犬が好き。猫が好き。

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この胸の。

この胸のいくつの痛みわかりあう 君を伴侶と呼びて日は過ぐ

    • おそらく

      何十年かの月日と、いくつもの口喧嘩と傷心と涙を経てふとしたときに気づく。たとえば、わたしが嫌だといったああいうことやこういうことをぐっと己の意思で押さえ、わたしが求めたように耳を傾けてくれるとか。わたし自身が言ったことを忘れていたけれども「いまのはひょっとして十年くらい前に訴えてでも全然直してくれなかったからもう諦めたのに」というようなこととか。そんなことを緩やかに、わたくしに沿うように、気づかないうちに少しずつ少しずつ変えていってくれている精神の労力こそが、一時の激情ではな

      • 愛しさは。

        愛しさは不意に、輪郭を顕にしてわたしを戸惑わせる。指先で触れるその温もりが静脈を伝い、心臓まで届いたそのとき、ひとつドクンと左胸を叩き、その波動が動脈とともに爪先へと、皮膚の表面へと押し流され、外気との境界が知覚される。そこでわたしは、愛しさを満たす我が器の外殻の存在を思い知るのだ。

        • 愛情は。

          愛情 は ニトログリセリン わたくしの 心を動かす そして 爆破する

        この胸の。

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          だいすき

          朝起きてから、ぐじぐじと布団にくるまり昨夜の口論っていうかけんかっぽいもののことを考えていた。相手は先に起きちゃって階下にいて、わたしはというと何がいったいここまで心を擦るのかだるい身体をゴロゴロと動かしながら着替え、一旦整えたベッドの上に寝そべり、嫌な涙を、しとしとと溢していた。声はあげない。涙だけが鼻先を伝い、ベッドのカバーを湿らせていた。 相手がトイレにいってる間に家を抜け出し、海まで車で駆けようか。犬を連れて森にいこうか。自分の好きなことをするんだ。そう考えるその時

          だいすき

          夢、 そして目覚める。

          夢を見ても割りとすぐ忘れるのだけれど、昨夜のはよく覚えている。もう昼過ぎだというのに、夢の中で感じた手触りやぬくもり、そこで心を掠めた想いとかがいまも心臓の上の辺りをうごめいている。 その夢は突然始まった。 わたしは夢の中でとなりに住んでいるという金持ちの豪邸のパーティーに参加していた。すると、そこの家のペットの黒豹が飛びのってきた。両腕で抱き抱えたのだけど、離れていかない。撫でていると何かひっかかるものが左の前脚にある。引き抜くと長いトゲだった。抜いてあげたらさらに懐いて

          夢、 そして目覚める。

          ぬくもり

          犬の平熱はヒトの大人のそれより少し高い。触れた部分から染み込んでくるそのぬくもりがこんなにも愛しいのは、我が子が誕生し初めてこの腕に胸に抱き締めたあの忘れられない体温を感じさせてくれるからかもしれない。

          ぬくもり

          溢れる。

          たゆたえる空は青 流れる雲は、水 見上げる空に 僕は落ちる 飛び散る飛沫は、雨 限りなく透明にちかく 僕らを充たし 潤すもの それらに挟まれ 循環を繰り返し この惑星での生を 泳ぎきるんだ (22nd May 2022)

          溢れる。

          写真

          こんなに手軽に写真が撮れるようになったのだな、と思う。ほんの20年くらい前は、フィルムの現像をするのが一般的で一日で仕上がってくるサービスなどがとても贅沢に思えるほどだった。それが、だ。とった瞬間に昔の写真大のスクリーン上で画像を確認できるようになったのだ。 そして私は撮る。毎日毎日、飽きないのかとそしられる程に同じ被写体を撮る。同じなものか、日々この子はこんなに目まぐるしく変わっていってるではないか。そう心のなかで呟きながら撮り続ける。なんせこの子の命は短く、長くて十数年

          クロ

          私の母は当時かなり厳しくてね、と彼が話し始めた。 僕は彼の膝に顎をのせる。 この公園には柔らかな芝と立ち並ぶ木立とベンチのほかは何もない。向こうの小道を忙しげに行きかう人たちが見えるけど大丈夫、時間は山ほどある。  僕は彼の言葉に耳を傾けた。 私の母は当時かなり厳しくてね いや、母を責めるつもりは毛頭ないんだよ 話したいのは母の事じゃなくて クロのことなんだ 私は小さい頃から犬が好きでね 野良猫も野兎も鶏も牛も鳥たちも 周りにたくさんいたのだけど 好きなのはやっぱり犬だ

