東新宿
泣きながら寝てしまっていたようで、
「終わりましたよー。どうですか?」
という朴先生の声で起きた。
先生は鍼を一本一本抜きながらカタンカタンとステンレスの鍼皿に入れていくのが聞こえた。
抜き終わると、「立ってみてください。」
と言われ、ナマケモノのようにゆっくりと起き上がり、立とうとした。腰は曲がったまま地面に足をつけ、そのまま上半身を起きあげようとしたが、無理だった。
「あー、まだダメですね。今日は帰ってゆっくり休んで、また明日来て下さい。」
腰を曲げたまま治療院を出ると、冷たい雨が降っていた。
腰の力がないとカバンも持てず、まるまって抱えたまま傘も持てずに東新宿の歓楽街を歩いた。泣いて腫れた顔を引き下げ、腰を曲げてまるまって雨の中を幽霊のように歩く中年女性は異様さを放っていたようで、道ゆくカップルや韓流ファンの女性グループ、女子高生などは皆みてはいけないものをみてしまったかのように、私を避けて通り、混んだ商店街の道の中でも私が歩く道は開いていった。
なんとか大通りに出てタクシーを捕まえる。
乗り込んで座ろうとしたが、やはりどの体制も痛くて座っていられない。仕方なく後部座席に寝転がった。タクシーの天井を見上げながら、心底死にたいと思った。
スマホに「死にたい」と入力すると、
厚生労働省の自殺対策ホットラインがトップに出てきて、興醒めした。
おもちゃを途中で取り上げられたかのような苛立ちと怒りと惨めさが私を襲った。
私はどこまでも死と戯れていたかった。
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