IT技術者から、心理学の研究者へ、そしてマインドフルネスへ Part1 〜MBSRとの出会い〜
当センターでは、ドイツのthe Institute of Mindfulness Based Approaches(IMA)と連携し、2021年4月からマインドフルネスストレス低減法(MBSR)講師養成講座を開催しています。
その1期生として2022年10月にトレーニングを終え、MBSR講師となった江崎さんにご寄稿いただきました。公認心理師、産業カウンセラーとして、専門学校や短大での講師業務、企業、医療機関へのメンタルヘルスサービスを提供されている江崎さんが、MBSRを教えることを学び、感じていることとは。(ご本人プロフィールは文末)
2023年3月10日(月)から月曜夜のMBSR8週間コースを開講予定です。
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以下、江崎さんがへインタビューをさせていただきました。
その1回目です。
インタビューアー:宮本賢也
―――いまのお仕事を教えて下さい。
今は、仙台を中心に、医療従事者の専門学校で心理系の科目を教えたり、病院や企業で職員向けのストレスマネジメント講座や個別のカウンセリングなどの臨床を行ったりしています。
―――もともとは、どのような経緯で心理の道に進むようになったのでしょうか。
実は、大学は情報学部で、社会人生活の最初の2年も精密機械メーカーの関連会社で情報工学に関連する仕事をしていました。私は、親の影響で、小学生時代からコンピューターを触り始め、地元企業の電気実験教室やマイコン教室に通うような子供でした。なので、自然と、大学は情報学部に進学しました。
―――それが、どのように心理学の道に入ることになったのでしょうか。
もともと音楽にも興味があり、大学4年制の時に、卒論で、辛い記憶に対し音楽がどう作用するか、というテーマに取り組もうと思ったのですが、どうもその分野は医学や心理学からのアプローチのほうが良さそうだ、ということで、学ぶ道を変えました。進学資金を貯めるため一旦就職し、その後、心理学を学ぶため大学院に進学しました。
それ以来、修士課程、博士課程、その後の研究員という立場も含めると、10年ほど大学で研究をし、その傍らで、医療関係の専門学校や短大で科目を教えるようになりました。
―――心理学も幅広いと思いますが、主にどのような研究をされていたのでしょうか。
生理心理学という分野で、例えば聴覚刺激と脳の関係を調べる、といった、より生理学的な分野でした。例えば、携帯電話の音が途切れることがあっても、ごく僅かな時間なら、人間の脳は聞こえた部分をつなぎ合わせてしまうので、聞き手は途切れたことを認識しない、ということがあります。そういう音と脳という分野に取り組んでいました。
これは、大学4年制に取り組みたかった音楽と記憶というテーマにそったものでした。もう20年くらい前のことになります。
私自身、ある種類の音楽を聞くと辛くなったりネガティブな記憶が思い起こされたりという体験があって、その分野に興味を持ったのです。
―――ご自身でも音楽をされていると聞きました。
小さい頃からピアノを習い、その後はギターやベースも弾くようになり、中学生の時にバンドを組み、大学生まで続けていました。大学院時代は、ベネズエラからの留学生と一緒に、ライブハウスでバンド活動をしていたこともありました。
―――そうして、もとは生理心理学の研究をしていたところから、いまは臨床心理学の分野の方にシフトされたのはどのようなきっかけがあったのでしょうか。
講師として心理学を教える機会はあったのですが、医療従事者を育成する文脈で教えていたため、生理心理学より、臨床心理学よりの講座を求められることのほうが多くあり、少しずつ教える内容をそちらに方にシフトしていきました。そのうち、とある人から、企業向けのカウンセリングやセミナーをやれないかという打診を受け、そちらのほうも少しずつはじめました。
―――最初は、ニーズに応える形で分野をシフトしていったのですね。
シフトしながら、同時に学び直しも同時並行で行いました。産業カウンセラーの勉強をして資格をとったり、出身大学の先生にお願いしてティーチングアシスタントの立場で臨床心理学を勉強し直したりしました。
―――今は、臨床家としても、カウンセリングや認知行動療法を行っていると伺いました。そのきっかけはどのようなことだったのでしょうか。
私が大学院で学んでいた頃は、まだクラエント中心療法が主に教えられていました。2012年頃だったと思いますが、伊藤絵美先生が私の住む仙台にお見えになりました。キャリアコンサルタント向けの勉強会だったと記憶しています。そこが認知行動療法に本格的に触れた機会です。
その頃、仙台では認知行動療法を学べる機会は少なかったので、東京に勉強をしに行ったり、仙台で勉強会を始めたり、スーパーバイズを受けたりしながら、勉強していきました。実は、この伊藤先生の勉強会の時に、マインドフルネスという考え方も触れたのですが、このときは、どちらかというとセラピスト自身のセルフモニタリングとしてのマインドフルネスという位置付けでした。
―――その後、マインドフルネスとはどのような関わり方を持つようになったのでしょうか。
そのうち、マインドフルネスをクライエントに提供するマインドフルネスストレス低減法(MBSR)やマインドフルネス認知療法(MBCT)の存在を知りました。調べた所、当時はアメリカやイギリスでしか受けられなさそうということで、8週間渡航することなども真剣に考えたのですが、実現しないままになっていました。
そのうち、コロナの影響もあったり、マインドフルネスの認知度が高まってきたりで、Zoomでのウェビナーがあちこちで開催されるようになってきました。そういったものにいくつか参加して学んでいるうちに、Amir Imani先生がMBSRを日本向けに行うということを知りました。MBSRの創始者であるJon Kabat-Jinn先生から直接学びを受けられた先生ということにも興味を持ち、そのMBSRを受講してみることにしました。
―――最初に受けたMBSRではどのようなことを感じましたか。
それまでに知っていたことは全て横において、まっさらになって受けようと思って臨みました。最初のうちはボディスキャンに苦戦したりと、全てが順調だったわけではありませんでした。ただ、一番印象的だったのは、Amir先生の存在感やあり方で、マインドフルネスを体現するとはこういうことなのか、と目を開かれる思いがしました。
私自身、ストレスマネジメントを学生に教えていた経験もあったので、MBSRのメインテーマであるストレスにどう関わるかということについて知っていましたし、教えたり臨床の場でのプレゼンス(いま・ここに存在する力)はそれなりにあると思っていました。
ただ、Amir先生に触れた時に、マインドフルネスの実践を続けることで、このようになるのか、というような、存在感を感じました。コースの6-8週目あたりは、ただただ終わるのが残念で、もっと学びたいと思いました。
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情報系から心理の分野にキャリアを変更した江崎さんが、このあと、マインドフルネスに更に深く取り組み、講師養成まで進んだ思いとは何だったのか、後編でそのお話をしていただきます。
講師紹介 & 江崎さんのMBSR8週間コース
江崎さんのMBSRコースは以下にて実施されます。無料のオリエンテーションも行っていますので、ご興味あればご参加ください。
(以下をクリックしていただくとコースの詳細へとびます)