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【無料】基礎から分かる水産用語<120> アニマルウェルフェアとは

みなと新聞で毎週火・金曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。

アニマルウェルフェアとは

 「動物福祉」を意味する言葉。食用など人間による動物の利用を許容しながらも、家畜や水産物が生きている間、飢えや痛みからの解放を目指す考え。

 1960年代に「飢え・渇きからの自由」など「五つの自由」が制定された英国を中心に、欧米では法整備も進んでいる。一方、日本のアニマルウェルフェア(AW)は欧米に比べ遅れているとされており、特に水産物では顕著。日本の動物愛護法で魚が対象ではないなどの原因が指摘される。

 動物愛護団体アニマルライツセンターは今年4月、動物福祉の取り組みを表彰するアニマルウェルフェアアワード2023(評価期間22年度)で、初の「魚賞」をニッスイに授与。養殖魚の96%に気絶処理(スタニング)を実施する水揚げ時の配慮などを評価した。

 スタニングは品質向上にも一役買う。ニチモウの「フリーズフィッシュ」は、たも網やマットに取り付けた電極で水揚げ後の魚を瞬時に鎮静(気絶)させるが、暴れを防ぐため身焼けの防止にも役立つ。

 水産エコラベルの世界水産物連盟(GSA)が運営する養殖業最善慣行(BAP)認証は、養殖場でのAW基準を含む。活魚輸送や締め作業時のルールなどに人道上からの観点もみられるが、多くを占める疾病の拡散防止や水質維持の基準は結果的な品質向上につながる点でも意義深い。

みなと新聞本紙2023年6月6日付の記事を掲載