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【無料】基礎から分かる水産用語<178> 藻礁とは

みなと新聞で毎週火・金曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。
みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。


藻礁とは

 藻類(海藻)の生育・増殖を目的として海底に設置する人工構造物。主にコンクリート製のブロックで藻場礁ともいう。光合成によって炭素の吸収と固定化を繰り返して成長するという藻類の特性から、太陽光が届く沿岸の浅瀬に沈設する。魚介類の産卵場やすみか、隠れ場にもなり、沿岸生態系が豊かになる。

 藻礁の形状や大きさはさまざま。その表面にはザラザラとした凹凸を付けることがあるが、これは藻類が飛ばした胞子が付着しやすいようにするため。また、藻類の苗を巻き付けたり、藻類が成長の過程で絡みついたりできるように、複数の穴を開けるなどして空洞を設けることもある。

 藻礁は沈設後に潮流で流されることがないように十分な重さが必要。1基当たりの重量は小型のもので1キロほどだが、大型のものでは数トンにもなる。安定性の観点から、岩場ではなく砂地に設置するケースが多い。

 磯焼けなどで藻場の減少が進む国内では、行政が積極的にその再生に取り組んでいる。北海道に次ぐ海岸線の長さを誇る長崎県では、県内の水産基盤を強化する事業「水産環境整備事業」が10カ年計画(2022~31年度)が進行。藻礁を沈設するなどして31年度までに藻場を約400ヘクタール増やす。うち、幼稚魚が育つ藻場を造成する増殖場の整備には、10年間で約250億円を充てている。

みなと新聞本紙2024年1月19日付の記事を掲載