光が闇に変わるとき

○愛媛県 夏の市民花火大会

屋台の列に並ぶ櫻井駿太。一人でいる浴衣姿の坂元ナナを見つける。

「あっ」
打ち上がる花火の美しさに声が出たわけじゃない。ナナとは、別々の高校に進学してから、自然と連絡を取らなくなっていた。

「そっちも来てたんだ」
「うん、松浦とか、サッカー部のやつらと」
「そうなんだ、松浦くんとか、みんな元気かな」
「まぁ普通、だよ」

どんっ。つんざくような音、かすかな火薬の匂いと共に大輪の花が咲いた。

「わぁ、きれい」

それを見上げたナナの瞳を見ると、なぜだか今更、話したいことがいっぱいあった。

「あのさ、俺たちってまだ」

「ナナちゃん、ここにいたんだ」

「あっ」

ナナは、俺の脇をすり抜け、知らない男の腕に飛びついた。

「行こ」

彼女は振り返らず笑う。
花火は次々と打ち上がり、消えていく。そのたびに辺りを照らし出しては、闇へと変えていった。


 了

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