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じゃんけんのない世界〜 子供たちはどうやって物事を決める?(親参加型の幼稚園 in California①)

我が家は夫の仕事の都合で、長女は1年間カリフォルニアの親参加型のプリスクールに通っていた。もう今から14年も前の話である。

当時カリフォルニアの幼稚園はとても保育料が高く、週4日5時間で月額10万を超えるのが当たり前だった。そのせいかどうかわからないが、費用を安く、子供とより関わる為に、親が幼稚園に参加しながら運営をするという、親参加形の幼稚園(Parents cooperative preschool )がある。私は、アメリカの幼稚園でどんな教育が行われているのか知りたかったのと、費用を安く抑えるため、そのような幼稚園に娘を通わせる事に決めた。

具体的に親は何をするかというと、
①親は1回5時間(9時〜14時)先生のアシスタントとして、一緒に子供たちと過ごす。(週1回〜可能)
②月1回の会議に参加し、様々な事を決める。
(先生の雇用について、園の予算、資金集めのためにどんなことをするか、その他役割分担等全て)
これらの他に、幼稚園の事務室に勤務する形でほぼ毎日来ていたお母さんもいた。

私は週1回5時間、先生のアシスタントと月例会議に参加する親のためのベビーシッターをやった事で、保育料が半額近くまで下げることができた。

ちなみに風邪などで幼稚園の仕事ができない場合は、保育料に加算される。私が週1回の先生のアシスタントを休むと1回1万円近く加算される。月例会議や資金集めのためのイベントなども同じ扱いなので、とにかく参加しない代わりにお金を払うシステムなのだ。休んだ人の代わりに別の人がその分働くことになる訳なので当然と言えば当然だ。(余談だが、これは日本のPTAの仕事にも活かせるでは?と帰国後感じた事だ。)

今はどうかわからないが、当時カリフォルニアの法律で、幼稚園では子供4人に対して大人1人が付いて観ていないといけない、と決まっていた。つまり、園庭で子供4人が滑り台で遊んでいたとして、1人がふらっと来て滑り台で遊び始めると、そこはもう子供5人と言うことで、見ている大人は手を挙げて、参加している他の保護者を呼び、大人2人体制にするのだ。これには本当に驚いた!

自由に遊ぶこと前提の幼稚園だったので、その中で子供たちとずっと一緒に過ごしていると、語学はもちろん、子供に対する先生や参加している保護者の声掛け等、何もかもが興味深かった。

そのうちの一つ。
アメリカにはじゃんけんというものが根付いていないので、子供が2人、ボールが1つ、などのよくある取り合いの場面では非常に困った。日本なら間違いなく、それならじゃんけんして勝った方が先に使えばいいんじゃない?となるシチュエーションだ。
一回私もじゃんけんを広げようと試みたことがあるが、実際、負けた男の子が、そんなの関係ない!と言ってボールを奪う、という結果になった。根付いていないというのはこういう事なのだ。

ではどうするのか。こういう場面。
1人がボールを見つけてそのボールを取った。
その近くにいたもう1人の男の子が「僕だって今取ろうとしてたんだ!」といって奪い合いになる。
大人はそこで間に入る。(手が出る前に大人が入る)

①何が起こっているの?とそれぞれに聞く
「僕が持ってたボールをあいつが取ろうとした! 」
「僕が見つけて遊ぼうと思ったボールをあいつが先に取った!」

②「そうなんだ。君はボールを取られると思ったんだね」
「君は最初にボールを見つけたと思ったんだね」
とそれぞれの意見を繰り返す。

③「じゃあどうしたらいいと思う?」
ここから議論が始まるのだ。そう。毎回。。。。

「僕が先にボールを持ってたんだからあいつは次に使えばいいと思う。順番にすればいいと思う!」
「僕が最初に見つけたボールなんだから、先に取ったあいつが悪いと思う。僕に譲るべきだ。」
話は平行線。
ここでも親は、繰り返す。
「君は〇〇と思ってるんだね。じゃ、どうしたらいいと思う?」
これをやり続けるのである。。。

だいたいこれを5分もやると、男子はめんどくさくなって、「もういいよ!僕は滑り台であそぶ!」と去ってしまう。その後、大人は、あの子は譲ってくれたんだね。使い終わったらあの子に渡そうね、などと話し、譲ってくれてありがとうね。などと後からフォローしたりする。

基本じゃんけんがないせいで、子供達の争い事はずっと議論で解決なのだ。
物の取り合い議論が白熱して他の子も入ってきたり、「もう一つボール見つけてきてあげるよ!」なんて金髪のかわいい女の子がボールを探し回ってくれたり、みんなが集まって来た事によってだんだん恥ずかしくなってきて譲ってあげたり、まあ解決のパターンは様々なのだ。

とにかくこんなに小さい年齢から話し合いベースなのがすごいと思った。大人は相撲の行司のように、のこった!のこった!と言うだけ。

これが世界基準なのであれば、日本人はじゃんけんに頼りすぎているせいで、ディベートするチャンスをのがしていると思う。

自分はどうしたいのか、
相手はどう思ったのか、
ではどうしたらいいのか?

これらはいくつになっても、あらゆる場面で出てくる問題だ。
自分がどうしたいのかすら分からない大人もいる中、子供の時からこのような訓練をたくさん積む事は何より大切な事だと感じた。

そして「子育て」って本当に時間と労力が必要なんだ、とも。

心の余裕が何より必要ですよね。

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