですね。


次回は、引用/転載の時の出典やクレジットの入れ方を具体的に。



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