私はもう、空を信じない

ピカピカのランドセルに教科書をたくさん詰めてルンルンに帰る娘の手を握りながら、ふと見上げると、誰かがグレーの雲のカーテンを開けたような爽やかな青空が一部のぞいていた。

私は垣間見える青空を睨みつけ、騙されないぞ、と心の中でつぶやいた。

どんなに晴れてこようが、夫がいなくなった事実は変わらない。

私はもう、空を信じない。

あんなに晴れていた日に夫は亡くなってしまったんだから。
信じるものか。

きっと怖い顔をしていたんだろうと思う。

「ママ、大丈夫?」と娘が言った。

「大丈夫だよ。」

咄嗟に出てきた言葉を自問した。

私は、大丈夫なのだろうか?

きっと、大丈夫ではない。

私が分かるのは、もう何も信じられないといこと。

私が分かるのは、もう何も分からないということ。

もう、本当に、何もわからないということだけが分かった。

それが大丈夫なのか、大丈夫じゃないのかは、分からなかった。


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