宇宙に棲む

うちは洋室と和室の1LDKで、和室に布団を敷いて眠っている。どちらの部屋にもニトリの電気をつけていて、リモコンで電気をつけたり消したりできるのは便利やな~と実家ではできなかったことに感動している。

寝るときは真っ暗じゃなくて少し小さな電気をつけたい。それは二人の生活時間が少し異なっていて、寝るときと起きたときに一方を踏んずけてしまいそうになるから。

夜通しつけて置ける小さな電気の名前は「常夜灯」だ。私はこの名前が好きだった。常夜鍋というものもあって好きだ。常夜という言葉にひかれているのかもしれない。

まいにち常夜灯をつけて眠る。同居人が寝てしまったあとなかなか眠れないとき、そのオレンジの小さな光を見つめていると、だんだんそれが月のように見えてくる。私の寝室のお月さま。つまり私は宇宙空間にいる。このせまい和室が無限に広がる宇宙に思えてくる。もしかしたら地球がなんらかの理由で爆発して、もう住めなくなったときに、宇宙にこうやって浮いて暮らすこともあるかもしれない。そうなってもこのお布団には入って眠るということは変わってないといいなあと思う。

宇宙は空気がないからウイルス感染しない。コロナが収束しない地球である日、科学者が言った。そうだ、宇宙行こう。宇宙の別の惑星への移住計画には世界にある多くの名だたる企業が開発に乗り出した(amazonとか)。移住は希望者を募ると世界からすごい数の人が手を上げ、気づけば地球はがらがらになり、惑星の土地が足らなくなってしまった。そこで中国のベンチャー企業が提案したのが、「宇宙空間での暮らし」。宇宙空間であれば無限大だから、もはやみんな浮いて暮らそうよ、という話だ。宇宙空間は誰のものでもなく、空間自体が土地のように区切れないため、企業では宇宙へ行く前の訓練、座学、持ち物の手配、ロケットへの乗船を確保。宇宙空間にスーパーマーケットもあるので、食料などはそこで購入できる(ただ、宇宙ではあまりおなかが空かないので、節約も可能)。地球へ行く便も定期的に出ているので、ブックすればいつでも地上へ行くことが出来る。

今まで家賃を払ったり、土地税や住民税を払ってたのがばかみたいだと、皆んな口々に言った。空間での暮らしはなににも仕切られず、でも暗いので隣の人も見えたり感じたりせず、実に優雅だった。

一方そのころ地球では。人間がたくさん出て行ったおかげで自然が戻り、動物が繁栄し、正しい食物連鎖に戻りはじめた。人間に守られていたような弱い生き物は絶滅し、強いものだけが生き残った。動物園はまるで強い生き物の城のようになり、上野や多摩などが強い動物のメイン生息地になった。

そんな空想をしているとだんだんカーテンの向こうの空が黒から青に変わり始める。恋人のアラームが5時に鳴って、慌てて寝たふりをしてそのまま眠りにつく。

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