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🇩🇰 調査レポート04【個人の幸せが当たり前に尊重される社会】

先日、留学時に拠点としていたオーデンセに住む知り合いのお宅に泊めさせて頂きました。

お世話になったMさんは日本人の方で、デンマークへ10年以上前に引っ越して来られました。旦那さんと3人のお子さんとオーデンセに暮らしていらっしゃいます。

デンマークと日本の違いについてお話しさせて頂く中で、Mさんがおっしゃっていた「デンマークは個人の幸せが当たり前に尊重される社会」という言葉が印象に残りました。

例えば、特別なケアが必要な子供がいる場合、自治体から様々な公的な支援を受けることができます。Mさんのお子さんの一人が新しいバギーを試すということで、特別支援学校へ同行させて頂きました。バギーは自治体から無料で貸し出されるそうです。自治体からErgoterapeut(作業療法士)の方が一名と、バギーを販売している会社の職員が一名が学校に来て、バギーの使い方を丁寧に教えてくれました。Ergoterapeut(作業療法士)の方は、Hjælpemiddel(補助器具)等の選択や貸し出しを手伝ってくれるそうです。

「こういうところに手間を惜しまないんだよね」とMさん。「様々な分野のプロに支援を受けられてありがたいし、支えられているという実感がある、というのが私の気持ちだけど、皆がそうではないと聞いたことがある。私が手厚いと感じる支援が、デンマークではもっと当たり前という感覚なのかもね。」と話してくれました。

誰もが普通の生活が送れるような環境整備を目指すというノーマライゼーションの理念は、デンマークのバンク・ミケルセンの考えが発祥ですが、今日もデンマークの人々の感覚に根付いているのだなと、感じさせられました。

また、仕事と休暇のバランスについてもお話しを聞きました。「例えば、大学病院の専門の先生に予約を取ろうとしても、その週は先生が休暇(Ferie)を取っていたら、そうですか、と言うしかない。Ferieって皆が納得する魔法の言葉みたいで、それはどんな職種でもそうだと思う。」一方、Mさんの知り合いの日本人の方で、家族の用事のために1週間休みを取りたくても仕事で取れなかったという話を聞いて、Mさんは驚かれたそう。日本で生まれ育った私も、本当は休みたいけど周りに迷惑をかけられないし...と学校や仕事の都合をプライベートよりも優先させてきた経験が多くあります。

留学の時も感じた個人主義と集団主義の違い。やはり良し悪しではないけれど、集団の利益のために、個人の権利、尊厳、幸せがないがしろにされてしまうのは、個人にとっても社会にとっても健全ではないように思います。個人の幸せと集団の利益のバランスをどのようにはかっていくべきか?"個人の幸せが当たり前に保障される社会"から学べることは多いなと、改めて感じた貴重な経験でした。

*本記事の執筆にはMさんにもご協力頂きました。ありがとうございます☺︎


写真:アンデルセン美術館(H.C. Andersens Hus)
オーデンセはデンマーク第3の都市。童話作家アンデルセンの故郷として知られていますが、昨年アンデルセン美術館がリニューアルしました。設計建築は日本の隈健吾建築事務所が手がけたそうです。外を散歩しながら、美術館や庭の眺めを楽しむことができるのはもちろん、中は音声ガイド付きでアンデルセンの半生や童話の世界を存分に味わうことができます。

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