償い

次の朝、起きてもぎっくり腰は治っていなかった。

トイレに行くにも這って行くしか方法はなく、体中に「惨め」と書かれたポストイットを貼り付けられているようだった。

「お前が彼を死なせたんだからこれくらいの罰は当然だ」という声が頭の中でぐるぐるしていた。そうだ、私がもっと気をつけていれば、私が気づいていれば彼は死ななかったのだ。自分のせいなんだ。確かに、死んでしまった彼に償うにはこれくらいの痛みは当然なのかもしれない。だったら死ねたらいいのにと本気で思った。

心配していた両親からテレビ電話がかかってきた。毎日、私の生存確認を兼ねてテレビ電話をかけてくれていたが、私は正直それが重荷になってきていた。心配をかけまいとぎっくり腰のことは伝えていなかったが、テレビ電話越しに様子がおかしいことがわかったようで、父の運転で朴先生のところに連れて行ってもらうことになった。

父が駐車場を探している間、母が付き添って朴先生のところに付き添ってくれた。

朴先生は甘い甜茶を用意してくれていて、

「どうぞ、どうぞ」と応接間のような場所に私と母を座らせた。

朴先生は腹の底から出る声で

「どうですか、一日経って。」

と聞いてきたので

「あまり良くなっていません。」

と答えた。私は前日に朴先生が言っていたことが気になり、聞いてみることにした。

「朴先生、昨日先生が言っていた、まだ主人がいるってどういう意味ですか?」

「そりゃあ、まだいますよ。彼の魂はとても近いところにいます。」

魂?まだいるとしたら、夫は私に怒っているのだろうか。私がもっと早く気づかなかったこと、私が彼の健康管理をちゃんとできていなかったこと、私が彼のストレスを癒してあげられていなかったこと。彼は私を憎んでいるのだろうか。私は恐る恐る自分が一番気になっていたことを聞いてみた。

「朴先生、夫は私と結婚していなければ、彼は今でも生きていたんでしょうか?」

「二人の魂はとても近しい魂。きっと前世でも夫婦をやっていたんじゃないですかね。前回は奈美さんが彼より先に死んでしまっていたかもしれませんよ。だからあんまり心配しないで大丈夫です。」

と笑いながらいう朴先生の言葉は宇宙語のように何を言っているのか分からなかった。

は?なにが大丈夫なの?前世?私が知りたいのはそんなことじゃない。

そんな苛立ちを抱えながら、朴先生が放った言葉たちがひらひらと心のフックに引っかかっていた。

「さ、治療台へどうぞ。」と朴先生は通常通りの素振りで私を治療台まで連れて行った。



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