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【無料】基礎から分かる水産用語<139> 磯焼けとは

みなと新聞で毎週火・金曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。


磯焼けとは

 沿岸水域に植生する藻場で、海藻が多少の経年劣化を超えて著しく衰退または消失し、一帯が貧植生状態となる現象のこと。水産庁によると、再生には長い年月がかかり、ウニによる食害など藻場を形成する阻害要因が継続する場合には回復に半世紀以上を要する。海藻類や、それらをすみかにするカサゴやメバルが獲れなくなるなど、沿岸漁業に大きな影響を与える。

 温暖化が主な原因と考えられている。ウニや小型マキガイといった植食動物、アイゴやブダイなどの植食性魚類は、水温が高まるにつれて摂食活動が活性化し、海藻が減る。また、気温上昇に伴い発生する暴風雨の影響で波が増大し、多くの海藻が流失する。

 対策として、植食動物の駆除や防御フェンスの設置などが行われている。一方、漁業者人口が減少する中、食害生物のウニを捕食するイシダイや大型イセエビなどを利用した藻場の回復手法は、人手を要しない方法として期待されている。

 磯焼けと区別する現象として沖焼けが挙げられる。異なる点は、海水の停滞やウニの恒常的な摂食圧などにより、対象の区域がもともと海藻植生の乏しい貧植生域となっていること。また、海藻は気候や海況の変化に応じて生育面積が多少変動することもある。こうした事象は磯焼けとは呼ばないという。

みなと新聞本紙2023年8月18日付の記事を掲載