「Q」第四話
🌟こちらは、漫画原作として投稿した「Q」という物語のつづきです。
●第一話:https://note.com/minatose_haru/n/n15b24b143b63
●第二話:https://note.com/minatose_haru/n/na05d967deb31
●第三話:https://note.com/minatose_haru/n/nfe35796390c9
《第四話》
1. 学校の裏山
「はい。では、全員揃ったということで、早速、課外学習を始めていきましょう!」
満面の笑みの日山の前に、クラス全員が揃う。
遅刻してきた鈴子は、例の電流で髪の毛先を焦がし、恨みがましい目を日山に向けているが、それを隠すように小さなキャサリンが焦りながら左右にふよふよと漂っている。
日山はなぜか迷彩服の上下にサファリハットという、これからサバイバルでも始めるのか、という恰好をしていた。
「せんせー。私たち期末テスト近いし、これ以上、授業遅れると困るんですけどー」
「俺の烏は、朝の『邪気』で足りている」
「うちのケンタロウ(犬)も腹いっぱいで寝てます!」
「エセ教師―。教師失格―」
生徒たちは一限からの野外学習に不服だ(ちなみに、最後の野次は鈴子だ)。
「府木君。君はどうですか?」
急に日山に澄んだ瞳がこちらを向いて、どきりとする。
和装イケメンの時の金色の瞳ほどではないものの、「日山」の時にも時折混じる涼しい視線を向けられると、何だか落ち着かない。
「Qは……」
「キュ、キュ、キュー!」
「えっと、……多分いけるっす」
Qは「任せとけ」とばかりに、足元で何度も鳴きながら飛び跳ねている。
何かが始まる気配を感じ取り、気合いが入っているようだ。
朝早くに沖本の烏たちが倒した大ムカデ型「邪気」の足を食らっても、Qは活動的だ。以前であれば、あれだけ食えば腹いっぱいですぐに眠くなっていたはずなのに、最近はどんどん食欲が増している気がする。
水越間の話によれば、より強い「邪気」を食らうと共にQも成長し、能力を身に着けるはずだというが、変化の兆しはまだまだ見られない。
変わったことをしいて挙げれば、Qから一本だけ飛び出している尻尾(?)を使い、より高く飛び跳ねることはできるようになったことくらいか。
「先生、今日は何をするんですか?」
クラス委員の水越間は、文句をたれるクラスメイトを尻目に、長い黒髪の裾からするりと現れた蛇の頭を指先で撫でながら日山に聞いた。
「さすが、水越間さん。よくぞ聞いてくれました! 皆さん、今日は楽しい『チーム戦』ですよ! そんな文句ばかり言わないでください」
「「「チーム戦……?」」」
日山の言葉に、俺を除く皆が反応する。
「褒章は……?」
沖本が口を開いた。
「そうですねぇ。勝ったチームの『子どもたち』には、何かひとつ特技をプレゼントしましょうか」
日山の言葉を聞いて、生徒たちの目の色が変わる。
「さあ! 起きよう、ケンタロウ! 今日と言う一日は、これからだ!」
「……仕方がない。やってやるか」
「きゃー! キャサリン! 元の大きさに戻れるかもしれないわよ‼」
「そろそろ私の蛇にも新しい能力が欲しいわね」
「? 一体何なんだ?」
急に態度を変えたクラスメイトらに戸惑っていると、李帆が説明をしてくれた。
「府木君、先生の気まぐれボーナスポイントだよ。本当にたまーーになんだけど、先生がやる気を出して、課題をクリアするとこの子たちのレベルアップをしてくれるの」
「じゃあ、Qも!?」
「もちろん! 先生の力をもらったら、もしかしたらQちゃんも何か新しい力が見つかるかもしれないね!」
隣で髪を風になびかせながら、李帆は眩しい笑顔を向ける。……やっぱり、まだ慣れない。
「えー、では皆さん全員参加していただけるということで、ルールとチームを発表します! 今日の課題は、『かくれんぼ』。この山の中で私の姿を早く見つけたチームの勝ちです。私が結界を解いた後は、外からもこの山を目がけてじゃんじゃん『邪気』さんがやって来るはずなので、負けずに探してくださいね。チームメンバーは、こちらです!」
日山がそう言うと、突如、空中に黒板が現れ、それぞれの名前がチョークで書き込んであった。
「「「えーーー‼!」」」
静かな山中に生徒たちの声がこだまする。
「キュ?」
文字の読めないQは、不思議そうに首を傾げた。
(つづく)
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