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劇場屋根裏の鳩

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映画・演劇・歌舞伎など、見てきたものの感想など
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#映画感想文

そこらへんの鳩がうっかり歌舞伎見物にはまった話

もっちりデミタスさんのアドベントカレンダー(2023)寄稿です。 はじめに歌舞伎、見たことありますか。見かけたことがある方は、まあ日本人なら誰しもでしょう。白塗りの顔と赤い隈取り、あとなんか髪の毛ぶんぶん振るやつ。他には、男性が女性を演じる、というところくらいがおもな印象ですかね。不肖鳩はだいたいそんな感じのイメージでした。 もとより、いろんな事物について、ほんものを見たいと思っている鳩ではございまして、こと演劇や舞台芸術につきましては興味のあるものですから、歌舞伎もだいぶ

【映画鳩】オッペンハイマー

日本公開されることがあれば(本国公開されてから日本公開されるまで協議か何かあったようでだいぶ間がありました)、見に行こうとは思っていたものの、ずっと「見たい」と「見なければ」の間にありました。 でも公開されましたからね、もちろん行ってきましたよ。配信だと腰が重くなって見るのに時間を要しそうというのもある。劇場というのは時間と集中、環境を買う場所であるため。 チケットをとるまでは何も考えていなかったけど、劇場に入って本編始まるまでにもうちょっと帰りたかった。余裕があるときでな

【映画鳩】哀れなるものたち

公開後そこかしこから良い評判が聞こえてきていましたね。へ〜……くらいにしか思っていなかったのですが、ちょっと前に作っていた映画公開見たいものリストの中に本作が入っており(すっかり忘れていた)、まあそれなら見てみるかあと映画館まで行ってきました。 (注:以下ネタバレあります) いつものことながら思えば情報を仕入れずに見に行ったため(大人の身体の中に子供の脳が入っている?程度)、屋敷の中にキメラのような動物が出てきたあたりで、どんな世界観???になっていました(すぐに慣れまし

【映画鳩】ボーはおそれている

好きな映画に「ミッドサマー」を挙げるタイプの鳩です。最初は「ヘレディタリー」を、トレーラーの映像美に釣られて観たのですが、あっちは普通にホラーなのでね……怖いネ……(ホラーはあまり好きではない)。でもミッドサマーは好き。まあともかくそんな感じですので、今作「ボー」は、情報が出た当初から待ち構えていました。万全の状態でアリアスター監督に嫌な気持ちにされに行く覚悟を決めていざ映画館。 (注:以下ネタバレあります) 内容は、今までの作品の中で一番マイルドでしたね。ボウの人生を振

【歌舞伎鳩:番外編】歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉(二月シネマ歌舞伎)

松本幸四郎さんっていい役者なんだなあ……(しみじみ)。役名も役者さんのお名前も顔も覚えられぬ宿命を持つ鳩、歌舞伎役者さんはようやくなんとなく何人か分かるようになってきました。 たまたまヤマトタケルとはしごして見たんですが、もしかしてそういうスケジュールなんですかね?(時代感は違うはずだけれども、大和朝廷と蝦夷の話のつながりがある)鳩さっき新橋で帝見たよ。 こういう敵同士であろうとも、互いの信念を尊重するような人物たちの群像劇、良いですよね〜〜〜〜〜。熱い。出会うべくして出

【映画鳩】ラストナイト・イン・ソーホー、ヒューマン・ボイス

夢と現実が混沌としていく系の映像、結構好きなので、そういうタイプの映画っぽい、というのを探し当てて「ラストナイト・イン・ソーホー」を見ました。ポスターもいい感じだよね。 「ヒューマン・ボイス」の方は、ティルダ・スウィントンの一人芝居、という情報が先にあり、映像で一人芝居か〜おもしろそ〜ということで鑑賞。 (注:以下ネタバレあります) ラストナイト・イン・ソーホー ざっくりとしたあらすじ:1960年代のイギリスに想いを馳せる、ファッション科学生のエロイーズ。ある夜、196

【歌舞伎鳩:番外編】唐茄子屋 不思議国之若旦那(一月シネマ歌舞伎)

たった一日働くだけであらゆることが巻き起こる、勘当された愛すべきばかだ……若旦那の初仕事! 予告編を見ているだけだったので、アリスっぽい要素があるやつ、という雑認識で見に行きました。 上映案内の段階で、「若旦那応援上映」回がある映画館がある、というのを聞きつけていて(時間合わず見られませんでしたが)、どういうこと……? と思っていたのですが、本編見て分かった。愛すべきばか若旦那すぎて、確かに応援したくなるかもしれない笑 あらすじの通り、花魁に入れ込んで勘当された若旦那が唐

はとの芝居見物お切符まとめ(2023)

