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アウシュヴィッツを訪問した話

ドイツに住んでいるからには必ず訪問しなければ、と思い3年が過ぎてしまった。
今回夫に日本への帰任指示が出たのをきっかけに、やっとアウシュヴィッツ訪問が実現。訪問して思ったことは、ドイツに住んでいるからじゃなく、グローバル化が加速する現代、誰しもが行く機会があれば行くべきと痛感した。
ここではアウシュヴィッツの基本情報から行き方、個人的感想を述べたい 。

アウシュヴィッツとは


アウシュヴィッツ絶滅収容所はホロコーストが行われたことで世界的に知られている。この収容所は、元々はポーランドのオシフィエンチム市郊外に設立されたがドイツ領にされたためポーランド語「オシフィエンチム」からドイツ語の「アウシュヴィッツ」という地名に変更され、アウシュヴィッツ=強制収容所の名になった。
1940年4月27日、ヒムラーの命令により建設が始まり、当時はポーランドの政治犯を収容することが目的だったが、後にユダヤ人を集めて人体実験やツェクロンBによるユダヤ人大量虐殺が行われた。
ポーランドのクラクフからバスで約1時間半、距離にして西に約50kmの場所に位置している。面積は約40平方メートル、拡大し続けた最も広い収容所でもある。

アウシュヴィッツへの行き方

クラクフ中央駅からバスと電車が出ている。
私はバスを使用したのでそのバスでの行き方を紹介したい。
バスの乗り場は、Galeria Krakowskaの電車乗り場を抜けた地上階にあり、
Kraków, MDA,ul.Bosacka 18で乗車、Kraków→Oświęcim, Muz. Auschwitzで下車。1個前の駅で降りる人も多いが終点まで乗ってればOK。
チケットはオンライン、もしくは運転手から購入可能。

http://www.lajkonikbus.pl/krakow---oswiecim.html

https://www.pkp.pl/en/

ツアーガイドの申し込み方

日本人であれば、アウシュヴィッツ・ミュージアム唯一の日本人ガイド中谷さんのツアーで行くのがおすすめ。
英語やドイツ語のガイドツアーもあるが、日本の状況と照らし合わせて説明してくれることで深く考えさせられる。
中谷さんのツアーを予約する場合は直接メールするか(アドレスは個人的に私に問い合わせてください。)、旅行会社のツアーが再開したらそれに申し込むかの二択。

日本語以外の言語でツアーガイドを申し込む場合、下記のURLから。
https://visit.auschwitz.org/?lang=en

実際に訪問して感じたこと

2023年3月11日、アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所を訪問した。
以下では感想を述べたい。

見学者に若者が多い

通常、観光地といえば老夫婦が多いが、アウシュヴィッツを訪問しているのは平日にも関わらず若者がとても多かった。
若者の関心の高さが伺え、ドイツ語が聞こえたことから負の遺産と向き合おうとしている姿勢が感じられた。これは多民族国家によって成り立つヨーロッパ圏における人権教育の賜物なのだろう。
日本で「人権」というと、意識の高い人が論じるものと思われがちかもしれないが、ここヨーロッパでは多くの人が身近に感じているテーマなのだろう。
逆に老人がいなかったことに違和感を覚えた。

天井に開いた穴

猛毒ガス・チクロンBを入れる天井の穴。本で知って想像はしていたが、穴が想像以上に大きかったことに驚いた。缶を逆さまにして穴からガスを入れる際、中の人たちと目が合ったのではないだろうか。
命を奪う者と奪われる者。
視線のやり取りを想像するとなんともいたたまれない。

ヘースと収容所の位置関係

アウシュヴィッツ絶滅収容所の司令官は親衛隊将校、ルードルフ・ヘースであった。ヘースがアウシュヴィッツ近くに家を構えていたことは知っていたが、ガス室から見えるほど、大声を出せば聞こえるんじゃないかというくらい収容所から近い場所に家族5人で暮らしていたことに驚いた。
あんなことが起きている収容所の近くに家族を呼び寄せ、家では良い父親として暮らしていたなんて信じられない。また家族も収容所で起きていることに気づかなかったことを疑問に思う。

多様性の重要さ

今まではなんとなく当たり前に多様性は重要と思っていた。しかしこの訪問を通してより深くその重要性を実感した。
というのも、ナチスはユダヤ人だけでなく、LGBTやロマ、障害のあるものも排除しようとし、それを国民が止められなかった、いや、むしろ迫害していた人もいたからだ。私たちの中にある小さな差別、小さな偏見がナチスに政権を渡すことになったのではないだろうか。

島国の日本でも今日、様々な国の人が住むようになっている。
そのような人を無意識の偏見や差別 で苦しめないようにしたい。そしてそのためには教育が必要だと思う。戦争も飢えもなく正常な状況では悪と判断できることだとしても、極限状態に置かれたらホロコーストのような最悪の事態を生んでしまう可能性があるから。多様性を日頃から受け入れる土台を作るべきなのだろう。


最後に

負の遺産、アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所。以前は館長もツアーガイドもアウシュヴィッツの生還者だったという。彼らの意思で、単なる観光地にしたくないからと敷地内にはほぼ説明がない。だからもし訪問の機会があれば、ぜひツアーガイドと一緒にまわってほしい。中谷さんでも英語のガイドでも、彼らの声を聞いて考えることで学べることが多いはずだ。



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