          クロ

          ふみお

          (*以前に書いたものの転載です) 竜二さんが夕刻過ぎにお見えになると使いの者が申しておりました。 そう言いながら淹れたての茶を私の机に置くとおぬいさんはすぐに腰をあげた。 御夕食はいかがなさいますか、一緒に用意させていただきましょうか、と重ねて聞かれるのだが私の視線は縁側へと泳ぐ。 そこへ居るのは、ふみを。 桜文鳥の、ふみを。 物書きである私の生活には昼夜がない。昼夜がないうえに生活全般において頓着がない。そんな私を見かねたか何か生き物を飼えばよい、といったのは竜二で

          ふみお

          肩の窪み

          歩み去るあの方の姿が 夜の木々の影に溶けてゆく 土の小路をゆくその足音がだんだん遠くなり 耳に届かなくなるまで聴覚を尖らせていた私は 溜めていた息を静かに吐いた その夜の月は冷たく冴えた闇を鋭く照らし 歩み去るあの方の肩の窪みに薄く積もり それはそれは 秘密の魔法のように 私の心にのみ残る情景として いつまでも、あり続けるのです 7th. March.2021 (memory of march 2019)

          肩の窪み

          夜明けに近い夜に

          暗闇の中でふっと意識が浮上し 目覚めの時が近いのだなと思わせるときがある 瞼は閉じたままで 暗闇に身を委ねる 静かな暗い温もりのなかで 私のからだは薄く拡がり そしてまた 黒い塊へと凝固し 微かに感じ始めた体表の冷えにより 私の形へと輪郭を整える そしてまだまどろむ思考のなかで 日曜なのだということを思い出し 開かない瞼のままで 黒い闇へとまた、溶けていくのだ 7th.March.2021

          夜明けに近い夜に

          漂える風呂/吐息と心音

          目が覚めてすぐ、風呂に入ろうと思った。起きたらすっきりしてるかなと思っていた頭痛が、まだそこにあったからだ。 細長く白い浴槽に熱めの湯を貯め、腰まである髪を解き、足先からゆっくりと入る。熱すぎるのはダメだ。だけど今朝は熱めじゃないとだめだ。そういう気がしていた。 指先から、皮膚の表面からじわじわと侵食する熱の心地よさ。湯が触れる箇所から軽い痛みにも似た感覚が拡がる。肌が湯の熱さに馴染みだした頃、後ろに背を倒し頭を湯に浮かべた。 腰まで伸びる髪はゆらゆらと揺れ、背中を、肩

          漂える風呂/吐息と心音

          ある日曜の遅き朝に

          台所にいってポットの湯を沸かし紅茶を淹れそれを飲みながら窓の外をぼうっと眺めてる。腹は空腹を訴え、はて何を食べようかと台所を見回し目についたビスケット2枚を口に放り込む。 ああダメだ、こんな朝食ではダメだと心の警笛が赤ランプを点滅させる。とっさに栄養価はビスケットよりましだと思われるという理由でバナナを手にとり口に入れる。一口でもう空腹感は薄らいでいるのだが残す訳にもいかないだろう。食べ尽くす。 そして思う。私は独りになれば必ずや自堕落な生活を送る羽目となり、己で、己の息の

          ある日曜の遅き朝に

          湛える月夜/浮かびあがる白

          月の光に浮かぶ白は、青みを帯びていた。 私はその日、真夜中前にサシャと家をでた。夏になる少し前の、丸い明るい月が辺りを照らす穏やかな夜だった。サシャは散歩が好きだった。 引き綱をつけた彼女が右へひだりへと揺れるたび、私の腕の筋肉の異なる部位が反応する感触で、彼女がその鼻で捉えたであろう匂いへの興奮度がうかがえた。 右の青草の群れに、どこかの犬が匂いをつけたのだろうか。左の青草の群れを誰かが踏みしだいたのだろうか。近所の猫が、ハリネズミが、テントウムシが、蝶が、ミミズが通

          湛える月夜/浮かびあがる白