2023年は唐突に歌舞伎を見に行き出して、こうして感想を世に放ち始めたわけでございますが、さっきなんとなく見ていたら現時点でこの以下のマガジンに33本の記事が上がっており(2024/02/05)、えっそんなにお切符とったってこと……?とうっすら恐ろしくなりましたので、ちょっとまとめてみることにしました。 お切符を買ったものを記載(配信などで見たものは割愛)。感想があるものはリンクを貼っておきます。ないものは一言つけます。 元々は週1で映画館に通っていた身ではありますので、そ

【映画鳩】ゴジラ −1.0(12月)

ゴジラ映画は割と好きなので、公開を楽しみに待っていたものであります。と言いつつ、観るタイミングを逃し、公開後結構時間が経ってから観ました。SNS上では概ね評判が良かったのは、情報として入ってきておりました。 ということで、観に行ったのですが、これは……単純に……鳩の好みに合わなかったかもしれない……。。。 今からすごく厄介なことを言うので、大変この映画を高評価しているという方は回れ右していただけますと助かります。 以下のつぶやきの一つが、この映画ですね……。 (注:以下

【歌舞伎鳩:番外編】日本橋・天守物語(十一月シネマ歌舞伎)

「坂東玉三郎×泉鏡花抄」と銘打ったシネマ歌舞伎4本のうち、残りの2本。 公開をとても楽しみにしていた作品群で、本命は「天守物語」でした。 前回の感想は以下↓ グランドシネマ 日本橋 稲葉家お孝:坂東 玉三郎 瀧の家清葉:高橋 惠子 葛木晋三:松田 悟志 笠原信八郎:藤堂 新二 雛妓 お千世:斎藤 菜月 植木屋 甚平:江原 真二郎 五十嵐伝吾:永島 敏行 あんなに可愛い女を振りやがって!!! の気持ちと、まあでも分かるよ……の気持ちがあります。でも言わずに別れると決め

【歌舞伎鳩:番外編】海神別荘・高野聖(十月シネマ歌舞伎)

「坂東玉三郎×泉鏡花抄」と銘打ったシネマ歌舞伎4本のうち、今回は2本。 公開をとても楽しみにしていました。 だって泉鏡花の世界観が現実のものになるのが見たかった。 そして泉鏡花の文章は、読んでいて本当に美しいため、どうしても人間が話すのを聞いてみたかったのです。 残り二本の感想は以下↓ 海神別荘 美女:坂東 玉三郎 博士:市川 門之助 女房:市川 笑三郎 沖の僧都:市川 猿弥 公子:市川 團十郎 人間が1日で受け取れる美の総量をやすやすと超えてくる。 舞台上の美しさ

【歌舞伎鳩:番外編】野田版 桜の森の満開の下(九月シネマ歌舞伎)

野田版 桜の森の満開の下 あらすじ 耳男:中村 勘九郎 オオアマ:松本 幸四郎 夜長姫:中村 七之助 早寝姫:中村 梅枝 面白かった……物語に引き込まれました。 縦横無尽に走り回る耳男のパワフルさ、耳を切り落とされて痛がりながらもどこか何か抜けているような違和感、夜長姫に募らせる恨みと、それが反転する感情の表出、中村勘九郎さんに圧倒されました。こんなに面白い役者さんを見つけられて鳩は嬉しい。 中村七之助さんの夜長姫も凄まじかった。妖じみた女を、もうそれが本性かのように

【歌舞伎鳩:番外編】特別編 幽玄(八月シネマ歌舞伎)

特別編 幽玄 能の代表編目「羽衣」「道成寺」「石橋」を題材に、坂東玉三郎と太鼓芸能集団 鼓童がコラボレーション。 能・歌舞伎といった芸能と、和太鼓の響きが作り出す、新たな次元の芸術作品。 「羽衣」 漁師が見つけた天の羽衣を持ち帰ろうとすると、落とし主の天女が返して欲しいとやってくる。漁師は、返す代わりに舞を見せて欲しいと頼む。 「道成寺」 一人の白拍子が寺にやってきて、舞を奉納する。舞ううちに白拍子の様子がみるみる変わっていき……。 「石橋」 浄土へと続く石橋に獅子の

【映画鳩】オオカミの家・はだしのゲン(8月)

(注:以下ネタバレあります) オオカミの家 トレーラーを見て、とても気になっていた作品。 ストップモーションホラー映画なので、トレーラーを見る方はご注意。 (12/12現在、トレーラーは公式Twitterの固定ツイートから長尺版が見れるようです/なぜか公式サイト内のTRAILERからは見られなかった) ずっと画面が揺れている。主人公・マリアの不安や緊張や、少しの安堵を物語るように、ずっと。トレーラーを見ると分かるように、人間も豚も背景も、カメラが動きながらその造形物そ