マガジンのカバー画像

連載小説「春夏秋冬 こまどり通信」(全10話)

10
創作大賞2024応募作品。 「こまどり色鉛筆画絵画教室」を叔母から引き継いだ"ちどり"と、そこにやってくる人々の物語。 (2024年7月)
運営しているクリエイター

記事一覧

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第一話(全十話)(創作大賞2024・お仕事小説…

Ⅰ.春 『こまどり色鉛筆絵画教室 どうぞおはいりください』  半円を描く空色の木製扉をゆ…

60

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第二話(全十話)

「どうしたの⁉」  応接間に駆けていくと、目を覆いたくなるような情景が広がっていた。  凛…

48

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第三話(全十話)

Ⅱ.夏  八月になると、カナリーヤシの樹が庭の主役になる。  十五メートルほどある樹のて…

43

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第四話(全十話)

 私は思わず素麺をつまもうとした箸をひっこめて、麗さんの顔を見る。  二つの目から次々と…

38

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第五話(全十話)

Ⅲ.秋 「一度辞めたつもりだったけれど、どうしても仕上げたい絵があるのです」  江永静江…

40

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第六話(全十話)

 それから三週間、毎週木曜日に江永さんは「こまどり教室」に通っている。  レッスンがない…

30

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第七話(全十話)

 応接間の扉を開けると、江永さんは瞑っていた目をうっすらと開いた。 「ちどりちゃん、迷惑をかけてごめんなさいね」 「全然、迷惑なんかじゃないです。こちらこそ、顔色がよくないことに気づいていたのに、無理をさせてしまって、ごめんなさい」  江永さんは首を横に振って、「あなたのせいじゃないわ」と言った。  上体起こすと、私の持つ盆を覗き込む。 「あら、その優しい香りは、もしかして葛湯かしら」 「近頃冷えてきましたし、風邪のひきはじめにいいんじゃないかと思って。もしよかったら、い

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第八話(全十話)

Ⅳ.冬  十二月の人々の足取りは、弾んでいたり、少し急ぎ足だったり。食材や子ども達のプレ…

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第九話(全十話)

 この洋館は二階建てに見えるけれど、屋根裏にあたる場所に一つ部屋が隠されている。屋根の形…

【連載小説】「春夏秋冬 こまどり通信」第十話(最終話)

 それから、一緒にホットケーキを焼きませんか、と私は提案した。  私がこの家に来た小学一…