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市本・みんなの読書会vol.1「タイトルについて語りたい本」開催レポート

2023/4/29(土) 18:00~20:00 ギャラリーf
テーマ 「タイトルについて語りたい本」
ファシリテーター 並木 江梨加(元市本スタッフ)

■ 読書会スタート ■

ギャラリーf開場後の様子 撮影:なかざわ あおば

市川市の学習交流施設「市本」が閉館し、なかざわが運営を引き継いでから初めての読書会でした。開場時間になると20代~60代と幅広い年齢層の方が続々とお越しくださいました。

最初にこれまでの経緯や当日のスケジュールについて説明させていただき、参加者同士の自己紹介を終えたあと、ファシリテーターの並木さんの進行で読書会本編がスタートしました。

ご自身が選んだ本の紹介をする並木さん。 撮影:ゆーちゃん @yuymh651

『育児まんが日記 せかいはことば』
齋藤陽道 著 ナナロク社

並木さんが選んだのは、写真家・文筆家の齋藤陽道による育児まんがです。齋藤陽道さんとパートナーの盛山麻奈美さんは手話で会話をする、ろう者。0歳と3歳のお子さんは耳の聴こえるコーダ(Children of Deaf Adults)。

ご家族の日常の中から、お子さんたちが「ことば」を発見し、伝える様子を綴った作品です。

"「せかいはことば」って聞いたとき、どう思いますか?”という並木さんの問いかけから始まり、作品の中から特に印象的だったエピソードをいくつかご紹介いただきました。

3歳のお子さんが世界を見て、捉えて、マネしながら身体を使って自分なりの手話として両親へ表現することで会話をしている様子が「豊か」で「ちょっと羨ましくもあった」とのこと。

「せかいはことばで満ちている」という齋藤陽道さんの言葉は一見ありふれた表現のように思うかもしれないけれど、陽道さんの実感はそれとはちょっと違うような気がしている、という並木さんの感想が印象的でした。

紹介が終わると、次は並木さんが机に置かれた本の中から「気になるタイトル」を指定してご紹介いただくことに。1冊について細かく書いていくと、とんでもなく長いレポートになってしまうので、ここからはなるべく省略して…。

撮影:ゆーちゃん @yuymh651

■ 前半1時間 ■

前半の1時間でご紹介いただいたのは…
『エリカについて』
小野絵里華 著 左右社
ぐっとくる題名
ブルボン小林 著 中央公論新社
華氏451度
レイ・ブラッドベリ 著 宇野利泰 訳 早川書房

『エリカについて』は今回唯一の詩集でした。ご持参いただいた方からは、小説やルポルタージュを読んだときとは違う感情が動かされるというお話が。詩集の価格が高くなってしまう理由(!)や詩の普遍性など色々と話題が広がりました。

『ぐっとくる題名』は様々な本や映画などのタイトルについてなぜぐっとくるのかを分析・解説した本。今回のテーマにぴったりな一冊にみなさん興味津々でした。ご持参いただいた方は、先日本屋大賞を受賞した『汝、星のごとく』(凪良ゆう 著 講談社)について、これは〇〇という理由で”ぐっとくる”のでは?と考察したそうです。

『華氏451度』は100分de名著にも取り上げられた有名な作品。ご持参いただいた方は「そもそも本は何のためにあるのか?」ということをとても考えたそうです。似たテーマを持った別のSF作品や2,000年前に書かれた本が今も出版され続ける理由などにもついても皆さんの思いが語られました。

撮影:ゆーちゃん @yuymh651

……ということであっという間に1時間が経過して5分間の休憩となりました。

休憩中もお互いが持ってきた本を見せ合ったり、最近(特に)本八幡界隈から注目されている『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』(済東鉄腸 著 左右社)の話題で盛り上がりました。

