ネットワークポリシー、WAF、セキュリティグループ、Firewallの違い
現代のシステム運用では、複数のセキュリティツールを組み合わせて、システムやネットワーク全体を守ることが一般的です。しかし、ネットワークポリシー、WAF、セキュリティグループ、Firewallといったツールはそれぞれ役割が異なり、使いどころを正しく理解することが重要です。
ここでは、それぞれのツールの役割と違いをわかりやすく解説し、どう活用すればよいかを整理してみます。
1. ネットワークポリシー (Network Policy)
役割: Kubernetes内のPod間通信や外部との通信を制御。
適用範囲: Kubernetesクラスタ内のPod。
制御対象:
PodがどのPodやネットワークと通信できるか。
通信の方向(Ingress: 外部→Pod, Egress: Pod→外部)。
制御レベル: L3/L4 (IPアドレスやポート単位の制御)。
例:
「Namespace内のPod同士だけ通信を許可する」
「外部インターネットへの通信を遮断する」
2. WAF (Web Application Firewall)
役割: Webアプリケーションへの攻撃を防ぐ。
適用範囲: HTTP/HTTPS通信(アプリケーション層)。
制御対象:
リクエストの内容やパターン(SQLインジェクション、XSSなど)。
制御レベル: L7 (アプリケーション層)。
例:
「SQLインジェクション攻撃を検知してリクエストをブロック」
「クロスサイトスクリプティング攻撃を防ぐ」
3. セキュリティグループ (Security Group)
役割: AWSなどのクラウド環境でインスタンスへの通信を制御。
適用範囲: EC2インスタンスや他のリソース(RDSなど)。
制御対象:
インバウンド(外部→リソース)とアウトバウンド(リソース→外部)の通信。
制御レベル: L3/L4 (IPアドレスやポート単位の制御)。
例:
「このEC2インスタンスに80番ポートでのHTTPアクセスを許可」
「特定のIPアドレスからのみSSH接続を許可」
4. Firewall
役割: ネットワーク全体の通信を制御。
適用範囲:
オンプレミスやクラウドのネットワーク全体。
ルーターやVPC、サブネットなど。
制御対象:
IPアドレス、ポート、プロトコル単位の通信。
パケットの内容(次世代型Firewallの場合)。
制御レベル:
L3/L4 (伝統的なFirewall)。
L7(次世代型Firewall)。
例:
「特定のサブネット間の通信を許可」
「全ての外部アクセスを遮断し、特定のIPからの接続のみ許可」
違いを簡単にまとめると
ネットワークポリシーは、Kubernetesクラスタの中でPod間や外部との通信を制限します。
例えるなら、「部屋ごとに鍵をかけて、必要な部屋同士だけ通信できるようにする仕組み」です。WAFは、Webアプリケーションを狙った攻撃を防ぐツールです。
玄関の警備員のように、怪しい訪問者(不正なリクエスト)を検査してブロックします。セキュリティグループは、AWSリソース単位で通信を管理するルールです。
部屋に出入りする人を管理する「入退室リスト」に似ています。特定のIPアドレスやポートだけ通信を許可します。Firewallは、ネットワーク全体を守るための仕組みです。
建物を囲む塀や門のように、内部と外部を分けて通信を一括管理します。次世代型Firewallでは、入ってくる人の持ち物(通信内容)もチェックします。
まとめ
ネットワークポリシー → 部屋の中の通信を制限する「部屋ごとの鍵」。
WAF → 玄関の警備員が「悪意ある訪問者」をチェック。
セキュリティグループ → 建物ごとに設定する「入退室の条件」。
Firewall → 敷地全体を守る「塀や門の管理」。
これらのツールは、それぞれ異なる層でセキュリティを強化する役割を持っています。
最適なセキュリティ対策を講じるには、ネットワークポリシーで内部通信を制限し、WAFでアプリケーションを守り、セキュリティグループやFirewallで外部との接点をしっかり管理する、といった使い分けが重要です。
どのツールも「何を守りたいのか」「どの層で制御が必要か」を意識して導入しましょう!