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【無料】基礎から分かる水産用語<138> ALPS処理水とは

みなと新聞で毎週火・金曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。


ALPS処理水とは

 多核種除去設備(ALPS)でセシウムなど62種の放射性物質を国の基準値以下まで浄化した東京電力福島第1原発からの処理水。東日本大震災による事故後、敷地内に貯蔵するタンクが満杯に近づいているため、2023年夏までの海洋放出が決定した。

 13年のALPS稼働でセシウム以外の放射性物質が除去可能になったが、水として存在するトリチウムの除去は困難。規制基準を大きく下回る、1リットル当たり1500ベクレル未満までに希釈して放出するが、受け止めは国や団体、個人で異なる。7月4日、国際原子力機関(IAEA)が「計画は国際的な安全基準に合致」とする報告書を公表したが、約1週間後に香港政府は福島など10都県の水産物禁輸の方針を発表した。

 水産庁は22年6月、北海道から千葉県の太平洋側を中心に、水揚げされた水産物のトリチウム量を分析開始した。

 処理水の放出後には「迅速分析」も並行する。2日後までに結果を出すため現状の精密な分析より検出の最小値を引き上げるが、精密分析でモニタリング対象外の福島第1原発半径10キロ以内で検体を採取することで補完を図る。今年度はセシウムの分析も検体数を増やし継続する。

 消費者心理に与える影響が大きい処理水の海洋放出にあたり、政府は風評被害対策として基金の創設や広報、説明会の開催などを進めている。

みなと新聞本紙2023年8月8日付の記事を掲載