撮影:なかざわ あおば

■ 後半1時間 ■

後半の1時間でご紹介いただいたのは…
『100万回生きたねこ』
佐野洋子 作・絵 講談社
82年生まれ、キム・ジヨン
チョ・ナムジュ 著 斎藤真理子 訳 筑摩書房
たったひとつの冴えたやりかた
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア  著 浅倉久志 訳 早川書房
生きぬくことは冒険だよ
長谷川 恒男 著 長谷川 昌美/小田 豊二 編 集英社
斬新 THE どんでん返し
芦沢 央/阿津川辰海/伊吹亜門/斜線堂有紀/白井智之 著 双葉社

撮影:ゆーちゃん @yuymh651

『100万回生きたねこ』はもはや紹介不要なくらい有名な絵本。
ご持参いただいた方は読書会に向けてこの本を思い出し、読み直したそうです。以前とは違った印象を受け、とても心に響いたとのこと。他の参加者の方からは、作者のエッセイについてもご紹介があり、作品の背景にはこんな思いがあったのかもしれない…などのお話になりました。

『82年生まれ、キム・ジヨン』韓国で大ベストセラーとなり、映画化もされ日本でもとても話題になった本。「フェミニスト文学、と分類されますが個人的には人権について書かれた本だと思う」とご持参いただいた方は仰っていました。"女だから・男だから〇〇しなければいけない(××してはいけない)"という、ありもしない見本に当てはめることで起こる軋轢は日本も韓国も変わらないのではないか?との感想も。

『たったひとつの冴えたやりかた』はSF作品。原題は『The Only Neat Thing to Do』。元々の英語の意味をよく訳しているな、ということで選んでいただいたそうです。SF作品には独特なタイトルが多い!といくつかの作品名が話題に上りました。正統派の作品から、年代を重ねて"ひねった"作品が好きになってきた、なんていうお話も。

『生きぬくことは冒険だよ』は登山家・長谷川恒男さんの著書。極限状態の登山のなかで、どのように考え・行動するかを垣間見ることのできる作品。ご持参いただいた方は、著者に会うチャンスがあったけれど実現しなかったというご経験があるそうです。人には、会える時に会っておきなさいという教訓も感じたとのことでした。

『斬新 THE どんでん返し』は2023/4/12に発売という新作!ご持参の方からは、短編のアンソロジーだから読みやすいというご意見が。同じ"どんでん返し"で他の出版社からも短編集が出ているという話から、出版業界の裏話にも色々と話が及びました。

最後に、ちょっとだけ時間がありましたので主催なかざわが選んだ本『ぼくは戦争は大きらい』(やなせたかし 著 小学館)、『まとまらない言葉を生きる』(荒井 裕樹 著 柏書房)についてもご紹介させていただき、2時間に及ぶ読書会が終了となりました。

終了後もみなさん残って本の話をしたり、今回の読書会で出た話題を深掘りしたりと賑やかな時間を過ごしました。本が好きで、本について話したいという前提のもとに様々な方が交流するということに、改めて意義を感じました。

これからも、毎月1回(ご要望があればそれ以上!)読書会やイベントを開催していきますので、よろしくお願い致します。

撮影:ゆーちゃん @yuymh651

■ 今後のイベント ■

5/19(金) オフ会
19:00~市川真間「ラ・ドルチェヴィータ」

※読書会サポーター@4cDPjpU3RTJ7Q8Jさん主催
※Twitterより@4cDPjpU3RTJ7Q8JさんへDMでお申込みを!

5/20(土) みんなの古本交換会vol.1
14:00~ カフェ「ワニシャン」

5/28(日) みんなの読書会vol.2
18:00~ カフェ「ワニシャン」
※現在満席となっております。

■ 市川プロギングのご紹介 ■

今回の読書会レポートで掲載している写真のほとんどを、ゆーちゃん(Twitter:@yuymh651)さんが撮影してくださいました。ゆーちゃんさんは「市川プロギング」というジョギングしながらゴミ拾いをする活動をされています。老若男女、国籍関係も関係なく、参加費無料でいつでもご参加いただける活動です。最新情報はInstagramやTwitterをご確認くださいませ!
https://twitter.com/yuymh651
https://www.instagram.com/ichikawa_plogging/



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