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『星屑の森』―AKIRA―(4)

私のお姉ちゃんは、織部(おりべ) アキラという。
私よりも4歳年上の21歳。

髪はショートカットで、176cmの長身。
スラリと伸びた長い手足は、モデルの様だけれど、顔は童顔で実年齢よりも幼く見える。
透けるような白い肌、少し癖のある栗色の髪、そして美しい琥珀色の瞳は、日本人離れしている。
いつも白いTシャツにジーンズみたいな、シンプルな服装だけれど、それが彼女の美しさをより引き立てて、とても格好良い。

お姉ちゃんの母親は、どこかの国のハーフだかクォーターらしいけれど、あまり母親の話はしたがらない。

以前、私は、日本人の父母の特徴をしっかり受け継いいだこの真っ黒な髪を、お姉ちゃんの様な綺麗な栗色に染めたいと言ったことがある。

すると、お姉ちゃんは、
「今の愛が一番素敵なんだから、もったいないよ」
と言った。

私が、美しい姉に強い劣等感を持たずにいられたのは、お姉ちゃん自身が一番側で私を認め、私を愛してくれていたからかもしれない。


「愛のお姉さん、はじめまして! 川嶋菜佳です。
 び…、美少年なんて言って、ごめんなさい」

「あはは、いいのよ。よく男の子に間違われるの。
 愛の姉のアキラです。よろしくね」

お姉ちゃんは、笑顔で菜佳と話している。
急に友達を連れてきて、怒られるかもしれないと思っていたから、私は安心した。

「愛がここに友達を連れてくるなんて、初めてじゃない」

私の方を向いたお姉ちゃんの瞳に、アンティークランプの灯りが映り込んだ。

「実はね、お姉ちゃん。菜佳の悪夢祓いをしてほしいの」

私は菜佳の腕を掴んで、お姉ちゃんの目の前の席に座らせる。

「え、何、何? 悪魔祓い? 私、オカルトとか無理だよ!」

聞き慣れない言葉を聞いて、菜佳が狼狽(うろた)えた。
私は、にしし、と笑って、菜佳が席から立たないように、肩を上から押し付ける。

「悪魔は、お前だ! 愛ー!」

菜佳は、小さな店内でわーわーと喚(わめ)き始めた。
助けを求めたマスターも、ただ微笑んで見ているだけで、菜佳は「愛のバカー! 裏切り者ー!」と何度も叫んだ。

「悪魔じゃなくて、悪夢祓いだから! 大丈夫だよ!」
と説明する、私の声なんて全く聞いていない。
そんな菜佳を黙らせたのは、お姉ちゃんだった。

菜佳の右手に、お姉ちゃんは静かに手を重ねた。
そして、菜佳の瞳を覗き込むと、

「菜佳さん、大丈夫。私が、悪夢を見ないようにしてあげる。信じて」

と、優しく言葉をかけた。

すると、菜佳は、頬を赤らめて静かに頷いた。

(つづく)

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